20:女子テント
「「「ハンモック!?」」」
見事に、プリム、ラインハルト、リュートの声が重なった。
三人が見たのは、ロゼッタたちが用意していたハンモックだ。
テントがあるとはいえ、地面に直接寝袋を置いて寝るようなものなので、体が痛くなってしまうのだ。けれどハンモックがあれば、そういった不快ともおさらばできる。
「ふっふー、これぞ野宿の鉄則!」
「「「おおおぉ~!!」」」
ロゼッタはドヤ顔で三人に野宿のことを教えているけれど、元々ハンモックを愛用していたのはカインで、それを真似しただけだ。
偉そうにふんぞり返るロゼッタを見て、ルイスリーズとカインは生暖かく見守るように半笑いだった。
***
「ロゼッタ様、お背中をお拭きします」
「わ、ありがと~!」
ロゼッタとプリムの女子テントの中で、二人は体を拭いていた。さすがに泉で水浴びをするのは難しいので、濡らしたタオルを使っている。
森の中は陽ざしが遮られているとはいえ、ずっと動いているのでかなりの汗をかくし、泥などの汚れも気になるところだ。
「気持ちい~~」
「よかったです」
背中を拭いてもらいさっぱりしたロゼッタは、次は自分の番とプリムの背中を拭いてあげる。
「……さすがに、ロゼッタ様に背中を拭かせるのはどうかと思ったりしてしまいます」
公爵家の令嬢になんてことをさせているんだ!? と、プリムが若干震えている。
確かにプライドばかり高い貴族もいるので、そういう人間だったら怒ったりするだろう。けれど、ロゼッタはそんなことちっとも気にはしない。
「大丈夫大丈夫、だって同じ班の仲間だもんね」
「仲間……嬉しいです」
素直な気持ちを言うプリムに、ロゼッタも笑顔になる。
(本当だったら、様なんて敬称もいらないんだけどね……)
しかし口調まで変えてしまうと、プリムがほかの貴族から図々しいと目をつけられてしまう可能性がある。それは避けたいのだ。
最終的にロゼッタと関わらなければ平和に暮らせたのでは? なんて逆恨みをされて死亡フラグが立ってしまっては大変だ。
「はい、おしまい……っと!」
「ありがとうございます、ロゼッタ様」
「どういたしまし、ふああぁぁ」
返事をし終わるより先に、特大の欠伸がやってきてしまった。
「わ、ごめん。夜型だから、この時間に眠くなることはほとんどないんだけど……」
「今日は大変な一日でしたから、疲れたんだと思いますよ」
「そうかな……あ、でも今日はちょっと早起きしたんだ」
朝方にカインが訪ねて来て話をしていたので、起床時間がちょっと早かったのだ。この睡魔はきっと、それも含まれているのだろう。
「最初の見張りはラインハルトとカインだったから……私たちはさっさと寝ちゃおう」
「はい! 私とロゼッタ様の順番は三番目なので、まとまった睡眠をとれますね」
「うん。きっと見張りも上手くできてるか先生たちが監視してるだろうから、頑張ろうね!」
「はいっ!」
えいえいおー! と二人して気合を入れて、ロゼッタはハンモック、プリムは寝袋に入って就寝した。
眠りに入ったはず――なのだが、ロゼッタはなかなか寝付けないでいた。というのも、なんだか体が気持ち悪いのだ。
(うぅ~ん、薬を飲むほどでもないかなぁ。気圧の変化とか、疲れとか、そういうところからきてるのかな)
ただ、野宿には慣れているし、日中にハードな戦闘があったわけではない。そのため、疲れは原因ではなさそうだ。
となると、気圧やらうんたらが影響しているのかもしれない。
(そういうときは、寝るしかない)
朝方には見張りの順番が来てしまうので、ちょっとでも長く睡眠をとりたい。ロゼッタは羊を数えながら、目を閉じた。





