25:滝の木
森を探索していると、神秘的な場所に出た。
「うわ、すごい……滝? で、いいのかな?」
ロゼッタとレオが見つけたのは、大きな一本の木だ。
上の方から水が流れて、まるで滝のようになっているのだ。その幅は、五メートルほどあるだろうか。
「この木から強い魔力を感じるから、それが水になって零れ落ちてるんだろう」
「へええぇ……!」
仕組みを教えてもらい、ロゼッタは感心する。
この森は泉がたくさんあるし、もしかしたら元々魔力が豊富な場所なのかもしれない。
ロゼッタはそっと滝に手を入れて、その冷たい心地よさに体の力を抜く。ここに来るまで三時間ほど、ずっと歩きっぱなしだったので疲労困憊だった。
「ふぅ~~」
「ここで休憩にするか」
「うん」
滝として流れた水は、大きな泉を作っていた。
少し行儀が悪いかもしれないけれど、ロゼッタが靴を脱いで泉に足を浸ける。今は可能な限り早く体力を回復したいのだ。
「は~~気持ちいい~~」
歩き疲れた足が癒されていくとは、まさにこのことだろう。
ロゼッタがダラダラし始めたのを見て、レオも同じように靴を脱いで泉に足をつけた。同じように気持ちよさに目を細め、そのまま寝転んだ。
「気持ちいいなぁ」
「でしょう~? 冒険中の一休みだから、なおさら贅沢を感じちゃう」
と言って堪能しているロゼッタだが、頭の中はルイスリーズたちのことばかりだ。いったいどこにいるのか、見当もつかない。
しばらくして休憩を終えたロゼッタは、ふとした違和感に気づく。
「ん……?」
なんだか、滝の後ろ側――木の幹なのだが、そこの部分の色が明るい気がしたのだ。
ロゼッタは両手を滝に入れて、落ちてくる水を割った。すると、幹の部分には人ひとりがどうにか通れるほどの穴が開いていた。
「これは驚いた……どこかに続いてるみたいだな」
「木の向こうに通り抜けるだけ……っていうわけじゃなさそうですね」
念のため木の反対側も見てみたけれど、穴は開いていなかった。
「魔力が溢れているのも、この穴が関係してるのかもしれないな。……いったいどこに繋がっているのか」
もしこの森の主のような存在がこの先にいるのなら、異変について何かしっているかもしれない。
そうなら、行ってみる価値は十分あるだろう。
ロゼッタとレオが顔を見合わせて頷き、穴へ入ろうとすると――『ワオオオォン』という鳴き声とともに、ウルフが襲いかかってきた。
「なっ、このタイミングで!?」
レオが慌てて剣を抜こうとしたが、それよりロゼッタの方が早かった。
「任せて! ――【ダークアロー】!」
ロゼッタの凛とした声により現れた一本の黒い矢は、いとも簡単にウルフを貫いてみせた。
それを見て、レオは目を丸くして驚く。
「ロゼッタ、そんなに強かったのか……」
「一応Aランク冒険者です」
「めっちゃ強! 道中俺ばっかり戦わなくてもよかったのか~~!」
レオが「教えてくれよも~!」と頬を膨らませる。
「いや、レオのレベリングにもいいかなぁと思って」
「そういうこと~!?」
勇者レオの初期レベルは三〇なので、ここでレベル上げをしつつ進んだらいいかなと思った次第だ。
とはいえ、進みが遅かったということはない。レオはさくさく魔物を倒したので、ロゼッタも安心して任せることができたのだ。
『ワウゥゥ!』
『ウギャギャッ』
二人で笑っていたら、新たにウルフとゴブリンがこちらに向かっているところだった。しかもウルフは一〇匹、ゴブリンは三だ。
「まじか!」
レオが急いで剣を構えるけれど、その顔には焦りの色が浮かんでいる。
ここまで魔物の数が多い場合、よほど手練れでない限りは……パーティーでなければ対処するのは不可能だろう。
だからこそ、レオは一人でさばき切るのは無理だと判断し、ロゼッタがいればいけるかも? と、脳内で戦闘のシミュレートをしただろう。
しかし、ロゼッタはけろりとしている。
「ここにきて魔物がこんなに出てくるなんて、ここに何かありますよ……って、言ってるようなものじゃないですかね」
「いやいやいや、なんでそんな冷静に分析してられるのっ! まずはこの状況をどうにかしないといけないのに」
レオの焦りに、ロゼッタは「大丈夫ですよ」と冷静に返事をする。
「――闇の妖精よ、嘆きの雨を降らせたまえ! 【ダークネスレイン】」
ロゼッタが力強い声で魔法を発動すると、頭上から黒い閃光が降り注ぎ――ウルフとゴブリンを跡形もなく殲滅した。





