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勝てば官軍 弐 【呪術修正物語】  作者: 桜山 風
第二章 懐柔
22/28

第十話

「あなたとは親の代からの長い付き合いですからね。

 どう対処すればいいかは心得ていますよ」


「うんうん。

 うちが独楽米こまごめに引っ越す前はよく遊んだよね」


 刀自子が育った須佐伯爵家の邸宅は、新宿御苑にほど近いところにある。富鳥子爵家の旧宅もその隣にあった。


 湯気が立ち上る紅茶のカップを前に、刀自子は吐息を漏らす。


「帰国するなり騒動に巻きこまれてその対処に駆けずり回り、

 せっかく旅行で蓄えた気力体力を使い果たしました。

 しばらくは家で休息します。

 でも、その前に幼馴染と語り合って、

 この張りつめた心をほぐしたいので、

 ご迷惑でなければ相手をしていただけますか?」


「遠慮しないでいいよ。

 ぼくにできることは、なんでもやってあげるからね。

 知らないこととはいえ悪いことをしてしまったからさあ。

 ごめんね、刀自子ちゃん」


 言葉では謝罪したが、義光が頭を下げることはなかった。


「あの入谷が、

 神代細胞の実験は刀自子ちゃんからの依頼だなんて嘘をつくから、

 ぼく、すっかり騙されちゃったよ。

 なにしろ入谷は弁護士だからさ、口がうまくてね。

 それに刀自子ちゃんは旦那さんに死なれて気鬱になっているから、

 問い合わせてよけいな心配をかけたくなかったし。

 帰ってきたらこんなにすごいものができたよって、

 びっくりさせたかったんだ」


「ええ、そうでしょうとも」


 深く追求せず、刀自子は紅茶を口にした。


「ところで、会議はどうなったの?」


「上首尾でしたよ。皆さんは同意してくださいました」


「同意を得ただけ? 

 やっぱりなあ。

 ほんと、会議って無駄だよね。

 だって、それぞれには話をすでに通してあるんでしょ? 

