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逆転の反逆者、その意に逆らう~職業不明の青年が迷宮で神様から力を貰い、その力で英雄へと至るまで~  作者: 夜月紅輝
第2編 異端者は集う

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第44話 騎士団の襲撃#4

 村を守る若い男を間一髪で助けることができたフィラミア。

 吹き飛ばした騎士を警戒しながら、尻もちをつく男に話しかける。


「大丈夫ですか?」


「あ、あぁ、なんとか。君のおかげで助かったよ。ありがとう」


「礼には及びません。この村を守ることは主様の命ですから。

 それよりも、あなたはこのままここでジッとしていてください」


「まさか一人で戦うつもりか!? 敵は一人じゃないんだぞ!?」


「問題ありません。そういう戦い方は心得ていますので」


 フィラミアの強い言葉に若い男も自分の戦力不足を悟り黙る。

 そんな男の悔しそうな顔を横目に捉えつつ、耳で周囲を探った。


 今村の中にいる騎士の数は7人。

 しかし、そのうち戦っているのは3人。

 他4人は一か所で集まっている。

 聞こえてくる話声的におしゃべりをしてる感じだろう。

 つまり、この村の戦力差を見て3人で十分と判断したようだ。


「痛ったぁ......いきなり吹っ飛ばすとかどんなクソ野郎だよ。

 頭打ったし、もう許さねぇ......って思ったけどめっちゃ可愛い子じゃん」


 頭を手で押さえた騎士がフィラミアを見てそんなことを呟く。

 その評価に容姿に対する自己肯定感の高まりを感じ、思わず口角が上がりそうになる。

 ダメダメ、今は戦いに集中せねば。

 それに見せつける相手が今はいない。


「まさかこんな子が村にいたなんてな。なんでメイド服かは知らんけど。

 でもまぁ、さっきの行動は大目に見てあげるよ」


 騎士は立ち上がり、軽く甲冑の砂埃を払う。

 身なりを整えるとフィラミアに提案した。


「ねぇ、俺のとこ来ない? 正直、こんな場所にいるのはもったいないって。

 今なら見逃してあげる。殺すのもったいないし」


 男らしい無遠慮で身勝手なオラオラした告白だ。全っ然、響かない。

 なんというかむしろ冷めてくる。所詮、容姿に惑わされた人だと感じて。

 視線も先程から嘗め回すように全身を見てくる。

 なるほど、これが興味を持たれてると興味が湧かない淫魔の性か。


「あいにく、私も獣人ですので先程のこちらの男性との話は聞こえてました。

 その上で言わせてもらいますが、獣人を蔑むあなたにどうして私が靡くとでも?」


「あちゃー、聞こえてたか。魔物の声でかき消されてると思ってたけど。

 でもまぁ、所詮俺に捕まれば結果は同じだし」


 これが本当に騎士なのだろうか。

 騎士という存在は物語本でしか知らないが、もっと高潔で誇り高い存在だと思っていた。

 そうであって欲しかった。しかし、現実は目の前にいるコレ。


 到底受け入れがたい事実だ。むしろ、自分の主様の方が騎士に感じる。

 こんなの自分を捕まえた盗賊達と何も変わらない。

 ダメだ、こんな居心地の良い村からこの連中追い出さなければ。


「おーい、どうしたー?」


「何してんだよ」


「ん? お前らこそ何油売ってんだよ」


 目の前の騎士の後ろからさらに2人の騎士が追加された。

 最初の騎士と同じぐらいの強さだろう。

 人数的に不利だが、戦闘技術次第ではどうにかなる。


「俺達はもう自分の範囲の仕事を終えたって。

 あの時じゃんけんで負けなければこんな面倒なことしなくて済んだのに。

 ちなみに、女子供は捕まえてある」


「子供は奴隷商に売れば小遣い稼ぎになるし、女は帰り道のストレス発散になるし」


「おいおい、いいのかよ。獣人とヤちゃって」


「所詮は頭の固いお偉いさん方が言ってるだけさ。俺別にそこまで嫌ってねぇし。

 でも、処罰されるのが嫌だから従ってるだけ。

 いいか? 要はバレなきゃ犯罪にはならないってことよ」


「ぎゃははは、お前サイテーじゃん!」


「だけど、考えてみろよ。俺達、下級兵士が相手にしてもらえるなんて基本娼婦だけ。

 でもほら、見てみろって。あの子獣人だけどめっちゃ可愛くね? あの子とヤれるかもしれねぇんだぜ?」


「うわ、やっば何あの子。容姿レベル高っ!?」


「ん? ......なんかあの子見たことあるような」


 なんという低俗な会話だろうか。

 聞いてるだけで耳が腐りそう。

 もうこれ以上聞くのも不愉快だ。

 特に興味のない異性の会話は苦痛に他ならない。


「あの、もういい加減黙ってもらえますか? 不愉快なので。

 私、容姿を褒められるのも好きですし、そういう視線で見られることも苦手じゃありません。

 ですが、それはあくまで自分が可愛いと自覚できるからです。

 それに私、私の容姿に興味持つ人って興味持てないんですよね」


「へぇ、言うじゃん。嫌いじゃないよ、可愛いからだけど。

 お前ら手を出すなよ。俺が最初に見つけたんだ。俺が捕まえる」


 最初の騎士が剣を構えた。ただひ、鞘入りだ。

 あくまで捕まえることを意識してるらしい。

 それに合わせ、フィラミアも臨戦態勢に入る。


