29:怒りのロゼッタ
「――ロゼッタ!」
「ルイ!?」
光の妖精に【ダークアロー】をお見舞いしてやろうとしていたら、ルイがロゼッタに切りかかってきた。
咄嗟に杖で身を庇おうとすると、それより先にレオがロゼッタの前に立ちルイの剣を受ける。ガキンと鈍い音がして、重い攻撃だということがわかる。
「おいお前! ロゼッタは仲間だろう!? 操られたくらいで、攻撃なんてするんじゃない!!」
「――っ!」
レオの喝で、ルイスリーズが一瞬だけゆらぐ。
どうやら、完全に意識を支配されているわけではなさそうだ。これなら、ロゼッタたちでもルイスリーズたちを元に戻せるかもしれない。
「ルイっ!!」
ロゼッタもルイスリーズに呼びかけ、同時に光の妖精へ向けて【ダークアロー】を――というところで、今度はカインがロゼッタの前に立った。
しかもその横には、森の入り口で留守番をしていたはずのネロもいる。
「カイン!!」
「ロゼリー、俺たちみたいな闇属性は存在していたらいけないんだ。この力で……多くの人を傷つけてしまう」
「――!?」
カインの言葉に、ロゼッタは目を見開く。
今まで、カインが自分のことを闇属性だと言ったことは一度もない。ロゼッタはゲーム知識があるので、カインが闇属性で魔王だということは知っているけれど……。
(カインが言いたくないと思っていたことを言わせるなんて、最低だ)
光の妖精への怒りが、ふつふつと湧き上がる。
もう容赦なんてしてやらない。今決めた。
「攻撃魔法が届かないなら、届くまで撃てばいいのよ」
ロゼッタは杖を力強く握りしめて、ぶつぶつと呪文を詠唱する。一回だけではなく、何度も何度も。
(みんなには当たらないように、【ダークアロー】の出現位置を調整する……)
できるだろかと不安になるが、やるしかない。
ロゼッタは今まで、自分の近くに【ダークアロー】を出現させていた。しかしそれは意識していなかったからで、もしかしたらほかの場所に出現させることもできるのでは? と、考えたのだ。
精神を統一させて、いつもと違う場所に。
(かなり集中力がいる……っぽいけど、できる!)
ロゼッタの額に汗が浮かび、その大変さを物語っている。
「そんなこと、させない! お前たち、ロゼリーを取り押さえろ!!」
これはやばいと慌てたカインが、プリムたちにも声をかけた。すると、ロゼッタを押さえ込もうとして一斉に覆いかぶさってきた。
カインが言った通り、のしかかって押さえ込むつもりのようだ。
プリムたちにのしかかられて、ドンと地面に倒れこむ。
「――っぐ!」
「これでもう魔法を使うのは無理でしょ? 観念して、さっさと殺されちゃいなよ」
「嫌でーす! もう魔法は完成したから、大丈夫。すぐに助けてあげるから!」
ロゼッタは押さえ込まれたまま、大きく息を吸う。
「私を怒らせたこと、後悔してもらうから――【ダークアロー】【ダークアロー】【ダークアロー】【ダークアロー】【ダークアロー】」
『な――っ!』
奥にいた光の妖精が声をあげた。
彼女を取り囲むように、闇の矢が現れたからだ。今からではルイスリーズやカインに助けを求めても間に合わないだろう。
――完全勝利!
「いけ!」
ロゼッタが悪い笑みを浮かべて【ダークアロー】を放った。それが全て光の妖精に命中すると、『ギャアアアァァァッ』という断末魔のような声。
――しかし次の瞬間、大きな光に包まれた。