 ただ集まって、だれも大した意見を出さずに話し合ったふりだけして、

 すでに決められた結論に賛成する。つまんないったらありゃしない」


「自分のところだけが突出せず、

 横並びでいることを確認しあう行為が官僚にとっては必要なのですよ。

 軍人も所詮は国家公務員ですし、

 同じ鋳型から作られた役人の扱いなど、

 コツを覚えればどうということはありません。でも」


 刀自子は今日の主目的である話題を切り出した。


「この世には取り扱いに細心の注意を払わなければならない、

 危険な化け物がいます。

 そう、あなたのところにいた犬田」


 刀自子の言葉を遮って、義光はわめいた。


「犬田なんていないよ! いないから、ぼく知らない!」


「そうでしたね。

 では彼が今使っている新田という名で呼びましょう」


 落ち着いた様子で、刀自子は話を続ける。


「私の甥である翡翠は新田に心酔しています。

 自分の異形の体を正常に作り替えただけでなく、

 それ以前から苦手な算術を克服する方法、

 社会生活に必要なマナーなどを手ほどきしてくれていたからでしょう。

 でも、その教育精神というのが……」


 恐ろし気に、刀自子は身を震わせる。


「まさに、地獄から這い上がった悪魔の思想。

 新田が暴走患者たちを言葉巧みに罠にはめて殺害するさまを、

 まるで神話の英雄が怪物退治でもしたかのように、

 翡翠は目を輝かせて語ってくれました。

 そして入谷の部下であった女を服従させるため、

 新田は卑劣極まりない策を立案し、

 翡翠を通じて私にも協力するよう要請してきました。

 それに従うなど人道上許されないことです。でも」


 ハンカチで、刀自子は目を押さえる。


「もしも彼の提案をはねつけたなら、私は殺されていたでしょう。

 すべての財産を翡翠に譲り

 その管理を新田に任せるという遺言状を

  拷問によって強制的に書かされたうえで……

  だから、私は

  ……あくまでも背任の賠償として法律上適正な処置をとっただけなのに

 計画的な復讐のように見せかけ、残虐な発言までして、

 新田に迎合しました。

 そして、入谷の部下に懲罰を与えるという名目で

 私は自身の人脈を誇示し……

 私を殺すとそれが利用できなくなると彼に理解させ、

 形だけでも服従しておいた方が得だという結論に導いたのです。

 ああ、私はなんと罪深いことを……」


「その男は

 自分の正体を巧みに隠して狡猾に策をめぐらす知能犯なだけではなく、

 ためらいなく人を殺すという凶暴な一面もある、

 まさに悪魔であり野獣だよね。

 そんなやつを懐柔するにはなりふり構ってはいられないよ。

 だからちょっとばかし悪辣な方法を使ったとしても、しかたないさ」


「ありがとう。そう言ってくださると、楽になりますよ」


――これは、

狡猾で凶暴な(新田音矢という名の)魔獣を手なずける物語――


「さてと。

 刀自子ちゃんの方策をあらためて詳しく聞かせてもらおうかな。

 なにしろ、ぼくは[真世界への道]の総裁だから

 運営に責任があるんだ。

 ただお願いされただけではねえ。

 やっぱり具体的な情報がないと納得できないよ」


 ふんぞり返った義光に、刀自子はうなずいてみせる。


「それは当然でしょうね。

 ではまず、軍と内務省衛生局の件を。

 昇一郎から翡翠が譲り受けて改良した神代細胞と、

 御子息が開発した超克細胞とは

 まったくの別物ということになりました。

 沖縄の無人島で発見された神代細胞の一部を

 陸軍は昇一郎に渡しましたが、

 はかばかしい成果が得られなかったので

 研究補助は打ち切りになったのです。

 その後、富鳥義知氏の要請に基づき

 軍の研究所に残されていた神代細胞を譲渡し、

 義知氏はそれを自分の技術で特殊処理して超克細胞を生み出しました。

 翡翠細胞はたまたま突然変異をしたもの。

 水晶の細胞は神代細胞そのものでしたが

 新田に投与したときに変化し改良された。

 そのように軍からは発表してもらいます。

