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アウトランサー あるいは敗北神話  作者: ニタヲ
PIP EMMA
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oo7- なぜBBA屋なのか?


 おおすげえ。

 ガチでつながってら。

 ……てるけど、なんでここにした。


 爺さんが言ったとおり、モグラ道(モール)は色んなところにつながっているらしい。

交差店(カウンターBARテン)》の便所の中から出てきた。


 便利なのはいいがつなげるところを間違っている気がする。


 抜け道専用に造っているからか、匂いや汚れはなかった。

 トイレから出て店内を見まわしたが誰もいなかったので厨房に行き、冷蔵庫のとなりにあるエレベーターに乗った。


 2階に上がって自分が目醒めた部屋をのぞいたが、そこには誰もいなかった。


 あとは、通路の奥の部屋だけだ。


 中央にあるエレベーターを境にして、まだ見ていない方の部屋がある廊下は異様に飾られていた。

 朝と昼ぐらいハッキリと違う。

 最初の部屋の方が昼だとしたらこっちは夜だ。

 禍々しい吊るしものや骨董品で装飾されている。



 扉の前に来てノックしたが反応はなかった。

 鍵はかかっていない。


「すいませーん、入りますよー」


 ドアを開けようとしたとき、後ろから声を掛けられた。

 

 「いやー、すまない。ちょっと出かけていたんだ」


 ゲディだった。


「これ、あのお爺さんから預かりものです」

「おおそうか、ありがとう」

 

 あばら家(バラック)にいた爺さんから預かっていた手紙を渡した。


「それで、服はどうだ? 見る感じ良さそうだが」

「ええすごくしっくり来ます」 

「そうか、それはよかった」

 

 ゲディはニッと口角を上げた。


「じゃ、早速だがまた仕事だ、エルガー」



――

 

 BABA屋があった。

 赤い看板に灯るネオンの文字。

 最初のAが消えてB BA屋になっている。


 高床式住居みたいに人二人分くらいの高さに床があり、床下に巨大な人間の腕が8本付いて建物を支えている。

 大きな木の幹と上手い具合いに融合した家のように見える。

 

 階段も梯子も見つからなかったので大声を出して叫んだ。しかし、反応はなかった。

 

 と、思っていたら、床下から長い首が伸びてきた。首には長髪の女の顔が取り付けられていて、それが喋った。


「なぜカンビュセスはペルシオンの砦を超えれたか?」


――いや知らん。が、これはあれか。謎掛けみたいな。


 よく分からない単語が出てきたので、とりあえず適当に言っておいた。

 

「頑張った、から……」


 幼稚な回答だからか反応はない。

 少し間があって次の質問がきた。


「なぜBABA屋でなくてBBA屋なのか?」 


――まあやっぱり普通に考えたらババアなんだろうけど、そんな汚い言葉を言ってしまった奴は入れさせませんということなんだ、きっと。

 しかし、他に何があるかといっても、バーベキュー、ビーバー、ぼうず、バカにしてんのか……etc

  


「”僕は馬鹿”、だから?」


 しばらく間が空いてから反応があった。 


「うん、それは間違っちゃいないねえ。とくに今のまま(As Is)のあんたにはピッタリだ」


 それまでしとやかな口取りで話していたお姉さんの声は、急にしわがれた婆さんの声に変わった。


「でも、これから(To Be)のあんたにはしっくりこない。あんたはまだ銃を抜く(ジャックアウト)時にはない、けどもいつか大当たり(ジャックポット)を引くことがあるじゃろうて。そのときの展望(ヴィジョン)に必要なのは野望(アンビション)じゃ」


 そこで婆さんの声はいったん止まった。


「もう分かるかね? 合言葉は―Boys Be Ambitious―(若者よ、大志を抱け!)」


 そう言い終わらない内に、長い首の女は口を開けておれを飲み込んだ。 

 

――


 長いトンネルを抜けてたどり着いた先は庭園だった。

 ていねいにそろえられた芝生の毛先、柔らかい絨毯のように体を包み、座り心地は最高である。 

 薄っすらと漂う花の香り、昔懐かしい夕餉(ゆうげ)の匂い。

 清らかで溌剌(はつらつ)、文句の付けようがない。

 

 灰色の猫がてくてくやってきた。

 頭を撫でると、芝生と同じ感触がした。

 そう、この庭園は巨大な猫の背中に乗っているかのようにのんびりできる。

 すぐにでも寝れそうだ。

 

「熱と渇きに満ちた砂漠を超えられたのは猫がおったからじゃ!」


 さっきの婆さんの声の主がやってきて猫をひっ捕まえた。


「渇望する者には癒やしがいるんじゃよ。砂漠には潤いがの」

 

 婆さんは黒い羽で覆われたローブを着ていて、フードを目深に被っていた。

 腕は肉だけ削ぎ落とされたかのように細く、白い皮が骨に張り付いている。

 片肘に手提げ籠をかけ、中は赤いリンゴで埋まっていた。

 大きな歯車の上に乗っていて、それで移動しているようだ。

 

 「ん、こいつはまた灰に被れおって」 


 そういって泉の水が流れる所に猫を落とした。

 白くなった猫はこちらに近寄り体を震わせた。


――おい、向こうでやれ。

 

「それで、あんたは三発しに来たのかい?」

「え……?」

「え、じゃあるまいて。どんな奴が来るかと思ったらとんだ腰抜けとは」


――すいませんね、腰抜けで。


「酒、賭、女と相場は決まっとるじゃろう?」


「過去は忘却、未来は妄想、右にさいころ、左におちょこ。酒飲み、駆け落ち、遂にあべこべ、終いに女は髑髏(されこうべ)。灰は平等じゃ、みなが最後に被る結末じゃ。そして骨は美しい」


 婆さんは黙った。


「like this old woman(この婆さんのように)」


「は、はあ……」


――何が言いたいのだろう。


「ところでどうじゃね、()()()と一発?」


 フードで隠れて顔は見えないが、ぐっと頭を近けてきた。


――これはガチで言ってるやつか?


「す、すいません、用事が……」

「何を言っとんじゃい、女から誘われたんならぐいっと攻めんかい。仕事なんぞあとにしんさい、まずは遊んで身も心もほぐしてからじゃ」


 

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