7:魔法習得!
悪役令嬢として生まれ、辛い日々を過ごしてきた。しかしそれも、今日で終わりだ。――なぜかって?
「初級と中級の闇魔法をゲットしたから!」
正確には、その呪文だけれど。
ロゼッタは冒険者ギルドを後にして、街の外にある草原へとやってきた。ここなら、魔法の試し打ちをするのにもちょうどいいし、討伐依頼を受けたスライムもいるはずだ。
魔法の練習をしつつ、モンスターも倒してしまうという、一石二鳥の作戦だ。
「っと、そうだ、ギルドカードの確認もしておこう」
冒険者ギルドで登録をするともらえる、ギルドカード。
これは冒険者であると身分を証明してくれるもので、様々なシーンで使うことが可能だ。たとえば、街への出入りや他国の移動、大きな買い物などをする際の身分証明など。
さらに、カードの色でランクが分かるようになっている。ロゼッタはFランクなので、灰色のカードだ。
裏面を見ると、ランク、レベル、冒険者名が書かれている。
その下には、現在ギルドから受けている依頼の情報と進捗が書かれていて、とてもわかりやすい。リアルタイムで情報が更新されるのは、ゲーム世界だということを実感させられる。
「あ、ここでレベルの確認ができるんだ」
Fランク・レベル1・ロゼリー
依頼:スライムの討伐(0/10)
まあ、予想していた通りレベルは1だ。
モンスターと戦ったりしない一般人は、通常レベル1で生活などに支障はない。レベルとは、モンスターを倒して得る経験値で上がっていくものだからだ。
なので、筋トレをしたり喧嘩が強くてもレベルが高いというわけではない。
「んでは、魔法を試してみようかな。とりあえず、スライムを一〇匹倒さなきゃ」
もらった魔法の用紙には、しっかりと闇魔法の呪文も記載されている。
それを見ると、ロゼッタがにやにやが止まらない。早く魔法を使いたくて仕方がないのだ。
「初級の闇魔法の呪文は……あ、あそこにスライムがいる!」
呪文の確認をしていると、ちょうど大きな岩影にスライムがいることに気付く。試しに、あのスライムに向けて魔法を撃ってみるのがいいだろう。
「闇の妖精よ、影から闇を作り出せ【ダーク・アロー】!」
ロゼッタが呪文を唱えると、自身の影から闇の矢が作られて、それがスライム目掛けて飛んでいく。
闇の矢はいとも簡単にスライムを倒してしまった。
「わあぁっ!」
すごいすごいと、ロゼッタは飛び上がる。
スライムがいた場所を見ると、ドロップアイテムが落ちている。
ドロップアイテムはモンスターごとに落とす種類が決まっていて、ゴミからレアな装備まで様々だ。
スライムは雑魚モンスターなので、ドロップアイテムはしょぼい。
「スライムボールが一つか」
ドロップしたアイテムは、スライムボール。ぷよぷよした感触のボールで、触り心地がいい。
これは売ると一〇〇ゴールドになる。
ゲームではそのお金でアイテムを買ったり装備を整えていき、最終的に魔王を倒す。
(討伐の報告をするときに、ギルドで買い取ってもらおう)
「そういえば、スライムを一匹倒したからレベルが上がったかな?」
低レベルのときは、比較的早くレベルアップする。ロゼッタはギルドカードの裏面を見て――目を見開いた。
「レベルアップしてるけど、スキル情報まで載ってる!!」
Fランク・レベル2・ロゼリー
スキル:初級闇魔法【ダークアロー】・固有魔法【夜の化身】
依頼:スライムの討伐(1/10)
しかも見ると、魔法を初めて使った反動だろうか。固有魔法まで記載されている。
「って、ギルドカードに闇魔法が使えるなんて書かれてたら困るんだけど! スキル一覧だけ消えて〜! お願い!!」
どうか乙女ゲーの神様この通りですと、ロゼッタは思わずギルドカードに頭を下げる。
すると、ギルドカードからスキルの欄だけがすっと消えた。
「消えた! よかった、よかった〜!!」
これで自分が闇属性だと気付かれることはないだろう。
「ほっとしたら、モンスターを倒したくなっちゃった!」
とりあえずあと九匹倒して、固有魔法の確認をしよう。
なので、草原でスライム探索の開始だ。
ゲームの時はエンカウント制だったけれど、現実世界だとそうはいかない。歩いているモンスターを探して倒さなければいけない。
(地味に大変かもしれない)
――なんてことを、思っていました。
「おぉ、スライム結構いる! 【ダークアロー】!」
草陰、岩陰、そういったところにちょいちょい隠れている。さらに弱いということもあって、スライムから襲ってくるということがない。
なので、油断していて後ろからやられてしまうという心配がないのだ。
「今日冒険者デビューの私には、ちょうどいいかも。……っと、【ダークアロー】!」
スライムを見つけ、すぐに魔法で倒す。
「もういっちょ、【ダークアロー】!!」
スライムボールをドロップして、スライムが消える。
それを鞄にしまい、ロゼッタは楽しさに震える。
「魔法を使うのって、めちゃくちゃ楽しい!」
これはもう、最強の魔法使いを目指すのもありでは? なんてことも考えてしまう。自分に敵うものがいなくなるのだから、無敵――そう思いかけて、ハッとする。
「駄目駄目、物理も強くならなきゃ!」
寝てるときや馬車の移動中の事故など、あらゆる状況下で死にづらいようになりたいのだ。
しばらくは魔法でレベルを上げていくが、タイミングを見て剣を購入して戦えるようにしよう。死なないためには、オールマイティーでいなくては。
それからしばし狩りをして、スライム一〇匹を倒すことができた。
「よしよし、順調ね。依頼分の討伐は終わったから、固有魔法も試してみようかな?」
ロゼッタはギルドカードを取り出し、裏面を確認する。念じると魔法の詳細と呪文が出てくるので、固有魔法の詠唱をする。
「闇の妖精よ、私と一緒に踊りましょう。【夜の化身】」
すると、ポンと音を立てて――ロゼッタの目の前にもう一人のロゼッタが現れた。