 ですから、いずれ成果を発表なさるときは

 先行研究を越えた独自性を強調してください」


「それだと、

 なんか文句を言いそうなやつがいるような気がするんだけれど、

 大丈夫かなあ」


「その件は手を打っておきましたからご安心を」


 刀自子は自信ありげに微笑んだ。


「なにしろ、

 水晶や翡翠の持つ細胞は他人に投与すると死なせてしまいますしね。

 のちに生まれた新田の改良神代細胞は安全ですが繁殖力が低く、

 性能に至っては

 投与された本人の素質を伸ばすこともできず現状維持のみ。

 そんなものを学会で発表しても誰も相手にしてくれないでしょう。

 しかし、ご子息の超克細胞はまことに素晴らしい発明です。

 学会で超克細胞の有用性が認められたなら、

 医療に用いることを認可すると内務省衛生局から言質も取りました」


「いいねえ。

 国の後ろ盾があればどんどん超克細胞を普及させて

 傷痍軍人さんたちを治療できるし、

 ぼくが考えた船幽霊部隊を実戦配備すれば

 海の守りだって完璧になるよ。うふふう」


「次は内務省警保局の件です。

[真世界への道]は当面、

 特別高等警察の取り締まり対象とはされません。

 もちろん、

 他の団体のように繁華街で

 人目に付くデモンストレーションを行えば

 世間体から弾圧してみせなければならないでしょう。

 ですが、加入しただけなら法の範囲内です。


〈若者が均分主義に引き込まれる前に先手を打って、

 類似した思想に触れさせておくことにより免疫をつける。

 魔術を夢物語として楽しみ、

 日常は健全な社会生活を営む平和的な市民を育成することによって、

 反政府的行動者の発生を防止する〉


 という、富鳥さまの提言が受諾されました。

 恒星学園大学、菫青(きんせい)女子大学による活動の実績が認められたためです。

 この二つの学校からは均分主義者が駆逐されました。

[真世界への道]会員が積極的に新入生に勧誘を行い、

 すでに均分団に入会している者には

 集団で[訂正]を行って引きはがしたためです。

 恒星学園大学の栂尾(とがのお)教授から口添えもありましたし」


「うふふう。栂尾くんに協力を要請したのはぼくだよ。

 そして、ぼくが育てた[真世界への道]会員は優秀だからね。

 当然の結果さ。あ、でも……」


 なにかを思い出したのか、義光の顔に影が差す。刀自子はそれを見て取った。


「新田が入手した[真世界への道]の内部資料は、

 須佐家の元書生であった牧原警視が預かりましたよ。

 しかし、先ほども申し上げた通り、

[真世界への道]は取り締まり対象ではありませんので、

 資料は破棄されました。

 もちろん、新田にはそのことを教えていませんがね」


 彼女の言葉を聞いたとたん、義光の表情は明るくなった。


「うふふう。それは良かった。

 礼文にも言ってやろう。

 お前の失策で流出した資料は、

 ぼくの幼馴染が手を回して始末してくれたってね。

 ほんと、無能な部下の尻ぬぐいは大変だよ」


「ええ、富鳥さまのおっしゃるとおり、

 犬田黒助など存在しなかったのです。

 現実に居るのは新田音矢だけ。

 その彼も、

 超克細胞が生まれた1931年8月には

 本土に居なかったことが証明できています」


「え、ほんと?」


「はい。弁護士事務所の帳簿に、

 月ごとの新田への給料支払額と

 孤島へ送った三人分の物資の費用が記されていますからね。

 それを必要経費とし商店からの領収書も添えた申告書が

 税務署に提出されていますので、

 そちらのほうからも証明できます。

 もしも新田音矢が

 自分は犬田黒助と名乗って[真世界への道]に加入した、

 本土の研究所で[真世界への道]に

 自分の無害化された神代細胞を渡し

 超克細胞はそれをもとに開発された、

 などと妄言(もうげん)を吐いたとしても、

[真世界への道]側はきっぱりと否定することができるでしょう」


「うふふう。いいねえ。

 せっかくの発明にケチがつくような嘘をつかれたら、

