15:魔王信仰
コンコン、というノックの音で、ロゼッタは目を覚ました。
ベッドからのそりと起き上がり室内を見回すと、木の温もりを感じられてほっこりする。きっとこのまま二度寝できたら最高だろう。
そんなことを考え、ベッドへぱたりと――倒れようとしたら、「ロゼリー!」という自分を呼ぶカインの声が聞こえた。
「ハッ!」
いけないいけない、また寝るところだった。
「ごめん、ちょっと待って!」
ロゼッタは慌てて制服に着替えて、カインを招き入れる。
「おはよう、カイン」
「おはようロゼリー……って、寝癖ついてるよ」
「おっと!」
カインがくすりと笑って、ロゼッタの髪を押さえるように撫でる。しかし寝癖はなかなかに強力で、またぴょこりとカインの手の隙間から顔を出した。
「ぷっ」
「ちょ、笑わないでよも~! 急いで支度したんだから、仕方ないんだよー!」
ロゼッタは急いでタオルを濡らし、それで頭を押さえる。しばらくすれば、寝ぐせも収まるだろう。
二人分の果実水を入れて、ロゼッタは椅子へ座った。
「それで、どうしたの? こんなに朝早くから」
「うん。気になって、ちょっとだけシャリリア領のことを調べてみたんだ」
「――!」
カインの言葉に、ロゼッタは目を見開く。
(そういえば、私はちゃんと調べたことなかったな……)
レベル上げをしなければいけなかったとはいえ、時間がまったくなかったというわけでもない。もし何か、根本的な原因があればそれを知ることにより母と和解できるようになるかもしれなかったのに。
ロゼッタが自分の至らなさに絶望していると、カインの口から「魔王」という単語が飛び出した。
「シャリリア伯爵は、魔王信仰を嫌う第一人者みたいなところがあるみたいだよ。そのせいで、ほかより闇属性が嫌いみたいだね」
「魔王信仰……?」
初めて聞く単語に、ロゼッタは首を傾げる。
なんとも物騒な言葉だし、魔王は世界の敵なので信仰すべきではないことくらい子どもでも知っている。
(って言っても、その魔王って実は目の前にいるカインなんだよね……!!)
ゲーム知識のあるロゼッタは、カインの正体を知っている。
しかしカインの中で眠っているであろう魔王は封印されているのか、まだ目覚めてはいない。
――が、いつ目覚めるのかはロゼッタにもわからない。
けれど絶対に言えることは、何があってもロゼッタはカインの味方であるということだ。
カインは果実水を一口飲み、話を続ける。
「どうやら、魔王を復活させようとしてる組織らしい」
「えっ」
カインの言葉に、ロゼッタは驚いて目を見開く。
つまりカインを魔王として復活させようとしているのが魔王信仰で、それを阻止しようとしているのがロゼッタの母の実家ということではないだろうか。
(それは是が非でも実家に頑張ってもらいたい……)
カインが魔王復活せず平和に暮らすことができるのであれば、自分が忌避されるくらいどんとこいだ。
しかし、それだけでは足りない。
「……私たちで、魔王信仰を倒すべきじゃない?」
「いやいやいやいや、何言ってるのロゼリー。組織の規模や本拠地やら、いろんなことが謎に包まれてる組織だよ」
いくら自分たちがAランク冒険者といっても、まだ一六だ。裏の世界に踏み込むには、魔物とばかり戦っていた自分たちでは圧倒的に経験が足りないのだ。
全力で反対するカインを見て、ロゼッタは肩を落とす。
(カインがそう言うっていうことは、私たちのレベルじゃ厳しいんだろうな……)
これはもっと強くならなければ……と、ロゼッタは考える。
ひとまずの目標として、死亡フラグ回避に加えて魔王信仰をぶっ潰すというものもロゼッタのスケジュールに付け加えておいた。





