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逆転の反逆者、その意に逆らう~職業不明の青年が迷宮で神様から力を貰い、その力で英雄へと至るまで~  作者: 夜月紅輝
第2編 異端者は集う

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第36話 救援部隊#2

「ドンバス、ヘイトを稼いでくれ!」


「おう! ――アイギスシールド!」


 ドンバスはアイアンベアの強烈な叩きつけを大盾でガードする。

 しかし、凄まじいパワーで押され、180センチある彼の巨体が徐々に後退し始めた。


「サクヤ! アニリス! 今だ!」


「ユーミ、強化よろしく!」


「わかった!――魔法・身体強化(フルパワーライズ)


 サクヤが動き出し、アニリスの指示出す。

 ユミリィが二人に強化魔法ををかけると、仕掛けたのはアニリスだ。

 陰陽マークのような赤と青の水晶が装着された杖先を標的に向ける。


「ドンバス、一緒に凍りたくないならそこをどきなさい――寒々しい棺(アイスコフィン)


「ちょぉっ!?」


 アニリスから放たれた氷の冷気。ドンバスは咄嗟に横に跳んで回避する。

 直後、それは先程まで足止めをしていたアイアンベアに直撃した。


 地面は瞬く間に凍り付き、冷気は標的の全身を凍り付かせるように纏わりつく。

 出来上がった氷の柱は天井まで届き、魔物の冷凍保存の完成だ。


 しかし、それも長くは続かない。

 ピキッと僅かに亀裂が入る。


「相変わらずこらえ性がないわね! サクヤ、今の内よ!」


「覇豪雷斬!」


 最高のお膳立てをしてもらったサクヤは標的の首を狙い全力で切り伏せる。

 雷を纏った剣は氷諸共まるで豆腐を切るかのようにスッと斬り込み、首を刎ねた。


「ふぅー、これで終わり。どのくらいかかったかな?」


「ざっと5分ぐらいってところか」


「四人がかりでね。タフいったらありゃしないわ」


 迷宮に入り、現在五階層。

 そこで見かけるようになったアイアンベアとの戦闘にかかった時間だ。

 Aランク冒険者パーティで挑んで一体の魔物を倒せるようになるまで五分。

 十分に長い戦闘だ。しかも、こんなのがこの迷宮にはわんさかといる。


「ユティーはこんな相手と戦ってたんだよね......」


 ユミリィがポツリと呟いた言葉。

 その言葉に全員の顔に不安の色が濃くなり始める。


 彼らが聞いた情報では、ユトゥスが時間を稼いだ相手は先程戦ったアイアンベア。

 Aランク冒険者パーティである“満天星団”で倒すのに五分かかった相手。


 ユトゥスのことを尊敬している彼らだが、同時にお世辞にも強くないことを知っている。

 それこそ、Aランクの魔物とタイマンして一分間生き延びられるかも怪しい。

 そんなことAランク冒険者で出来るかどうかの話なのに。


 希望は捨ててはいけない。

 しかし、現実が目を逸らすなと言ってくる。


 アイアンベアと戦闘したからこそ、その希望があまりにもか細いことを理解してしまった。

 不安の気持ちが大きくなってしまうのはもはや仕方ないことだ。


「ダメダメ、弱気になっちゃ! ユティーが強くなって戻ってくるって言ったのなら、必ず言った通りになる。

 ユティーは嘘だけはつかなかったわ」


「そ、そうだよね! よし、これからはアタシも攻撃しちゃおっかな!」


「おいおい、ユミリィは殴り僧侶って柄じゃないだろ。血の気は多いけど」


「でもまぁ、それぐらいの気持ちでってことだよ。僕達の方でも探索を続けよう」


 サクヤはチラッと後ろを見る。

 そこにいるのは3組のBランクパーティと数名のギルド職員。

 今はAランクパーティを小隊長として、道中にあった別ルートを手分けして探索して貰っているのだ。


「さぁ、出発しようか」


―――数分後


「なんかここやたら地面が赤くなってるな。乾いた血の色だ」


「捕らえた獲物を引きずった跡かもしれないね。どこかに巣があるのかも」


「それって確かアイアンベアの習性よね――」


「ねぇ、アレ見て!」


 三人が地面の血の跡に注目していると、何かに気付いたユミリィが指をさした。

 その方向を三人が見ると、ヒカリゴケに照らされキランと光る何かがある。


 ユミリィは足早に移動し、それを拾った。

