33:一件落着
「――ふう」
これにて一件落着だ。
ロゼッタがみんなの様子を見ようとすると、背中にドン! という衝撃と、温かいぬくもり。振り向いたら、プリムが抱きついてきていた。
「プリム?」
「ロゼッタ様……私、操られてたなんて……ごめんなさいっ!! 不謹慎かもしれないですけど、仲間だって言ってもらえて、すっごく嬉しかったです……っ!!」
見ると、プリムの顔は涙でぐしゃぐしゃになっている。
不甲斐ない自分に腹が立っているのだろう。自分がもっと強ければ操られなかったのに、と。
ロゼッタはハンカチを取り出して、プリムの顔を拭いてあげる。これでは、可愛い顔が台無しではないか。
「そんなことないよ。私こそ、もっと早く助けてあげられなくてごめんね。仲間……なのに」
「ロゼッタ様は、私たちのことをちゃんと助けてくれました! ありがとうございます」
「――うん!」
プリムのお礼の言葉に、ロゼッタは笑顔で応えた。
――さて。
光の妖精を無事に倒したと思ったのだけれど、気づいたら消えていた。ノワール曰く、力の大半を失って回復のために隠れたのだろうということだった。ちなみに、この回復には数百年単位の時間がかかるそうだ。
それならまあいいかと、ロゼッタは苦笑した。
(願わくば、反省もしてくれますように……)
望みは薄そうだと思いつつも、そう思わずにはいられない。
(そうだ、結構魔法を使ったしマナポーション飲まないと)
ロゼッタが鞄からマナポーションを取り出そうとしたら、足がふらついて倒れそうになる。
(あれれ?)
――倒れる。
そう思ったロゼッタはぎゅっと目をつぶったのだが――いつまで経っても衝撃はこなかった。
なぜだ? と恐る恐る目を開くと、ルイスリーズが支えてくれていた。
「お前なぁ。体調悪いだろ? ここは安全そうだから、無理しないで少し休め」
「え?」
ルイスリーズの言葉に、ロゼッタはぽかんとする。
別に体調なんて悪くないし、サバイバル演習中だって元気いっぱいだった。念のため自分のおでこに手を当ててみたが、熱もない。
「あはは、何言ってるのルイ」
「それはこっちの台詞だ。いつもよりマナポーションを飲む回数が多い……ってか、早かったから気になってたんだよ」
「――!」
言われてみれば、確かにいつもよりマナポーションを飲む回数が多かったとロゼッタも思ってはいたが……あまり気にはしていなかった。
(私、体調悪かったのか……)
ルイスリーズに言われると、そうだったかも……と、段々実感してしまった。みんなに睨まれたとき逃げだしてしまったのも、もしかしたら体調が悪くて少し弱っていたのかもしれないとロゼッタは思う。
すると、ノワールがロゼッタの頭にぴょんと乗ってきた。
『ロゼッタの調子が悪かったのは、光がここにいたからだろう。でも、今はその影響力も薄れていってるから、少し休めばよくなる』
「そうだったんだ……」
直接だけではなく、じわりじわりともダメージを負わせられていたらしい。ロゼッタはやれやれと肩の力を抜いてルイスリーズに寄りかかる。
「ありがとうね、ルイ」
「――! 別に、これくらい。仲間なんだし、何かあれば頼ればいいさ」
「うん」
ルイスリーズの言葉に、ロゼッタは満面の笑みで返事をした。
そんな二人を、カインたちは少し離れたところから見ていた。
最初に言葉を発したのは、すぐさま察知しロゼッタの下を離れたプリムだ。
「なんだかいい感じですね、お二人ともっ!」
「本当にねぇ」
しかしその相槌をレオが打ったため、一気に視線の矛先はレオに変わった。
「「「誰?」」」
「え? そういえば、ちゃんと自己紹介してなかったな。俺は勇者のレオ、よろしく!」
レオは自己紹介をして、ロゼッタと森の中であったいきさつなどをカインたちに話した。気になっていた異変も、光の妖精がいなくなったことによりなくなったので一安心だと言うことも付け加えて。
話を聞いたカインは、頭が痛くなった。
「なんというか……はぁ。今回は授業の一環だったっていうのに、大変だったね」
もうこりごりだと言うカインに、リュートが「ちょっと待った」と声をあげた。
「しかしよく考えてみてくれ、私たちは妖精に出会ったんだ。魔法の原理を司る妖精、私は、私は……っ!」
「落ち着け、リュート! お前が魔法大好きなのは知っているが、今は喜んでいい場合じゃない!」
光の妖精に操られ、あまつさえ殺されそうになったところなのを忘れたのか!? と、ラインハルトが慌てながらリュートに説いている。
「もちろんっ! それはわかっているんだが……世界の真理に触れてしまったかのような、そんな高揚感もある。私は今までよりもずっと、魔法の可能性を感じることができたんだ。光の妖精はもういないけれど、ロゼッタ嬢と一緒にいるのは闇の妖精だろう? これは是が非でも語りあい……いや、話を聞かなくては!!」
「落ち着け!!」
ラインハルトの二回目の落ち着けと同時に、リュートは肩を掴まれてハッとする。
「あー、すまない。魔法関係は、どうしても白熱してしまいがちだ」
「まあ……お前の気持ちもわからなくもないがな。ただ、妖精は理想とかけ離れていた……ということはわかった」
今後妖精関係で何かあれば、慎重に動いた方がいいということで全員の意見は一致した。
***
しばらく休んだロゼッタたちは、光の妖精の空間から出て『泉の森』へ戻ってきた。
すると、泉の周りに今まで咲いていなかった水色と白の花が咲いていた。小さな花が複数集まり咲くその姿は、とても可愛らしい。
「そういえば私たち、学園の課題でここにきてたんだった」
妖精たちの出現ですっかり忘れていたと、ロゼッタは苦笑する。
それはルイスリーズたちも同じだったようで、全員で顔を見合わせて笑った。
ロゼッタは水光の花の前にしゃがみ込んで、シャベルで周りからゆっくりと根を傷つけないように水光の花を採取した。
これで大変だった遠征課題も、終了だ。





