19:美味しいご飯
それは、スープの美味しい匂いと共に起こった。
「――魔物だ! ウルフ!!」
ラインハルトの大きな声で、全員が身構える。見ると、ラインハルトがウルフの牙を剣で受け止めているところだった。
ウルフは森を少し進むと出てくると教師が言っていたので、ロゼッタたちは初日にしては十分進めたのだろう。
「あ、あぶないっ! ――【ライトシールド】!!」
プリムが素早く防御魔法をかけると、ラインハルトに余裕が生まれる。
何度かの戦闘でプリムはコツを掴んだようで、こうしてすぐに魔法を使ってサポートすることが上手くなってきた。
「リュート様、魔法を!」
「っ、はい!! 火の精霊よ、眼前の敵を撃て! 【ファイア】!!」
力強いリュートの言葉とともに、出現した炎がウルフに直撃する。『ギャインッ』と声をあげて、ウルフが消える。
問題なく倒せたようだ。
「大丈夫?」
「スープは無事だよ」
「えっ」
「ならよかった」
「えっえっ」
ロゼッタの声掛けにラインハルトでもリュートでもなくカインが頷くと、プリムが「そこなんですか!?」と戸惑っている。
もちろん班員の身の安全も大事なのだが、今は美味しいご飯も大事だ。やはり野宿といえば、カインの美味しいご飯がなければ始まらない。
「私たちも大丈夫です。でも、今のウルフ……なんだか」
ラインハルトも返事をして、何かを言う前に――新しい違うウルフが茂みから飛び出してきた。今度のターゲットは、ルイスリーズだ。
「夜になったから、ウルフの数が増えてきたのか? ――よっと!」
ウルフが増えた原因を口にしながら、ルイスリーズはあっさり一太刀で倒してしまう。これではそこそこ強いウルフがまるで雑魚だ。
「わあぁぁ、お二人とも強いですね。怪我をしていたら回復しますが――」
「「問題ない」」
「ですよね」
プリムの申し出にルイスリーズとラインハルト二人の声が重なり、思わず笑ってしまう。この班なら、ドラゴンが出て来ても倒せてしまいそうだ。
ざっと周囲を見回り、ほかに魔物がいないことを確認してやっと落ち着くことができた。
先ほどからずっといい匂いがしていたので、ロゼッタたちはもう腹ペコなのだ。
野菜とソーセージのスープに、ベーコンやチーズがたっぷり乗ったピザ。野宿の食事だと考えると、かなりレベルが高い。
ラインハルトが「すごくいい匂いだ!」と早く食べたそうにしている。
「たくさんあるから、好きなだけ食べてください」
カインが全員分のスープをよそい終えると、楽しい食事が始まった。
「ん~~っ! やっぱりカインのご飯は最高!」
「すごく美味しいです! 私、カイン様と一緒の班になれて幸せです」
ロゼッタが絶賛する横で、プリムもピザに舌鼓を打ちながらカインのこと褒めている。とても可愛い笑顔つきなのは、さすがヒロインといったところだろうか。
(幸せ、なんて言われたら……世の男は全員落ちてしまうのでは?)
なんて考えてしまうほどだ。
「そういえばラインハルト、先ほどウルフを倒した後……何か言いかけていなかったか?」
ふいにルイスリーズがラインハルトに問いかけると、「ああ」と思い出したように声をあげた。
「いや……自分の勘違いだったみたいなので、大丈夫です」
「そうか? 魔物がいる森の中ではちょっとしたことが命の危機に繋がるから、気になることがあるなら遠慮せずに教えてくれ」
「はい! とはいっても、さっきのあれは……最近ちょっと自分の鍛錬がなまっていたと思ってしまっただけです」
ラインハルトは恥ずかしそうに照れ笑いをし、「日々精進します」と言った。





