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逆転の反逆者、その意に逆らう~職業不明の青年が迷宮で神様から力を貰い、その力で英雄へと至るまで~  作者: 夜月紅輝
第2編 異端者は集う

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第46話 騎士団の襲撃#6

 フィラミアの目先に現れたのは馬に乗ったブロンドで長髪の男。

 一人騎士の鎧にマントを背負っている男の風格からして隊長クラスだろう。

 先程の騎士4人の実力を合わせてもこの男の方が強い。


「ふっ、どうやら畜生の分際にしてはやるようだな。

 にしても、お前ら騎士団に所属しながら畜生にやれるとはどういう事だ!?

 加えて、この人数で手も足も出てないようだな。恥を知れ!」


「庇うつもりはないですが、自分の手下に対して随分な言い草ですね」


「畜生に負けるとはそういうことだ。この世界は人族によって平和が生み出された世界。

 ならば、他の亜人どもは我ら人族を崇め、奉り、下等種族である自覚をもってこの世界に住まわせてもらうことに感謝しながら、地に這いつくばっているのがお似合いだ」


「主語が大きいですよ。例え、この世界があなた達人族によって続く未来だとしても、それを行ったのは過去の偉人であり決してあなたではない。それを同じ種族だからって......それほどまでにあなたはこの世界に貢献したのですか?」


「ふん、畜生にはわからないか。人族という偉大な種族のことが。

 お前達弱者は生かされているだけ感謝して欲しいものだな」


 金髪の騎士――カマセーヌは馬から降り、ゆっくりとフィラミアに近づく。

 キラキラとした装飾の施された鞘から剣を引き抜き、構えた。


「とはいえ、複数の騎士を手玉に取るとは大した女だ。

 強さがあり、男も女も魅了する容姿......お前を捕えればさぞかし高く売れるだろう」


「ありがた迷惑な高説を述べていた割には、二言目にはお金ですか。

 人族の程度というものが知れますね。全く持って嘆かわしい」


 そして、同じく人族である主様が可哀そうで仕方がない。

 このような存在と同じ種族であることが。


「ふん、さえずるな弱者が。俺に出会ってしまったのが運の尽きだ。

 他の騎士が相手にならないのなら、この俺が特別に相手をしてやろう。

 貴様なら少しは俺の運動不足解消になるかもしれんからな」


「戦う前から言い訳して保険でもかけてるんですか?

 もし負けても運動不足だからと。ふふっ、誇り高い自尊心ですね」


「黙れ。斬り殺すぞ」


「だったら、その傲慢な口を止めて心改めてください!」


―――バンッ


 地面に衝撃音が響く。同時に、目の前からカマセーヌが消えた。

 瞬間、背中からアラートが鳴り響くようにザワッと鳥肌が立つ。

 背後にいる。わかる、先ほどの騎士と段違いの圧だ。


「斬鉄!」


 フィラミアはサッと横に避ける。

 ザンッとカマセーヌの剣が振り下ろされた。

 一撃で数メートルの地面を割る剣でメイド服のスカートの一部が斬られてひらりと舞う。


「ふんっ!」


「っ!?」


 カマセーヌは振り下ろした剣を斬り上げる。

 フィラミアは咄嗟に短剣でガードするが、重たい一振りに吹き飛ばされる。

 ドゴンと背中から民家のドアを突き破り、転がる。

 咄嗟に体勢を立て直せば、横目に避難していた妊婦と老婆の姿が。


「流岩払い!」


「伏せて!――鋭利な一撃(ジャックナイフ)!」


 フィラミアは村人に咄嗟に注意勧告をしながら、カマセーヌの薙ぎ払いに対して反撃に出る。

 いや、そうするしかなかった。この男は家に誰が居ようと斬り払うつもりだったのだから。


「俺の攻撃を止めるとはやるな。だが、それだけだ!」


「ぐふっ」


 カマセーヌの前蹴りが腹部に突き刺さり、フィラミアは再び吹き飛ぶ。

 今度は固い民家の壁を突き破り、再び外へ。

 ゴロゴロと転がっていくが、すぐさま立ち上がると近くに吹き飛んだ民家の壁の一部を目の前の男に向かって投げた。


 その壁は当然のように斬り払われる。しかし、それでいい。

 一瞬の目くらましでこちらとの目測が誤れば攻撃の隙ができる。

 低い体勢からのスタートダッシュ。そして、跳躍からのドロップキック。


「くっ!」


 カマセーヌは咄嗟に剣の腹でガードする。

 しかし、獣人の膂力と筋力値により民家を通って再び民家を挟む通りへと移動させられた。

 そこへ屋根の上から移動したフィラミアが強襲。


 その攻撃は躱され、反撃とばかりにカマセーヌから攻撃が来る。

 しかし、それをバク転で避け、距離ができた瞬間にモードチェンジ。

 魔法特化のサキュバスモードになり、両手を向ける。


「っ、なんだその姿は!? その姿はまるで魔族――」


 カマセーヌがフィラミアの姿を見て一瞬の隙を作り出した。

 その決定的な隙をフィラミアは逃さない。


業火砲(フレイムキャノン)


「ぐぁっ!」


 フィラミアから放たれた大きさ50センチの火球がカマセーヌに直撃する。

 大きな爆発とともにその騎士は吹き飛び、地面を転がっていく。

 しかし、直撃でも倒せなかったようで、その騎士は剣を支えに立ち上がった。


「おい、お前......その姿はなんだ? 獣人じゃなかったのか!?