 たまらないものねえ」


 嬉しそうに笑ってから、義光は尋ねる。


「で、そっちがわの公式状況はどうなるの?」


「生まれつき体が弱かった翡翠と水晶は

 孤島で父の遺物を守りつつ療養していました。

 しかし少し体が丈夫になった翡翠は本土での生活を望み、

 兄弟の世話係として入谷弁護士事務所は

 新田音矢を1930年4月末に雇いました。

 翡翠は新田や瀬野に伴われて外出するなどしていましたが、

 水晶は都会に慣れず、貸家に引きこもっていました。

 ついには彼が神経を病んでしまったので

 兄弟は新田を伴って孤島に戻りました。

 その後、新田が桟橋から落ち大波で岩に叩きつけられ重傷をおったため、

 翡翠は一か八かで水晶の神代細胞を投与したところ、

 偶然にも無害化しました。

 翡翠は独学で神代細胞の研究と受験勉強を始め、

 その助手も新田は務めたのです。

 そしてとうとう翡翠は新田の細胞を利用して

 自分の虚弱な体を治療することに成功しました。

 しかし水晶の神経は衰弱を続け、

 ついには寝たきりになってしまいました……」


 つじつま合わせに終始した言葉を刀自子は紡ぐ。


「とにかく、

 彼らは1931年7月に孤島へ戻ってから

 私がそこを訪問した1933年4月まで

 ずっと本土から離れたところにいたのです。

 そのことを礼文どのにもよく言い聞かせてください。

 新田は無関係なのだから彼に報復しないようにと。

 もちろん翡翠に対しても同じことです」


「そりゃあ、

 翡翠くんは[真世界への道]に

 なにも悪いことをしてないから当然だよ。なんで警戒するの?」


「義光さまと違って礼文には、

 まんまと新田に騙されて資料を盗まれたという恨みがありますからね。

 翡翠は新田の友人ですから巻き添えにされるかもしれないと、

 私は心配なのですよ。

 そして、新田が礼文どのの襲撃を恐れて

 住みこみの職場に引きこもるようなことになると、

 私にとって都合が悪いのです。

 もちろん、彼には極秘捜査中なので

 [真世界への道]とは接触不可ときつく申し渡します。

 お互いの利益を守るために相互不干渉条約を結びましょう」


「うん。礼文にはきっちりと言っとくよ。

 でも刀自子ちゃんの命令に犬田は素直に従うかなあ」


「犬田?」


「ち、ちがう新田! 言い間違えただけ!」


「そうですか。新田のことなら心配いりません。

 相互不干渉条約が締結し

[真世界への道]に攻撃される心配なく

 自由に外出して行動できるという状況をあたえる。

 それこそが彼の力を奪う計略なのですから」


「自由にしたら、

 奪われた権利と地位を取り返しにくるんじゃない?」


「大丈夫です」


 刀自子は断言した。


「新田には、翡翠を育てた褒美、

 および戸越たちから取り立てた賠償として

 多額の現金を渡しました。

 今のところは真面目に労働していますが、

 やがて少しずつ気が緩んでいけば放蕩(ほうとう)を始めるはず。

 なにしろ若い男ですし、

 帝都にはさまざまな楽しい場所がありますからね。

 たとえば、あの〈フルール ドロンジェ〉とか」


 これは新宿の東口側にあるダンスホールのことだ。


「ああ、ぼくたちも若いころ遊んだねえ。あそこは良い店だよ」


「厳しい環境に置かれてたくましく伸びる雑草でも、

 あふれるほどの肥料と水を得たなら

 根腐れを起こしてひ弱になっていくものです。

 彼を堕落させる。

 それが私の狙いであり、

 同時に富鳥さまの[真世界への道]を守るための布石でもあります。

 飲む打つ買うの三拍子に夢中なら、

 つらく苦しい復讐などやる気にならないでしょう。

 そうして新田が堕落すれば

 翡翠もあきれて彼との付き合いをやめたくなるはず。

 無理やり絶交させれば翡翠も反抗するでしょうから、

 自分から見限るように仕向けたのですよ」


「刀自子ちゃんは道楽者の心理を良く知っているねえ。

 元芸者だったお母さんに教わったのかな? 

