キラリと運命のヒト
キラリと呼ばれたその水の子は、また天鵞絨色の世界で輝きながら生まれようとしていました。
(また、誰かが呼んでいる…けど、いつもと何か違うような…)
そう思っている間にも、この天鵞絨色の世界からは沢山の水の子が生まれては、次から次へと地球へ向かって光を放って行きました。
キラリも水の子として生まれてから、何度、地球へ降り立ったかわかりません。
地球では、命を得てからわずかな年月しか生きていない子ども達の元へと向かいました。
死をひとりで迎える子ども達の元へ愛を届けるためです。
しかし、今回は何かすごく大切な、魂を引っ張られるような力がキラリを地球へと導いていました。
そして、地球へ向かって水の塊が自ら光を放ったとき、キラリは、今まで見たことないような太い水の糸が地球へと繋がっていくのが見えました。
まるで運命の糸のように。
キラリは、これは何なのか、と疑問を持つと同時に、
もしかして…
キラリは、その力強い水の糸を辿って一直線に地球へ向かいました。
地球に降り立って、強い糸の先に見つけたのは、小さな女の子でした。
その子は、キラリを見ると少し驚いたようにも見えました。
しかし、彼女は家族を失い、感情も無くして、絶望に瀕しているようでした。
悲しみも憎しみも寂しさも
そして、嬉しさや幸せ…何もかもを拒絶していました。
キラリは、女の子の手を取ると、白湯を出してあげました。
その後、彼女が語ってくれる話に、ただずっと、笑顔を手向けました。
キラリは、女の子の味方になりたかったのです。
大丈夫だよ。
一人にはさせない、と伝えたかったのです。
女の子が話をしている間に…いや、彼女に出会ってからずっと、キラリは、自分自身の体も消えそうになっているのを感じていました。
――そして、先に女の子は逝ってしまいました。
キラリは、女の子をとても愛おしく思いました。
こんなに一人のヒトを愛おしく感じたことはありませんでした。
今までも何人の死にも愛を与えたつもりだった…。
しかし、彼女へのこの愛をどう表現できるのだろう。
…ああ、この子と家族になりたいな。
そう思った時、あふれそうな涙の代わりに、キラリは、水分となり、彼女に溶け込もうとしました。
もう、永遠に彼女から離れたくなかったのです。
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