 その角に、羽、そして尻尾は紛れもなく魔族の特徴だ。

 俺には耐幻惑の魔道具がある。幻惑魔法ではないことは確かだ」


「獣人ですよ。ただし、魔族でもあります。つまり、ハーフですね」


「獣人と魔族のハーフだと? それが事実ならただ事じゃないぞ。

 .....いや、そういえば以前に獣人と魔族を合わせたような存在がいたと部下から聞いたな。

 あの時はただの眉唾だと思っていたが、そうかそれが貴様か」


「だったらどうしますか?」


「喜べ弱者、お前の価値はたった今跳ね上がった。お前の存在は非常に貴重だ。

 捕まえても、殺して連れても剣王国の、そして俺の評価が跳ね上がる。

 フハハハ、こんな好機はめったにないぞ」


 カマセーヌは剣先をフィラミアに向ける。

 そして、小さく「速度向上(アクセル)」と呟いた。

 瞬間、その騎士の姿は消え、気付いた時には目の前で突きの構えをしていた。


「牙溜閃」


「くっ」


 放たれた突き攻撃に対し、フィラミアは羽をはばたかせ背後に飛ぶ。

 直撃は躱した。しかし、剣先から放たれた斬撃が襲った。

 吹き飛ばされ転がった先で空に目を向ければ、刹那に影が差す。

 カマセーヌが大振りに剣を構えていた。


「斬鉄」


 フィラミアは咄嗟に横に転がって回避。

 素早く体勢を立て直した先にカマセーヌから薙ぎ払いが放たれる。


「流岩払い」


 しかし、その攻撃パターンは先程見た。

 見て来るとわかれば対処も可能ということだ。

 モードチェンジしてビーストモードへ移行する。


 同時に、膝を曲げて地面と平行になるように腰を曲げる。

 直後、鼻先スレスレに剣が通過していった。

 先程のモードのままであればおっぱいが切れてただろう。危なかった。


「チッ!」


 カマセーヌが舌打ちした。当たると思った攻撃が躱されたからだろう。

 つまり、攻撃の後隙が生まれたということ。反撃の絶好のチャンスだ。

 すぐさまサキュバスモードに移行し、手を伸ばして魔法を放つ。


風刃(エアスラッシュ)


 数ある魔法の中で風属性の魔法は発動までのスピードが一番早いとされる。

 その中でも初級魔法スキルである<風刃>は魔法に長けた者であれば1秒にも満たない速度で放てる。

 そして、フィラミアの放った魔法も1秒を切るとは言わずとも、それに近い速度で放った。


二倍速度向上(ツヴァイアクセル)


「っ!?」


 しかし、その攻撃はカマセーヌが体をのけぞらせることで躱された。

 その勢いでバク転したその騎士は着地から素早くフィラミアに襲い掛かる。

 先程よりも明らかに速度が速くなっている。


「ふんっ!」


「いっ!」


 咄嗟に短剣でガードできた。しかし、勢いよく吹き飛ばされ、背後にある民家へ突撃。

 そのまま支柱が折れた民家の屋根が寝そべる視線の先から降ってきた。

 ドンガラガッシャンと瓦礫が体を圧し潰してくる。

 咄嗟にビーストモードにして防御値を上げたが、それでも全身いたる所に痛みを感じる。


「先程俺に攻撃を当てられたからといって勝てると思ったか。

 弱者が粋がるからこうなるんだ。

 そろそろ他の部下達も多少は動けるはず。

 これでお前の命運は尽きたというわけだ」


―――ガラガラ


 屋根の一部が浮き上がり、その下からフィラミアが起き上がる。

 砂埃が空を舞い、日差しに汚れたメイド服が照らされる。

 そんな戦力差にこのまま続けていても負けは見えている。

 しかし、フィラミアの瞳はまだ負けを認めていない。


「なんだその目はまだやる気か?」


 自分にできることを考えろ。

 今できることはきっと助けに来てくれる主様(ユトゥス)が来るまで耐え忍ぶこと。

 あの人なら必ずこの騎士に勝つことができる。それまで時間を稼ぐ。

 

「えぇ、私こう見えても負けず嫌いなもので」

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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