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逆転の反逆者、その意に逆らう~職業不明の青年が迷宮で神様から力を貰い、その力で英雄へと至るまで~  作者: 夜月紅輝
第2編 異端者は集う

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第29話 一人ぼっちの二人#1

 ユトゥスがアルミルという女魔族との出会いから一時間程が経過した。

 相変わらず森の中を彷徨い続ける。

 そんな中、ユトゥスは弓の素材である鳥の魔物の狩り続けていた。


 ヘルスパイダー戦から学んだ闇討ち技術を用いて、少しづつKPを稼ぎつつの矢づくり。

 それはいつ何があっても対処ができるように備えるためだ。

 その行動で戦闘に対する備えは潤っていく。だが、別の問題は山積みだ。


 色々な問題の中で一番の問題が情報収集だ。

 現状ユトゥスには自分の力で情報を集める能力がない。

 世界で一番人口の多い人族には呪い持ちとして恐れられ、三番目に多い魔族には目の敵にされている。


 アルミルのような気のいい魔族もいるだろが、あれはもはや少数派だろう。

 それを頼りに行動するのは危険すぎる。

 ならば、他の主な種族である獣人族、森人族(エルフ)鉱人族(ドワーフ)などの種族に頼ってみるか?

 いや、同じような事態になった場合生き延びれる保証がない。


「なら、裏切らない......いや、裏切れない仲間を持つことが必要か。となると、狙い目は奴隷」


 現実的に考えてそれが一番確実な方法だろう。

 しかし、ユトゥスは正直乗り気ではなかった。

 人を殺すことを躊躇うような自分が、生きてるとはいえ奴隷なら許容出来るかと問われれば出来るはずもなく。

 とはいえ、フードで姿を隠して人里に降りるのはあまりにもリスクが高すぎる。


「ん?」


 ユトゥスは〈魔力探知〉で反応を捉えた。

 すると、その反応は林道を進んでいるようだ。

 林道沿いの木の上に上り、ヘルスパイダー戦で手に入れたスキルの一つである<遠見>を使って反応の正体を探った。


 やってきたのは一台の馬車だ。

 まるで見せられない何かを運ぶように布で覆われている。

 また、その周囲には武装した男達が馬に乗って護衛しているようだ。

 ただし、その男達は随分と粗野な服を着ている。

 護衛としてはあまりにもみすぼらしい。


「あえてそのような格好しているのか、はたまた本当にそうなのか」


 ユトゥスはそう呟きながら顎に手を当てて思考する。

 恐らく相手は奴隷商、もしくは奴隷商に売り込みにしようとしている盗賊のどちらか。

 もし後者であれば、冒険者観点からすれば違法行為で捕縛対象だ。


「林道から森の奥へ入った? 何ん考えている?......まさか!」


 馬車の荷台に乗せているのが奴隷だとして、休憩するためにわざわざ魔物が多い森へと入っていく必要は無い。ならば、考えられることは一つ。


 ユトゥスの心の奥底から言い表せない憎悪が湧き上がる。

 盗賊に捉えられた奴隷が乱暴される話など初めて耳にするようなことでは無い。

 しかし、それでも女性が強姦されると考えた時、思考は殺意に染まった。

 それはまるで......誰かに乗っ取られるように。


「待っていろ。今助けに行く」


*****


 サマザール林道。サウザ森林にある唯一の林道である。

 しかし、旅商人がその林道を使うことはまず無い。

 なぜなら、そこから少し離れた所にサウザ街道という街から伸び、整備された道があるからだ。


 その道は魔物が現れにくいように配慮されており、旅をするならそんな安全な道を行くのは当然だろう。

 故に、わざわざ林道を使うということは、誰かに見られたくない何かを運んでいるという理由に他ならない。

 そして、その何かである少女は今一人の男によって外へと連れ出された。


「こっちに来い!」


「痛っ!」


 奴隷の少女の名はフィラミア。

 狐の獣人であり、頭頂部の金髪から毛先のピンク色がグラデーションになってるのが特徴の少女だ。


 その少女の手首には、繋がれた拘束具が紐によって引っ張られ華奢な手首に食い込む。

 手首は拘束具によって赤くなっていり擦れ、血が滲み、痛みが走る。何度も何度も。


 フィリミアが連れ出されたのはどこかの森だった。

 長らく布に覆われた鉄格子で過ごしていたため、見覚えが無い。

 しかし、自分が住んでいた森では無いことは確か。


「なんで私ばっかり......」


 フィラミアは耳をたたみ、希望の光を失ったような暗い瞳をしながら呟く。

 自分の不幸を呪ってもどうしようもないのは、フィラミアとて理解している。


 にもかかわらず、口から漏れるのはそんな言葉ばかり。

 無力な自分がこれからされることは何となく理解している。

 それこそ、そうなった原因はアレを見られてしまったばっかりに。


「相変わらず上玉のようだな」


 フィラミアの容姿は一言で言えば美少女だ。