 瞬間、彼女の心臓がキュと締まる。


「嘘......」


「どうしたのよ、ユーミ......ってそれ、ユティーの!?」


 アニリスもユミリィの持つ物を見て息を呑んだ。

 ユミリィが持っていたのは流れ星のバッジ。


 これは“満天星団”がAランクパーティになった時に記念で作ったチームバッジだ。

 世界に五つしかない特別な物。それが地面に落ちている。


「おい、これがここにあるってことは......」


「嘘よ、嘘。ありえない。ユティーが死んだなんて.......そう! これは落としただけよ!

 きっとそれに違いないわ! 全くユティーもおっちょこちょいなんだから!」


「だけど、アニー.......ユティーが落とすなんて――」


 瞬間、弱気になったユミリィの肩をガシッと掴むアニリス。

 彼女は希望を妄信した狂気的な目をしながら言った。


「ユーミ、これは落とした。いい?」


「.......うん」


「三人とも落ち着いて。まだバッジを見つけただけじゃないか。

 死んでると決まったわけじゃない。僕達が希望を捨ててどうする?

 今はただ出来ることをしよう。休憩必要ならするけどどうする?」


「「「行く」」」


「わかった。なら、進もうか」


 不安と期待を胸に抱き、四人はさらに先へと歩いていく。

 段々と見えてきたのは袋小路になった小さな空間だった。


 その空間には他の冒険者の物と思わしき荷物が散乱している。

 そして、極めつけは壁から半分飛び出した少女の像。

 四人はそれらを確かめるように観察し始めた。


「どうやらここら辺に落ちているのは、冒険者の物で間違いなさそうだな。

 だが、だいぶ古いものだ。この剣とか明らかに錆ついちまってる」


「恐らく今よりもずっと前に死んだ冒険者の荷物が迷宮に飲み込まれて、迷宮再構築の際に出土したって感じかしら」


「ってことは宝ってことか」


「一応、迷宮で手に入れた物はその人に所有権が移るし、迷宮から出てきたものだからそのカテゴリーで間違いないけど......あまり喜んで得るものじゃないわね。

 だから、売って未来の冒険者の礎になってもらうぐらいの物でいいんじゃない?」


 サクヤも同じように落ちている冒険者の遺物を見ていると、少女の像を眺めているユミリィに気付く。

 ユミリィは腕を組みながら少女の像を眺め、首を傾げた。


「.......どうしたんだユミリィ?」


「いや~、なんというかさ、こんな少女の像ってこれまでの旅の中で見たことないなって。

 ほら、アタシ達も今のランクになる前、色々な場所を回ってたじゃん?」


「その度にドンバスが馬車で酔ってたわよね。

 全くデカいってのに情けなかったわ」


「アニリス、それは今は関係ないだろ」


「まぁまぁ。でも、ユミリィの言う通り、像になるのは大体神様か偉大な功績を抱いた人物のどちらかだ。

 ということは、この像もかつて何かしらで有名な人物だったということだろうね」


 そんなものが迷宮にある。しかも、迷宮再構築を得て現れた。

 つまり、この像は歴史的価値の持つ像であると考えられる。


「この像、掘り起こしてみない?」


「ユーミ、また変なことを。それやるの私なんだけど?」


「アニー、お願い!」


「仕方ないわね」


 このパーティにおける年長者からの言葉に屈したアニリスは、魔法で像を掘り起こす。

 すると、それは細部までこだわって作られた剣士の少女の像であった。


「『凛々しい立ち姿の勇者リリージア』って書いてある.......あれ?」


「今度はどうしたのよ?」


「ほらここ! 皆見て!」


 ユミリィに呼び出されて集まる三人。

 少女の像の足元にある掘られたプレートを見る。


「製作者ガリウス=オルゲイズって人か?」


「違う違う、年代だよ。この年代が作られた三五四年ってとこ!

 確か、その時って初代勇者が魔王を倒した年だよ。でも、名前が違う。

 アタシ達が知ってる初代勇者の名前はレイザクス。それも男の人なんだよ」


 その言葉に四人は顔を合わせる。そして、改めてこの像を見た。


「.......なら、この少女は誰なんだ?」

読んでくださりありがとうございます(*'▽')


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