プロローグ
目の前に映るのは焼き尽くされた街とおびただしい数の死体の山。
咽かえる程の臭気が満ち、正しく地獄絵図という言葉が相応しい。
だがそれももう徐々に感じることができない。腹部が焼けるように熱く視界はボヤけ、周りの音も聞き取りづらい。
倒れている俺を介抱する少女の目から涙が零れ落ち何かを叫んでいるがもう聞こえない。
その後ろでは白銀の巨大な鎧を着た何かと少女が勇者一行と対峙している。
それが俺が最後に見た景色だった。
いつの間にか腹部の激痛が消え視界から光が消えたと同時に意識を失った。
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燃え盛る村に異形の影が一つ。
白い布を頭から被り、手を出して腰の部分を紐で締めただけの簡素な出で立ちで体の凹凸からスタイルのいい女性だと分かるが、顔には山羊の頭蓋骨のような形の仮面を被っており不気味さを醸し出している。
しゃがみこむ彼女の傍らには腹の部分に大きな穴が空いた男性が横たわっている。
「まだ息がある。」
女性は穴の空いた腹部に手を当てると掌が輝きだしみるみるうちに穴が塞がっていが、男性は穴が塞がったとたんに大きく苦しみだす。
「ぐぁっ、あぁぁ!」
女性は立ち上がり男性を見下ろしながら
「生き残れるかどうかはあなた次第、頑張りなさい。」
微睡みの中激痛で一旦意識を取り戻した男性はその言葉だけ聞き、また意識を失った。