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逆転の反逆者、その意に逆らう~職業不明の青年が迷宮で神様から力を貰い、その力で英雄へと至るまで~  作者: 夜月紅輝
第2編 異端者は集う

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第43話 騎士団の襲撃#3

「女どもは子供を連れて家の中へ避難しろ!

 おい、お前ら連中を護衛しろ! いいか? 死んでも女と子供は守り抜け!」


「急いで武器を持ってこい! 農業用のクワでもなんでもいい!

 とにかく魔物に対抗できるものを用意するんだ!」


「粉塵が見えてきたぞ! 急げ急げ!!」


 村人達の荒々しい声が響き渡る。

 フィラミアも村人達に交じって武器を抱えていると一人の若い男に話しかけられた。


「フィラミアさん、君はこっち側でいいのか?

 正直、女の子の君が一緒に前線へ出るべきじゃないと思うけど」


「お気遣いありがとうございます。ですが、私より強い人がいるんですか?」


 フィラミアがこの村で滞在した数日の間に、彼女は獣人達の訓練に参加していた。

 その際、乱取りで戦った男達は全員手玉に取られて負けたのだ。


 それは彼女の美貌による油断もあったかもしれない。

 だが、それ以上に単純に彼女が強かった。

 それこそ男達が複数にで挑んでも勝ってしまうレベル程度には実力に差があった。


 そんなフィラミアのニッコリとした笑みから告げられる言葉に若い男は苦笑い。

 「それもそうだな」と苦笑いを浮かべ、彼女の前線参加に納得した。


 魔物が来る門の前に戦闘準備の整った村人達とフィラミアが立ち塞がる。

 そして、同じく前線にいた村長が全体に声をかけた。


「いいかお主達! ワシらは一度故郷を奪われた!

 焼かれる故郷をしり目に怯え逃げることしかできなかった!

 その時に誓ったはずじゃ! もう二度と故郷は奪わせはしないと!

 魔物だろうが騎士団だろうが関係ない! 故郷を奪わせるな! 」


「「「「「おおおおぉぉぉぉ!!!」」」」」


「行けえええぇぇぇぇ!」


 村長の檄と合図で村人達は一斉に魔物達へ突撃する。

 それに合わせ、フィラミアもビーストモードになり、走り出す。

 走り出した村人の誰よりも速く魔物に接近し――一閃。


 両手の逆手に持った短剣を振り回し敵陣に風穴を開けていく。

 その突破力に魔物が風に飛ばされる木の葉のように吹き飛ぶ。

 フィラミアの生来のスペックの高さがなせる技だ。


「魔物相手には全然自尊心が得られませんが、強制的に私に注目してもらいます――惑わせ誘う香り(パフュームフロー)


 フィラミアは瞬間的にサキュバスモードへ移行。

 淫魔族の力を使い、周囲にフェロモンをばらまく。

 すると、そのフェロモンに触れた魔物達は村へ行く足をたちまち方向転換させ、興奮した様子で突っ込んでくる。


「やっぱり魔物が興奮した様子で襲ってくるのは怖いですね。というか、嫌いです。

 小さい頃に森にいた狼の魔物に盛られたのを思い出してしまって」


 あの頃はまだ無知だったため「お母さん、狼さんに抱き着かれたー」と無邪気に笑っていたが、真相を知ったときは率直に言って気持ち悪かった。


 それ以来、上手くフェロモンの調整できない間は色んな魔物に襲われ、催淫の影響を受けない魔物以外は嫌いになった。


咲斬華(サザンカ)


 再びビーストモードに戻ったフィラミアはふわっと跳躍し、一回転。

 その可憐な姿は周囲に花びらが舞っているかのように幻視させた。

 されど、その際に振るわれた刃は数十にも至る。


 刹那、周囲3メートル以内にいる魔物は切り刻まれた。

 だけど、それだけじゃまだまだ魔物の勢いは減らない。


 身体能力を生かして走り回り、辻斬りをするように切り刻む。

 ずっと固まっていればさすがの自分でも数で圧倒される。


 しかし、隙間を縫って動き続ければ、興奮して盲目な魔物達は我先にと追いかけ、他の魔物とぶつかり、お団子状態となる。


砂の針山(サンドスパイク)!」


 一気に距離を取ってサキュバスモード。

 地面に手を触れ、お団子状態で固まっている魔物達に向かい土属性魔法を仕掛ける。


 魔物達の足元に魔法陣が広がり、そこから一気に砂を圧縮した太い針が魔物達を串刺しにする。


 少し戦闘に余裕ができたので周囲に目を向ければ、自分と同じく村人達が戦っている。


 何名かけがをしているようだが、それでも相手している魔物の数が少ないおかげか死者はいないようだ。


「森の奥からやってくる魔物の数が少なくなり始めてる。恐らく主様のおかげでしょう」


 魔物の大軍に関してはこのまま戦えば問題ない。

 しかし、それ以上に問題なのが騎士団の存在だ。


 騎士団は確実にこの村に向かって来ている。

 だけど、未だ騎士団の気配は感じない。

 いや、単に魔物の音でかき消されているだけか。


「おい、村を見ろ!」


 その時、一人の男の声が聞こえた。

 その声に振り向くと男は村に向かって指をさしている。

 村から白い煙が上がっている......?