 みすぼらしい服にやや痩せこけた頬が目立つが、それでも元の容姿が美しいことが隠しきれない印象がそこにはあった。


 髪は太陽のように輝く美しいブロンドである。

 今や土埃を被っているが、それでもなお美しさは健在だ。

 加えて、その髪は毛先にかけてピンク色にグラデーションになっている。


 また、少女は獣人である。種族は狐。

 ブロンドの髪からは同じような色の耳が生えており、腰からはフワフワであっだろう毛先がピンク色の尻尾が生えている。


 その珍しい姿が男達の情欲を煽るのだ。

 もっとも、それは男達に捕らえられた理由のオマケでしかないが。

 すると、一人の男がベルトに手をかけながらしゃべる。


「なぁ、俺はもう我慢できねぇよ。なんか見てるだけで下半身が熱くなってくんだ。

 いいよな? いいんだよな? ここに止まったってことは」


「何言ってんだ。商品価値を下げるな――と言いたいとこだが、コイツは別だよなぁ。

 なんたってさっきから妙に勃ちまくってしかたねぇ。なんだろうな、見てるだけなのに」


「そんだけ犯したくてたまんねぇってことだろ。

 ツイてるなぁ、俺達。まさかこんな上玉とヤれるなんて」


 ベルトを外し始めたのは一人だけじゃない。

 その場にいる全員が緩め始め、連れ出したフィラミアを大勢で囲む。

 熱ぼったい息を吐き出しながら、クスリでキマっているような目でフィラミアを見る。


 フィラミアの心中に気持ち悪さと恐怖が同時に襲ってきた。

 動こうにも足が竦んで動けない。

 必死に足を動かすが地面を滑るばかり。


「だ、誰か......」


 声に出そうとも恐怖でか細い声しかでない。

 恐怖という空気に飲み込まれている。


(怖い、怖い怖い怖い......!)


 口には出ない言葉が、フィラミアの脳内で繰り返される。

 瞬間、一人の男に足をガシッと掴まれるフィラミア。


「おいおい暴れんなよ。ちょーっとマッサージするだけだからさ。

 大丈夫、どうせ後でアへってんだからどうってことないだろ」


「嫌、やめて! 誰か、誰か!」


 拘束具で繋がれたフィラミアの両手が地面に男に押さえつけられる。

 そこにさらに一人の男がフィラミアに跨った。

 そして、その男はズボンに手をかけている。


 手同様に押さえつけられていたフィラミアの足は、男二人がかりで無理やり開かれる。

 暴れてもこの人数差では意味がない。

 魔法を使おうにも拘束具に邪魔されて不可能。

 完全な詰みだ。もはやどこにも逃げ場なんてない。

 

「嫌、嫌ぁ、誰か......誰か助けて! お母さん、お父さん! 」


「そんな都合の良い存在いるわけないだろ。お前は大人しく犯されればいいんだよ。

 強いて言うなら、お前が可愛い容姿をしているから悪い。

 可愛いのが罪ってな。それだけで罪の理由は十分だ」


「助けて! 嫌ぁ!!」


「んじゃ、じゃんけん通り一番槍いっただっきまーす――っ!?」


 フィラミアはギュッと目を閉じる。

 今から行われる一生もののトラウマに、屈辱に、苦痛に目を逸らすように。

 しかし結果から言えば、恐怖が現実になることは無かった。

 それどころか慌ただしい声が聞こえてくる。


「おい、フラッド!? どうした!?」


「なんだこの先が布で覆われた矢は?――んがっ、俺の股間に矢が!」


「襲撃だ! 全員、今すぐ戦闘に備えろ! この森のどこかで狙撃して――ふぐっ!」


「早くその女を二台に入れろ! この場からズラか――うっ、俺も股間に......」


 騒がしい声に目を開けて周囲を見る。

 すると、あっという間に戦闘準備に入っていた盗賊達が狙撃して倒された。

 転がっていた矢には矢じり部分に布が巻かれて非殺傷になっている。


(誰かが......助けてくれた?)


 フィラミアがそう思っていると、最後に立っていた盗賊の男がフィラミアに近づく。


「おい、立て!」


 フィラミアは盗賊の男に無理やり立たされる。

 荷台に乗せて一人でも逃げようとしているのだろう。

 しかし、フィラミアとてこんな逃げる絶好のチャンスをフイにするわけにはいかない。


「嫌!」


 フィラミアは体重を後ろにかけて抵抗する。

 男がどんなに強い力で引っ張ろうとも、足を地面に対する杭のようにして堪える。

 そうすれば、この状況を作り出している誰かがきっと助けに来てくれるはずだから。


「なら、貴様は寝てろ」


 瞬間、盗賊の男の顎がバシンと弾かれ、その男は膝から崩れ落ちて地面に寝そべった。

 また、それにより後ろに体重をかけていたフィラミアは尻もちをつく。


「おい女、怪我は?」


 そう聞いてきたのは、銀髪に宝石のように赤い目が特徴的な人族の青年――ユトゥスだった。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')


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