14:母方の実家にご挨拶
クレスウェル王立学園は、年に一度遠征が行われる。
入学したロゼッタたちも例にもれず、さっそく遠征課題をすることになったのだが――その遠征地がシャリリア地方だった。
「は~~憂鬱だ……」
がたごと揺れる馬車の中で、ロゼッタは生気の抜けたような顔をしてダラダラとしていた。それを見て、向かいに座るルイスリーズとカインが苦笑する。さらに足元では、カインの相棒であるネロが気持ちよさそうに寝ている。
絶賛お昼寝タイムの可愛いもふもふ、ネロ。
黒の艶やかな毛並みを持つ狼で、その体長は一メートルほどある。カインとずっと一緒に冒険をしてきた優秀な相棒だ。
「もうすぐ到着するんだから、しゃきっとしたらどうだ」
「そうだね……」
ルイスリーズの喝がロゼッタの右耳から入り左耳から出ていってしまう。ああ、これは駄目そうだとルイスリーズはため息をついた。
今、ロゼッタ、ルイスリーズ、カインの三人は、一足先に遠征地であるシャリリア地方へ向かっているところだ。
ほかの生徒たちよりも、一日早いスケジュールだ。
その理由は、シャリリア地方がロゼッタの母の実家が治めていることにある。さすがに学園に入学した孫が、挨拶の一つもしないのでは外聞がよろしくない。
どんよりとした馬車の空気をどうにかしようと、カインが口を開いた。
「シャリリアって、どんなところなのさ」
「ああ、シャリリアは……シャリリア伯爵が治める領地で、光属性を信仰していることで有名だな」
そのため、闇属性を強く忌避しているのだとルイスリーズが説明をする。
「公に口に出せることではないが、あまり属性信仰というものはいいものではない。属性に優劣をつけるなんて、人間がしていい領分じゃないと俺は思ってるからな」
「それは……そうだね」
カインは頷きながら、「なかなか厳しい挨拶になりそうだね」と表情をしかめる。
属性信仰は、昔は平民の間でもよくあったものだ。しかし今は一部の過激派がいるだけで、偏見を持つ人はほとんどいなくなっている。
ただ、力を持つ一部の貴族の間でも根付いているのが問題だ。ロゼッタも、その信仰の被害者の一人と言ってもいいだろう。
かといって、大々的に取り締まることもできずに苦労しているのだ。いっそ、何か悪事でも働いてくれていたら話は早いのだけれど――なんて、ルイスリーズが笑った。
***
「申し訳ございません……その、旦那様はお会いにならないとのこと、でし……て……」
段々と門番の声が小さくなるのを感じながら、ロゼッタは「大丈夫です」と力なく首を振った。
母の実家――シャリリア伯爵家へやってきたのだが、門前払いをされてしまった。
(邪険に扱われるだろうとは思ってたけど、まさか門前払いをされるとは思わなかった……)
いや、これはこれで楽だからいいのではないか? とも思うけれど、ロゼッタとしてはもやもやするものがある。
しかしここで粘っても仕方がないので、ロゼッタたちは街の宿へ向かった。今日は宿で一泊し、明日になったらほかの生徒と合流して遠征課題のスタートだ。
「ロゼッタ、大丈夫か?」
「気にするな……っていうのも無理かもしれないけど、あんまり気にしない方がいいよ」
「……うん。ありがとう、ルイ、カイン」
二人に慰められ、ロゼッタは笑顔を取り戻す。
(私には支えてくれる仲間がいるんだもんね!)
それを考えると自分は恵まれているし、やる気も出てくる。今日はたくさん美味しいものを食べて、明日に備えて早く寝てしまおう。
(よーし、まずは遠征を頑張ろう!)





