9:レベル上げだ!
魔法店は冒険者たちで賑わいを見せており、回復アイテムや毒消しなどが売っていた。値段はロゼッタが予想していた通り、ゲームと同じだ。
「私はポーションと、マナポーションかな」
ほしいアイテムはたくさんあるが、今はお金がないのだ。こればかりは仕方がないので、最初に考えていた通り、ポーションを二個とマナポーションを三個購入する。
これなら、もしダメージを負っても回復できるし、マナが切れても回復してモンスターを倒すことができるだろう。
「うんうん、順調だ――あ」
買い物を終え、魔法店を出ようとしたところで――ふと、黒髪が目に入った。闇属性の人は、例外なく黒髪になるはずだ。
(もしかして、闇属性なのかな)
じっと見つめると、真っ黒ではなく毛先だけ水色だということに気づく。闇属性ではなく、水属性なのかもしれない。
(なんだ、仲間かと思ったのに)
ちょっとだけ残念に思いながら、ロゼッタは魔法店を後にした。
***
「おかえりなさいませ、ロゼッタ様」
「ただいま」
「ルイスリーズ殿下からプレゼントが届いていますよ」
屋敷へ戻ると、メイドのナタリーが婚約者からのプレゼントを差し出してきた。ピンクのリボンでラッピングされていて、いかにもな贈り物だ。
「……お礼の手紙を出しておいてくれる?」
「かしこまりました」
別に、相手だって従者にプレゼントを選ばせているのだろうから、こっちだって使用人に任せても問題はない。
プレゼントを開けると、綺麗な月と星モチーフのネックレスが入っていた。
(最近はこういうのが流行ってるのかな?)
どうせなら、マナの量が増えるネックレスだったらよかったのに――なんて。ロゼッタがそんなことを考えていたら、すぐ横から「うわあぁぁっ」と嬉しそうな声が。
見ると、ナタリーが瞳をキラキラ輝かせていた。どうやら、ネックレスに釘付けになっているようだ。
「すごいです、これ! 『アトリエ雫』のネックレスですよ! しかもこれ、発売が数日後だったはずなのに……!」
「ナタリー、詳しいのね」
装備のことならわかるけれど、アクセサリーのことはよくわからない。
どうやら、自分に会いにこなくなった婚約者様は、特別なものを贈っておけばなんとかなると思っているようだ。
ロゼッタはネックレスを手に取り、胸元へあててみる。
まあ、確かにキラキラ輝いていて美しい。それに、ロゼッタは闇属性とはいえ容姿はとてもいいのだ。
鏡を覗くと、ネックレスを付けた可愛い女の子が立っている。
「お似合いです、ロゼッタ様」
「……ありがとう。しまっておいて」
「はい」
ネックレスをナタリーに渡し、ロゼッタは魔法に関することをまとめてから今日は休んだ。
――そして、翌日。
ロゼッタは今日も冒険者ギルドへ行き、依頼を受けた。昨日に引き続き、スライム討伐。それから、フラワーラビット討伐だ。
今のロザリーであれば、どちらも問題なく倒すことができるだろう。
さくっと【ダークアロー】でスライムを一〇匹討伐したロゼッタは、草原を歩き小高い丘の花畑までやってきた。
ここにターゲットのフラワーラビットがいる。
フラワーラビットは尻尾が花の可愛らしいうさぎで、とても弱い。スライムで少しレベルが上がったら、フラワーラビットを倒して15くらいまでレベルを上げると楽だ。
「おー、いっぱいいる」
『ピッ!? ピー!』
ロゼッタが声をあげると、フラワーラビットが気づき突進してきた。
スライムと違い、こちらが攻撃しなくても襲ってくるのだ。しかも群れる習性があるので、数匹が一緒になってやってくる。
「でも、私には中級魔法があるもんね! 闇の妖精よ、黒き疾風を――【ダークストーム】!」
ロゼッタが詠唱し右手を払うと、風の刃が発生しフラワーラビットへ切りつけた。あっという間に、襲い掛かってきた三匹のフラワーラビットが倒れ、ドロップアイテムとしてウサギの毛皮が二つ残った。
そして魔法を使った張本人のロゼッタといえば、自分のすごさに震えていた。
「私……というか、闇魔法強すぎでは?」
ヒロインでゲームをプレイしていたよりも、ずっと魔法が強い。
「闇魔法だから、ほかの属性より攻撃力が高いのかもしれない。そうだとしたら、悪役令嬢に転生した可哀想な私への特典、的な?」
ポジティブに考えながら、【ダークストーム】を使ってフラワーラビットを倒していく。この魔法のいいところは、範囲攻撃ということだ。
範囲攻撃が嫌いな人なんて、きっといない。
(ちまちま倒さなくていいから、楽ちん)
依頼の討伐数は一〇匹だけれど、ひとまずレベル15になるまでフラワーラビット狩りを続けた。
夕方になり、ロゼッタが冒険者ギルドへ戻ると受付でリリが迎えてくれた。
「おかえりなさい、ロゼリーさん。どうでしたか?」
「どっちも無事に達成しましたよ! これで依頼三個達成なので、ランクアップまであと二つですね」
「順調ですね」
ロゼッタはギルドカードと、買い取ってもらうドロップアイテムをリリに渡す。今日はレベル上げのためにフラワーラビットをたくさん倒して毛皮がたくさんあるから、収入も期待できるだろう。
リリの処理が終わるのを鼻歌まじりで待っていると、「え……」という驚いた声が耳に届いた。見ると、リリが目を見開いて驚いている。
「リリさん?」
「嘘でしょう……? でも、ギルドカードの情報操作はできないし……」
ロゼッタのギルドカードを見ながら、何かをぶつぶつ呟いている。
(魔法は非表示にしてるから、問題ないはずなんだけど……)
何かしてしまっただろうかと、ハラハラする。
「ロゼリーさん、あなた……今日だけで四三匹もフラワーラビットを倒したんですか!? 信じられません!!」





