30:真の姿
「はぁ、は――、やった……かな?」
ロゼッタが大きく息をつくと、ふっと自分の上にのしかかっていたプリムたちが軽くなった。
見ると、寝ぼけたような状態になっているようだが……もう操られているような様子はないし、目つきもいつも通りに戻っている。
「よ、よかったぁ~~!」
ほっと安堵し、ロゼッタは自分の鞄に手をかける。
「うぅ、マナが……マナポーション、マナポーション……」
最大限の集中力に、大量の【ダークアロー】をお見舞いした結果、どうやらいつも以上にマナを消費してしまったようだ。
一気飲みして、「ふはーっ」と酔っ払いの親父みたいな息をはく。
「とりあえずここは大丈夫として、レオとルイは――っ!?」
ロゼッタが周囲の確認をしようとしたら、『グルオォォ』という雄たけびが響いた。地面が揺れ、木々が震えている。
なにかよくないことが起きたのだということは、一瞬でわかった。
見ると、倒したとばかり思いこんでいたが……光の妖精がいた場所が強い光を発している。
(しまった! 反撃が来るのかもしれない)
どうにかして【ダークアロー】で攻撃を相殺――とロゼッタが考えたところで、その光の中から光竜が飛び出してきた。
金色に輝く鱗に、頭の頭上には大きな花が咲いている。
「って、花!? もしかして、光の妖精が竜になった……ってこと!?」
これはやばい、どうしよう。
ロゼッタは冷や汗が止まらなくなる。
きっと先ほどまでの可愛い姿は仮の姿で、光竜こそが光の妖精の真の姿なのだろう。マジか勘弁してくれ……と、ロゼッタは視線が泳ぐ。
「これ、結構やばくないか?」
「やっぱりいぃ!?」
やってきたレオも目が泳いでいて、「俺たちここで死ぬのかな」と言っている。けれど、ロゼッタはその答えを知っている。
「いや、死なない!」
「ロゼッタ……」
「なぜなら死ぬとしたら私だけだから!」
「なんで!!」
「なんでって言われても……なんでもなんだよ」
ここが乙女ゲームであるならば、プリムを始め、攻略対象キャラクターのレオが死ぬことはないだろう。
カインも魔王として後々登場しているので、ここで死ぬとは考えにくい。
つまり死んでもいいキャラクターは、悪役令嬢ロゼッタだけだ。
(こんなところまで死亡フラグを立ててくるとは……ぐぬぅ……)
ロゼッタが光竜を睨みつけていると、レオに肩を掴まれた。
「馬鹿! そんなあきらめるようなことは絶対口にするな! ロゼッタのことは、必ず俺が守ってみせるから!」
「レオ……」
その言葉に、少しだけ心臓が早くなるのを感じる。
(悪役令嬢なのに、攻略キャラクターから守るとか、言われちゃった……)
「ふふっ、ありがとうレオ! なんだか頑張れる気がしてきた!! よーし、気を取り直していきますか!」
マナポーションはまだたくさんあるから、上級魔法の連発だってできるはずだ。けれどまずは、光の妖精――もとい光竜が、どれくらい強いのか確認する。
「闇の妖精よ、影から闇を作り出せ! 【ダークアロー】」
ロゼッタの闇の矢が、光竜に直撃する――が、金色の鱗に弾かれてしまって傷一つついていない。
「……まじか」
これはかなーり、やばい状況かもしれない。