 その瞬間、脳裏に燃える自分の家がフラッシュバックした。

 あの時も自分は数人の騎士によって追いかけられ、その隙に家を燃やされた。


 遠くから見える自分が過ごしてきた思い出と愛の詰まった家が燃える光景は、悲しさ以上に虚無が襲った。


 そして、騎士団から無事に逃げ切ったところで泣いた。

 嗚咽が出るぐらい大声で泣いた。

 悔しくて悲しくてもう感情がぐちゃぐちゃで。


 その時の弱い自分が今の自分を見つめている。

 このまま突っ立っているだけでいいのかって。

 いいわけがない! そんなのは嫌だ!

 今の自分には主様に鍛えてもらって力がある。

 その力を今振るわずにいつ使う?


「もうあの時の私とは違う。逃げるだけの弱い私じゃない。この運命に私は逆らう!」


 村に向かって勢いよく走り出した。

 申し訳ないが残りの魔物は村人達に任せよう。

 それよりも一刻も早く村に向かわねば。


―――ソルガール村


「おらぁ、蛮族ども! 人様の敷地に勝手に入るなって言われなかったか!?」


「どこへでも住み着くお前らは正しく害獣。正義の剣によって裁いてくれる!」


「お前ら、ここは死んでも守るぞ!」


「「「「おおぉ!」」」」


 村の中で数名の騎士団と武器を持った若い村人達がぶつかり合う。

 彼らの後ろには家の中で恐怖に怯える女子供がいる。


 彼らにとって決して引き下がれない戦いであった。

 しかし、必死の抵抗も空しく斬られ倒れていく村人達。


 それもそのはず相手は戦いに備えて長年鍛え上げてきた騎士である。

 いくら獣人族がもともとのスペックが高かろうと、その差は容易に縮まるものではない。


「不味い、このままじゃ押し切られるぞ!」


「絶対に引くんじゃねぇぞ!」


「安心しろ、女子供は斬らねぇよ。獣人を好む貴族だっているしな!

 どうせここで終わるんだったら、せめて俺達の小遣い稼ぎになれ!」


「ただし、老人はいらないから斬るけどな!」


「クソ野郎どもが!――ぬわっ!?」


 一人の若い男が騎士の一撃に吹き飛ばされ、民家のドアに突っ込んだ。

 その男が痛みを堪え、寝そべりながら目を開けると反転した視界に怯える女性。

 その女性にはまだ小さい子供達が一緒になって寄り添っている。


「くっ、まだだ......!」


「いいや、これで終わりだ」


 騎士の一人がゆっくりと若い男に近づく。

 兜によって顔は見えないが、声からはニヤついた表情を彷彿とさせる。

 その騎士は剣先を若い男に向けた。


「いいか? お前らはこの平和な世界が誰によって作られたか理解しろ。

 我らがメンダクス剣王国の祖、レイザクス様によって魔王が打ち滅ぼされ続く未来が未だ。

 つまり、お前らが盾突いてるのはレイザクス様と同じ人族様だ」


「ハッ、自分の成果でもないくせに権威を振りかざす姿はまさに子供だな。

 さぞかし苦労も知らずに裕福でのうのうと生きてきたんだろ。クソ野郎が!」


「言いたいことはそれだけか? あ~あ、可哀そうに。

 あ、お前じゃねぇぞ? そっちにいるガキどもだ。

 目の前で人が殺されるトラウマを目の前で見せつけられるなんて。

 お前がそんなこと言わなければそれぐらいの配慮してやったのにな」


「嘘つけ」


「正解♪」


 騎士は若い男に向かって剣を振り下ろす。

 スローに映る剣先に対し、その男が「チクショウ」と言葉を吐いたその時だった。


「がっ!」


 ドアの前にいた騎士が突然横に吹き飛んでいく。

 同時に、騎士がいた場所にはメイド姿の麗しき美少女が立っていた。


「これ以上、あなた達の好きにはさせません!」


 フィラミアは短剣を構え、戦闘態勢に入った。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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