あなたを永遠に愛します(完)
フレーナがシシロ村を発って数か月の月日が経った。
旅の宿で彼女は夜空を眺めていた。
蛍が飛び回り、月光が木々の合間から射し込む。
彼女は旅の疲れを感じつつも安らいでいた。
旅は楽しいことだけではない。
しかし、小さな村しか知らなかったフレーナにとって、この日々は刺激的だった。
「フレーナ、まだ外にいたのか。冷えるぞ」
彼女のそばにメアが腰を下ろす。
メアとメロアと旅をして、どこまで遠くに来たのだろう。
「ちょっと眠れなくて。すみません」
「いや、いいさ。旅の疲れは溜まってないか?」
「はい、まだまだ遠くに行きましょう!
……あ、でも靴の底がめくれてきました。そろそろどこかの街でお買い物したいですね」
それなりに旅慣れたフレーナを見てメアは微笑んだ。
神殿を出た当初はどうなることかと思ったが、今は何の心配もない。
メロアも全面的にサポートしてくれる。
そろそろ夜も更けてきた。
辺りには鈴虫の音が響きわたっている。
「メア様……ちょっと行きたい場所があるんですけど」
「こんな夜中にか?」
「はい、すぐ近くなので……」
「いいよ。もちろん俺もついていく」
「ありがとうございます! こちらです」
今日はやけにフレーナが上機嫌だ。
メアは軽い足取りで歩いて行く彼女の後を追った。
森を抜け、たどり着いたのは花畑だった。
人気はない。
こんな場所に花畑があるなど知らなかったメアは少し驚く。
「綺麗だな……」
「そうですよね? この景色をメア様にお見せしたかったのです」
メアの手を引いてフレーナは歩く。
少し開けたところに腰を下ろし、二人で咲き誇る花々を見た。
風に揺れる花弁は色とりどりで鮮やかだ。
甘い香りが風に乗って運ばれてくる。
フレーナは花畑の中に咲いている、赤色の花を指し示す。
「宿の人に聞いたんです。
この花の花言葉は……メア様、知っていますか?」
「もちろん」
「えぇっ!? 知ってたんですか……!」
「俺を誰だと思っている。神だぞ?」
メアにサプライズ的に花を贈ろうと思ったら、とうに知っていたらしい。
フレーナは若干のショックを受けた。
そんな彼女の様子を見て、メアは頭を撫でる。
「だが、フレーナが俺にこの花を贈ろうとしてくれたなら……俺も同じ言葉を返そう。
『あなたを永遠に愛します』──それが花言葉だろう?」
「……はい。なんだか恥ずかしいですね」
本当は花言葉を教えず、ひっそりと想いを伝える予定だった。
だけどメアは花言葉知っていて、フレーナの想いは明らかにされてしまった。
耳の端まで真っ赤になってしまう。
いっそ胸中の想いをすべて打ち明けてしまおうか。
どちらにせよ、フレーナの心情などメアにはお見通しだろうから。
「私……ずっとそばにいてくれる人がほしかったのです。両親も死んでしまって、友達もいなくて。一生孤独のまま死ぬかと思ったら……思いがけずメア様が救ってくれました。そして私の恋心まで受け止めてくださって……今は誰よりも幸せだと思います。
だから私の生涯を、あなたに捧げたい。
永遠に愛したいのです」
フレーナは花畑を見つめながら告白した。
とてもじゃないが恥ずかしてメアの顔は見れない。
そんな彼女の身体がぐらりと揺らぐ。
いつしかメアに抱擁されていた。
視線を上げると、メアの顔が見える。
彼はフレーナにしか見せない笑みを浮かべていた。
「俺も永遠にフレーナを愛するよ。
神と人、種族の違いはあっても……通じ合う愛は同じ。
必ずお前を幸せにする。誓おう」
真正面からメアの想いを受け止めたフレーナ。
月下、彼女は周りの花よりも美しい──花のような笑顔を浮かべた。
「はい、これからも……よろしくお願いします!
大好きです、メア様!」
完結となります。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
今後も番外編や第二部を開始するかもしれません。
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