表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/205

1-11:連戦、そして成長


 角から現れたのは、子供みたいな背丈に、緑色の肌。

 左右に飛び出た耳が角みたいで、小悪魔って呼び方がちょうどいい。


『ゴブリンか!』


 ソラーナが金貨の中から言った。

 必ず3匹以上で現れる魔物で、たまにベテランでも足元をすくわれる。


『こやつらも、この時代にまで封印されていたのだなっ』


 相手は、槍が2体と剣が1体。

 先に気づいたのはこっちだった。

 一気に前へと、踏み込む。

 槍が振り下ろされるけど、懐へ入れば怖くない。槍一体を切り倒して、勢いのまま次の槍持ちへ向かう。二撃目をかわして、すれ違いざまに胴をないだ。


 最後に残ったのは、剣のゴブリンだった。

 僕がソロだから、きっと楽勝だと思ったのだろう。想定外の事態に怒ったようで、僕に突っ込んできた。

 心臓はもう慌てない。

 剣筋を見切り、すれ違いざまに首をなでる。

 崩れた相手は振り返るときにはもう灰になっていた。


『……強くなったな、リオン。たった数日だが、見違えるようだ』


 懐に収めた金貨から、ソラーナがそう褒めてくれる。


「加護をもらってから、能力があがってる。それに、レベルもあがっているし。だから、ソラーナのおかげだよ」

『む……こればかりは君の力だ。基礎を学んであるから、加護を使いこなせる』

「そう、かな」

『継続が力になっている。リオン、努力は誇るべきだ』


 スキルには、常に保持者の能力をあげるものがある。というより、大体の戦闘スキルがそう。

 スキル<剣士>のレベル5と、スキル<鑑定士>のレベル5だと、剣士の方が圧倒的に強い。同じレベルでもスキルによる恩恵で戦力に大きな違いが出る。

 ソラーナがくれた<太陽の加護>は、まさにこの戦闘系のスキルだ。

 僕はステータスを確認する。



 ――――


 リオン 14歳 男

 レベル5


 スキル <目覚まし>

 『起床』  ……眠っている人をすっきりと目覚めさせる。

 『封印解除』……いかなる眠りも解除する。


 スキル <太陽の加護>

 『白い炎』 ……回復。太陽の加護は呪いも祓う。

 『黄金の炎』……身体能力の向上。時間限定で、さらなる効果。


 ――――


 レベルは4から、5に上がっている。


 今の目標は、自由。

 標的はギデオンからの借金だ。ダンジョンに潜って稼げるようになれば、貯金のスピードは向上する。

 それに、家族を、妹を守れるような、強い冒険者に早くなりたいんだ。


『リオン、次が来たようだよ』


 見慣れた犬面の悪鬼、コボルト。

 ただし今回は――


「よ、4体っ?」


 ゴブリンよりも強い魔物が、いきなり4体も出てくるなんて。

 頭に叩き込んだ東ダンジョンの情報を思い出す。

 コボルトの集団はもう一つ下の階層からだ。


「東ダンジョン……なんか、難易度が上がってる?」


 先頭の一頭が吠え立てた。


「ガアッ!」


 僕には神様がついている。



 ――――


 <スキル:太陽の加護>を使用します。


 『黄金の炎』……時間限定で身体能力を向上。


 ――――



 体を輝くオーラが包んだ。

 制限時間は、測ったところきっかり3分。起こし屋の時間感覚だから間違いない。使用回数は、1日で4回が限度だろう。

 短剣の鍔でコボルトの攻撃を受ける。


 だけど軽く止めたつもりが、弾くようになった。僕の膂力は2倍、3倍にもなっているかもしれない。

 尻餅をついた相手を踏みつけると、ドン!と胸の辺りがへこむ。ぱらぱらと埃が天井から落ちてきた。

 恐いくらい能力が上がってる。


 これじゃ蹂躙だ。

 せめて一撃で終わらせよう。

 残りの3匹は一斉に襲ってくる。

 でも動きはゆっくりに見えた。恐れず、動じず、ぎりぎりまで引き付けてから、青水晶の短剣を振りぬいた。

 もし遠くから誰かが見ていたら、僕とすれ違ったコボルトが勝手に倒れたように見えただろう。


「……ふぅ」


 コボルト達が灰になっていく。

 卵くらいの魔石が残ったので、腰のポーチに入れて回収した。

 ……この魔石で、起こし屋50件分、薬草半日分くらいで悲しくなります。


『このダンジョンについて少し思い出したよ』


 3分が経過し、身体能力向上が切れた。

 慎重に元の順路へ戻ると、ソラーナが呟く。


『この迷宮は、確かに神々がまだいた頃に作られたものだ』


 ポケットの金貨から小さなソラーナが飛び出してきて、きょろきょろと辺りを見回す。

 あ、戻った。


「……本当に、神話時代の遺物なんだね」

『うん。当時は避難所、シェルターのようなものだった。劣勢の時、地上は魔物が多かったんだ』


 サビ塗れの武器も、当時の貯蔵武具だったのかな。


「じゃ、これも――? 神話時代の、武具……」


 青水晶の短剣が、応じるようにクリスタルをきらりとさせた。


『おそらくね。他の神々が眠っているというなら、こうしたダンジョンの最奥にこそいるかもしれない』


 僕はごくりと喉を鳴らした。


『ふふ。君の家が、神々の家(ヴァルハラ)になる日も近いかもなっ?』

「そ、そんなことになったら母さんがぶっ倒れちゃうよ……」


 それと、とソラーナは金貨の中から付け足した。


『なぁリオン。この闇の気配はなんだ? 初心者向けダンジョンと聞いたが、いつもこんな魔物が出るのか?』


 その時、遠くからうなり声が聞こえた気がした。戦闘が終わって、まだ人も少ない迷宮は静かだ。

 だから耳を澄ませると、ときどき遠くの魔物の声が聞こえる。

 風のように微かで、でも地獄の底から聞こえてくるような、暗くて低い、怨嗟の声。

 寒気が全身をはい回った。

 コボルト、ゴブリン、ワーグ、そのどれとも違う。

 生気をまったく感じない、未知の何かだ。


『……これは、死者。アンデッドの気配だぞ』


 びくりとした。


「へ。ま、まさか! このダンジョンに、そんな強い魔物いないよっ」


 うなり声の先から、女性の悲鳴が聞こえてきた。


『リオン』

「……う、うん!」


 僕はほっぺたを叩いた。


「父さんなら、きっと見捨てないよね……!」


 再度、『黄金の炎』を発動した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました! もふもふ可愛く、時々アツい、王道ファンタジーです!
転生少女は大秘境スローライフを目指す ~スキル『もふもふ召喚』はハズレと追放されました。でも実は神獣が全員もふもふしてた件。せっかくなので、神獣の召喚士として愛犬達と異世界を謳歌します~

【書籍化】 3月15日(水) 小説第2巻・漫画第1巻が発売します!
コミック ノヴァ様でコミカライズ版は連載中です!

4vugbv80ipbmezeva6qpk4rp5y4a_ba7_15w_1pr_on12.jpg

書籍サイトはこちらから!

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