 なにしろあの人は、維新政府の高官に取り入って

 旦那を伯爵にしたくらいのやり手だからねえ。

 ぼくの母上にはとてもできない偉業だよ」


「ええ。富鳥さまの御母堂は、

 とても清廉な心の持ち主でいらっしゃいました」


 褒めると見せかけて母の職業を義光はけなしてきたが、刀自子は軽く受け流す。



   ◆◆◆◆◆◆



 庭に生えたカラスノエンドウは蝶に似たピンクの花をたくさん咲かせていた。その一部はすでに実となっている。音矢はまだ青いサヤを一つむしった。


「今日の会議が成功すれば、

 音矢くんとボクの安全が保障されるだけでなく、

 改良神代細胞が超克細胞とは別個のものと認められ、

 独自の研究を行うことができる。

 刀自子さまは、そう言って出かけたが……

 なんだか不安になってきた。そんなにうまくいくだろうか」


「僕たちの処遇が決まる、まさにその日に、

 自分で行動して影響をあたえることはできない。

 なんとも、もどかしいものです。

 せめて今日の会議が上首尾に終わることでも祈りましょう」


 中に詰まった種を音矢は丁寧に取り除いていく。


「祈ることも自分たちの行動に入るのでは?」


「それでうまくいくなら、この世に不幸なんぞありませんよ。

 でも、何もしないでいると我慢できなくなって、

 やらなくてもいいことをしてしまい

 事態を悪化させてしまいますからね。

 祈りは、その予防策です。

 この件は余計なちょっかいを出さず、

 刀自子さまにすべてお任せするのが最善なんですよ。

 だから僕たちは静かに待機していなければなりません」


「昔の君は、

 作戦の立案を他人任せにせず、

 なんでも一人で決めて実行したがる癖があったが、今日は違うな」


「出会ってからこのかた、

 刀自子さまの実力を見せつけられてきましたからね。

 あの人を目の当たりにするまでは、

 華族なんて金と権力があるから威張っているだけで

 本当は無能なんだろうと僕は思いこんでいました。

 なにしろ実際に遭遇した華族が笹熊と富鳥でしたから。

 しかし、刀自子さまは違う。

 あの人は持って生まれた高い地位と豊かな資金を

 上手に使いこなしている。

 悔しいことに、今の僕には及びもつかない境地です。

 だから負けず嫌いな意地をはって反抗するなどといった

 子供じみた態度を示すことなく素直に白旗を掲げ、

 彼女の指示に従いましょう。それに……」


 音矢は意味ありげにほほ笑んだ。


「僕たちが幸せになるための種子は、

 すでに[真世界への道]へ植えつけてありますしね。

 今のところはおとなしく発芽を待つしかやることはありません。

 いわゆる農閑期ってやつです」


 彼は仕上げに爪でサヤの形を整える。


「なんにしても、

 刀自子さまがあのタイミングで帰国してくれたのは、

 本当に僕たちにとって運が良かった。

 すべてがうまくいって、まったく幸せなことですよ」


 音矢はカラスノエンドウのサヤを口にくわえ、吹く。

 

 プエー プププエー


 滑稽な音が鳴り響いた。



――そして、これは

    ウブな男が性悪女にだまされる物語――



「私と甥たちが幸せに暮らしていくためには、

 どうしてもあなたの力を借りなければなりません。

 なにしろ、私は女ですから」


 伏し目がちに刀自子は語る。


「家の事情で父から社長の地位を譲り受けましたが、

 それは昇二郎が成長するまでの

 中継ぎ役を押し付けられただけのことです。

 その勤めを果たした今、

 表舞台に立つ気など、毛頭ありません。

 あとは昇一郎の遺児が縄目の恥を受けることなく、

 静かに日を送ることだけが私の望み……

 翡翠が自分の体調を維持するためには

 どうしても神代細胞を研究しなければなりませんから

 進学はさせますが、

 学者として評価されることまでは期待しておりませんよ。

 ただし、

 それは平和な生活が維持されるという条件のもとに

 成立する話ですが」


 ここで刀自子は顔を上げ、義光に目くばせする。


「これは須佐家だけの小さな問題ではありません。

 私たちの祖国、大日本帝国は現在たいへんな苦境に陥っています。

 この国難を乗り越えるためには、

 超克細胞を持ち、

[真世界への道]という思想集団を引きいる

 富鳥さまに頼るしかないのです。

 どうか光文維新を成し遂げてください。

 そして平和で豊かな国家を建設してください」


「いわれるまでもないよ」


 義光は居住まいを正し、語る。


「思えば、

 あの野良犬を拾ったことがすべての始まりだったんだな。

 礼文を義知ちゃんの側役として紹介してくれた入谷が

 続いて神代細胞をぼくにもたらし、そして現在に至る。

 今、ぼくは医学に革命をもたらす超克細胞を手にし、

 社会を改革する[真世界への道]の総裁となった。

 これはきっと運命。

 神様がぼくに日本を救えといっているんだよ!」


 拳を握り締め、義光は宣言する。


「ぼくは誓う。

 かならず大日本帝国を君側の奸から取り戻し、

 すばらしい国を作り上げて見せると!」


 まるで青年に戻ったかのように頬を上気させる幼馴染を、刀自子は優しいまなざしで見つめていた。




第二章 懐柔 終わり

第三章 勝利 に続く。




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