31:戦い
「ロゼッタ、俺が前に出るから援護してくれ」
「――! わかった、お願い!」
レオが剣を構えて一歩前に出ると、「待て」とルイスリーズの声が耳に届いた。見ると、頭を押さえながらも……しっかり自分の足で立ち、いつものように凛とした瞳のルイスリーズがそこにいた。
「ルイ! もう大丈夫なの……?」
「まだ若干……頭にもやがかかってるような気はするけど、弱音なんてはいてる暇はないからな」
ルイスリーズは、光竜に目をやる。
「それで、あいつはなんだ……? 今日起きてからのことを、全く覚えてない……俺はどうしてた?」
「あいつは――光の妖精だよ。闇属性が大嫌いで、私を殺したいみたい」
「……なるほど」
ロゼッタの説明を聞いて、ルイスリーズは「まいったな」と苦笑する。
「妖精の力を借りて魔法を使ってるんだから、存在しているのだろうとは思ってはいたが……まさかこんなに身勝手だとは思わなかった」
さらに敵対することになるなんて、考えたこともない。
どこかで、妖精は自分たちの味方だと思っていたからだ。それは魔法を使うすべての人が感じていたことだろう。
(とりあえず、中級魔法を使って様子を見よう)
「闇の妖精よ、黒き疾風を【ダークストーム】!」
ロゼッタが【ダークストーム】を使うと、光竜は翼を広げ風を起こしてそれを防いだ。どうやら、直撃は避けたいらしい。
つまり、中級以上の魔法であれば効くということだ。
しかし致命打になるかどうかは――わからない。
ロゼッタはマナポーションを飲んで、息をはく。前衛のルイスリーズとレオとの連携を取って魔法を使っていかなければいけないので、集中力が必要だ。
(でも、きっとあの二人なら大丈夫)
――そう、思っていた。
剣を振り上げ特攻したレオが、光竜の尻尾に吹っ飛ばされた。
ルイスリーズはどうにか剣で防いだけれど、押されているのは一目瞭然で。光竜は、想像以上に強い。
「様子見なんてしてる場合じゃなかった……! 【ダークネスレイン】!」
ロゼッタが上級の闇魔法を使い、攻撃を試みるが――光竜の頭上にバリアが現れて、それを防いだ。
「「「――っ!」」」
さすがにこれは、驚きを隠せない。
『ギャオォォ!』
光竜の頭に生えた角から一本の閃光が、ロゼッタに向けて発射された。
やばい――と、その三文字がロゼッタの脳裏に浮かぶ。なのに世界はスローモーションのように見えて、これが死の間際かもしれないとロゼッタはぼんやり考えてしまう。
逃げなきゃいけないのに、体が動かない。
そのとき、ルイスリーズの声が空気を揺らす。
「ロゼリー!!」
「――あっ、!」
(あきらめちゃ駄目だ!)
ロゼッタは寸でのところで横に飛び、直撃を免れた。
「……っ!」
やられたのは、右腕だ。
じんじん熱を持つ痛みで、一瞬意識が飛びそうになる。もしかしたら、一瞬は三途の川の手前くらいに行っていたかもしれない。
ぽたぽた垂れる血に、どうすればいいかわからなくなる。
「もしや私、ここで死ぬ……?」
「馬鹿! 俺が死なせたりしないから、そんな弱音をはくな!! 【ヒール】!!」
ぽつりと呟いたロゼッタの言葉に、すぐさまルイスリーズが魔法を使った。しかし一度では治りきらなくて、何度も。
自分だって、光竜にやられて辛いはずなのに。
「ルイ! 私はもう大丈夫だから、まずは自分の怪我を――」
「【ヒール】……。お前の怪我は俺が治すって、前に約束しただろ」
「――ルイ」
ルイは自分の怪我も酷いのに、ロゼッタを優先して回復してくれた。
「ありがとう。あとはポーション飲むから、もう大丈夫」
ロゼッタはポーションを飲んで怪我を完治させ、杖を構えたところで――『みっ』という鳴き声が聞こえてきた。





