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辺境の瞳~カレンとジェラルド~  作者: 鵜居川みさこ
第一章
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【番外編】鳩芸のこと

「ニコル、あの子達を使うわ」


「鳩芸なさいますか?」


「ふふ、そう」


 レースのことを隣国の姉へ知らせるために、カレンはダヴィネス城から鳩を飛ばした。


 ~


 ストラトフォードからダヴィネスへ来るにあたり、様々な品物とは別にカレンと行動を共にしたのが鳩だ。


 兄は結構な数の鳩をカレンに託した。


 ストラトフォードでは、昔から王都のタウンハウスでも領地でも、伝書鳩の育成に力を注いでいた。

 政治の局面において、いかに情報を早く正確に得るかが勝機を左右することがある。

 外務の仕事を行う時にも、鳩は必ず数羽伴う。

 ストラトフォードにとって、もはや鳩達は立派なビジネスパートナーだ。


 幼い頃から鳩に慣れ親しんだカレン達だった。


 姉がシーズンの王都におり、まだ幼いカレンは領地で留守番の時など、気軽に鳩を飛ばし合っていた。

 長文は無理だが、それでも家族にしかわからない暗号を使えば、ほぼ内容は伝わる。


 一度、余りに過ぎて、父から大目玉を食らったこともある。日に何度もというのは、さすがに疑いの目がかかりやすい。


 それでも身近な鳩芸(腹芸ならぬ鳩芸とは、父の命名だ)は、ストラトフォードのお家芸で、王族の使う鳩よりも速くて正確だと父は影で自慢しているほどだ。


 隣国に嫁いだ姉のヘレナも、夥しい数の鳩を嫁入り道具にした。

 王都のタウンハウス鳩と領地鳩。

 他国にとっては間諜と取られてもおかしくないが、姉は譲らなかったらしい。

 姉にぞっこんの王太子が拒めるわけもなく、姉の鳩ライフは現在進行形で、嫁ぎ先に還元すべく、隣国の鳩の育成にも力を入れているらしい。


 結婚当初は故郷を恋しがり、故郷にしかないお菓子や化粧品、書籍等を送って欲しいと頻繁に鳩を飛ばし、その都度母は要望に応え、品物と共にまた鳩を託す。


 そして姉は、可愛い妹へ婚約祝いとして、隣国王家からの品々と共に鳩も送りつけてきた。

 その鳩にレースを運ばせたのだ。


 ダヴィネスでも鳩は使っていたが、親書を扱うことが多いので早馬が優先だった。


 カレンが持ち込んだ鳩の育成については、ニコルが率先して飼育のやり方を伝授したらしい。今では鳩担当の飼育係がいる。

 隣国王族の使者が訪れたのだ、ますます育成に力が入るだろう。


 隣国からダヴィネスへ来た姉の使者も、また妃殿下からカレンへと鳩を伴って現れた。


 - 気軽に飛ばすように 愚痴でも構わない

 ダヴィネスは蜂蜜が美味しいと聞いた -


 使者が持参した姉からの手紙の最後には、なぜか鳩用のような文言が綴られていて、カレンは吹き出した。


 そして、帰途する使者にはダヴィネス産のとっておきの蜂蜜と、ダヴィネスへ帰る鳩達を託したのだった。

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