「多少痛いだろうが、我慢しろよ!」


 騎士は踏み込み、飛び出した。

 素早い。一歩で数メートルは移動してくる。

 そして、戦い慣れた者が纏う特有の覇気。

 しかし、それは所詮Bランクの魔物以下。

 恐れることは無いもない。


「しっかり構えてな」


 目の前に来た騎士が剣を振り下ろす。

 それを右手に持つ短剣で受け、いなす。

 すると、騎士はすかさずショルダーチャージ。

 しかし、フィラミアはそれすらもひらりと交わし、背中を斬る。


「ぐっ!」



 騎士が仰け反り怯んだところで、すかさず襟を掴む。

 襟を引っ張り、騎士の体勢を崩した。

 騎士は後ろ足を出して堪えようとするが足払いして阻止。


 完全に騎士の体勢が崩れたところで、後ろ回し蹴りで顔面に蹴りを叩き込んだ。

 その強烈な一撃に兜とともに騎士は吹き飛ぶ。

 できた。主様より教わった体術で初めての主様以外の対人戦を制した。


「おいおい、女相手に何やってんだ?」


「こっそり酒でも飲んでたか?」


「いや、違う。これまで戦ってきた獣人はチャンバラごっこするガキみたいな感じだったが、目の前のあの子は紛れもなく戦士だ。手を貸せ」


 吹き飛ばされた騎士が放つ言葉に、他2人の騎士も笑いの声が消える。それだけ言葉が本気だったからだ。

 2人の騎士は互いに顔を合わせ、頷くと武器を構えた。

 最初の騎士も立ち上がり、構える。

 鞘は付いていない。3人とも真剣だ。


 先程の攻防は数秒程度のやり取りでしか無かった。

 しかし、それで相手の実力を理解する辺りは腐っても騎士という戦いに身を投じた存在なのだろう。

 相手が一気に3人に増えた。

 先程りよも気を引き締めなければ。


「行くぞ。最悪殺すことも考えろ」


「えー、もったいない」


「3人いればなんとかなるでしょ」


 騎士達(以下、騎士A、騎士B、騎士C)が一斉に走り出した。

 最初に仕掛けたのは騎士Aだ。その騎士は剣を地面に振り下ろす。


「地烈斬!」


 騎士Aが叩きつけた剣は地面割りながらフィラミアに向かって斬撃を飛ばす。

 フィラミアはその攻撃をひらりと躱した。

 すると、避けた先から騎士Bが剣を中段に構えて突撃してくる。


 騎士Bは剣を振るってくるが、フィラミアは後ろに下がってそれも躱す。

 瞬間、耳がピクッと空中から音を拾った。

 チラッと上を向けば、騎士Cが頭上から剣を構えて降ってきた。


 恐らく最初からどっちに避けても対処できるようにしていたのだろう。

 右に良ければ騎士Bが先行し、騎士Cが上から追撃。

 左に避ければ騎士Cが先行し、騎士Bが上から追撃。

 考えられた連携である。伊達に騎士ではないようだ。

 しかし、フィラミアは左手んも短剣で受け、さらに後ろに下がる。


「チッ、これも避けるか」


「勘がいいな。だが、これで終わりだ」


 騎士Bと騎士Cが同時に近づき剣を構える。

 剣の構え的に両方とも横薙ぎに剣を振るうつもりのようだ。

 隙を与えぬ追撃の数々。しかし、これは罠だろう。


 戦闘の時は目の前にある凶器に視線が囚われがちになる――というのが主様の教え。

 だからこそ、意識的に周囲に目を向けなければいけない。そのための訓練は行った。


 しかし、目の前から迫っている凶器から目を離すのは容易なことではない。

 それ故に、獣人としての能力をフルに使う。

 それは先程から何度も使用している耳だ。

 その耳で音を細かく聞き分ける。

 すると、目の前から迫る音ともにいる背後の騎士の存在に気付く。


 そう、この騎士二人は自分が攻撃をかわす前提で攻撃しようとしている。

 本命はその二人の後ろから剣を構えて迫る騎士A。

 だからこそ、相手の虚を突くには自ら一歩を踏み出すこと。


「すーっ、行きます!」


 気合を入れるように小さく息を吸い、前に足を大きく踏み出す。

 すると、騎士Bと騎士Cは攻撃タイミングがずれ、慌てて剣を振った。

 しかし、直前でしゃがんだフィラミアに躱される。


 フィラミアはすぐさま立ち上がりながら走り出し、正面から向かってくる騎士Aに突っ込む。

 騎士Aも慌てて剣を振るうが、その手を取り、胴体に沿うように背を合わせる。


「せやぁ!」


 騎士Aを投げ飛ばし、地面に叩きつけた。

 そして、地面に寝そべった騎士Aの頭に思いっきり踏みつけ気絶させる。

 すぐに視線を残りの二人に向ければ、こちらに向かって走ってきていた。


 しかし、騎士Aの寝そべる体があり、避けて躱しても、跳躍して躱してもわずかな時間の余裕がある。

 その余裕があれば、後ろに下がり追撃の準備ができる。

 なぜなら、自分の力は近接に特化したものだけではないから。


二つの猛風(ツインエアブラスト)


「「がはっ!?」


 サキュバスモードに変化したフィラミアに驚く騎士Bと騎士C。

 そこにフィラミアの伸ばした両手の魔法陣から風の衝撃波が放たれる。

 瞬間、二人の騎士は数メートルの距離を吹き飛び、地面を転がった。


「どうですか? これが主様より授かった力の使い方です」

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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