35:サバイバル演習終了
水光の花を無事に採取し、野宿しつつ打ち上げを楽しんだロゼッタたちは無事に森の入り口まで戻ってきた。
とても長く、けれど充実した三日間だったなと思う。
(実はレベルも上がったしね)
これでもっと死ににくくなったと、ロゼッタはにんまりする。
「それにしても、ほかの生徒たちは……みんなボロボロだね」
サバイバル演習は、ほとんどの生徒が初めての野宿だ。
全員クタクタになっているし、そもそも光の妖精がロゼッタを殺そうと森全体の魔物を強くしたから……きっとスライムやフラワーラビットにも大苦戦しただろう。
申し訳ないと思いつつ、絶好のレベル上げの機会だったんだよ! と、ロゼッタがいい笑顔を見せることしかできない。
「私たちが特殊すぎるんですよ……いくら学園に入学したとはいえ、貴族の令息と令嬢が野宿なんてしませんから」
「それもそうですね」
カインの疑問にはラインハルトが答え、それに納得したように頷いた。
「私たちの班は、すっごく快適でしたね! 私も野宿は初めてだったんですが、カイン様の作るご飯はとても美味しかったですし……」
プリムが野宿のことを思い出したようで、とてもにこにこしている。彼女にとって、楽しいもので終わったのならよかったとロゼッタは思う。
「あ、それと!」
「ん?」
思い出したと言わんばかりに目を見開くプリムに、ロゼッタは首を傾げる。
「次に野宿するときは、絶対にハンモックを買おうと思いました!」
「わかるぅ~」
いつぞやの自分とルイスリーズと同じことを言うプリムに、ロゼッタは声をあげて笑った。
生徒全員が森の入り口まで戻ってきたところで、ロージー先生がパンと手を叩いた。
「まずは、サバイバル演習お疲れさまでした。皆さんが無事に戻ってこられたことを、大変うれしく思います」
ロージー先生は安堵の表情で、生徒たちを見回す。
約一〇〇人の生徒は、怪我をしている者もいたけれど、全員が治癒魔法で完治している。致命傷は負わなかったようだ。
「とはいえ、今回は不測の事態が多々あったと報告を受けています。それについては、学園側から国へ報告しますので、安心してください」
そう言ったロージー先生は、レオに目を向けた。今回、勇者として異変を調査していたとして、学園側といろいろ話をしてくれている。
レオは軽く会釈をし、生徒たちを見る。
「俺は勇者レオ。偶然ここに居合わせただけだが、ここにいるルイスリーズ殿下の班と異変については解決した」
レオが経緯を説明すると、生徒たちから「おおぉっ」と歓声があがった。みんな、強いスライムに苦戦し、どうにかウルフを倒す……というところまで行ったくらいだろうか。
自分たちが苦戦した原因である異変を解決したヒーローとして、キラキラした瞳で見ているのがわかる。
その視線は、すぐにロゼッタやルイスリーズにも向けられた。
(えっ、私も!?)
自分も班員ではあるが、さほど注目されることはないだろうと思っていたロゼッタは、視線を向けられてドキドキしてしまう。
悪役令嬢が、こんな人気者のような扱いをされていいのだろうか。
昔は――闇属性なので、忌避めいた視線を向けられることはよくあった。しかし今のように、尊敬のような対象にされたのは初めてなわけで。
(うわあぁぁ、落ち着かない!!)
めちゃくちゃそわそわして、体が揺れてしまう。
すると、ルイスリーズが「なんだ腹痛か?」とデリカシーのないことを聞いてきた。
「違うよ! そうだとしても、言い方!!」
「場所が場所なんだから仕方ないだろ。んで、どうしたんだ? レオが気になるのか?」
若干不機嫌そうに言うルイスリーズに、ロゼッタは首を振る。
「なんていうか、こんな注目されたのは初めてだなあと思って」
「そんなことか……でも、慣れないとな」
「ん?」
「だって、ロゼッタは将来王妃になるんだぞ? 今の何倍も、憧れの視線を向けられる」
「――!」
ルイスリーズの言葉に、ロゼッタは口を噤む。
まあ確かに、その可能性は否定できない。
(だけど私は、悪役令嬢なんだよなぁ)
ヒロインのプリムは、いったい誰を選ぶのだろうと……今は恋のこの字もなさそうなプリムを見て、はてさてどうなるやらとロゼッタは苦笑した。





