11:三人でお祝い
ホームルームを終えたロゼッタとルイとカインは、さっそく冒険者ギルドへやってきた。今日は授業がないので、時間に余裕があるのだ。
るんるん気分で依頼の掲示板を見るロゼッタを見て、カインがため息をつく。
「普通、入学を祝うとか……そういうことをするんじゃないの」
「え……」
カインの言葉に、ロゼッタは目をぱちくりさせる。
そして、それもそうだ――と納得する。
(とは言っても、私の家はなぁ……)
父親は少しずつロゼッタの味方をしてくれているように思うが、やはり母はどうしても闇属性であるロゼッタのことが怖いようだ。
(怖いっていう表現が合ってるかはわからないけど……)
しかし自分はともかくとして、ルイは王城で盛大に祝われるのでは? とロゼッタはルイのことを見る。つられたように、カインの視線もルイへ向けられる。
「え、俺か……? 一応、昨日の夕食のときにお祝いの言葉をもらったくらいかな」
別にそこまで大々的に祝うものでもないと、ルイが言う。
「俺からしたら、王様に祝いの言葉をもらうだけですごいことだよ」
「それもそうか?」
カインの言葉に、ルイが笑った。
そんな二人のやりとりを見て、ロゼッタはうぅ~んと悩む。家族うんぬんはいいとしても、せっかくなので三人でお祝いをしてみたらいいのでは――と。
ロゼッタとルイは学園へ入学するのが当然だと思っていたが、冒険者をして一人で過ごしてきたカインにはきっと特別なことだっただろう。
「よーし、三人でお祝いしよっ!」
「お、いいな」
「なら、いつもの店に行く?」
ロゼッタの言葉に、すぐルイとカインが頷いてくれた。なんだかんだ、このメンバーで盛り上がるのは二人とも好きなのだ。
***
「おまち! ソーセージの盛り合わせに、キッシュ、コーンバター、果実ソーダが三つね」
「わ~! 美味しそう!」
第一弾の料理が来て、ロゼッタが目を輝かす。
「「「入学おめでとう!」」」
果実ソーダで乾杯して、みんなで笑顔になる。
すると、ルイがコーンバターを自分の前に持っていく。実はコーンバターが大好きで、ルイは絶対に頼むのだ。
「トウモロコシばっかりで、飽きないの?」
「だって美味いし」
カインの言葉に、ルイは「全然!」とコーンバターを頬張る。
「城での食事は、コーンバターなんて出ないからな。冒険者のルイとして活動してるときくらいしか、食べれないんだ」
だから大目に見てくれと、ルイが言う。
(王城の食事か~。毎日フルコースみたいなのが出てくるのかな?)
それは大変だろうなと、ロゼッタは苦笑する。
とはいえロゼッタも公爵家の人間なので、食事はいいものが用意されている。順番に給仕してもらえはするが、コースというほどのボリュームではない。
朝や昼はワンプレートに、別途パンなどがテーブルに並んでいるので比較的自由だ。
「でも、一番は野宿のときにカインが作ってくれるコーンバターだな! あれは格別の美味さがあるんだよなぁ」
思い出しただけでヨダレが出そうだと、ルイはカインを見る。
このパーティーの料理人は、いつもカインが担当してくれている。ロゼッタたちも手伝ったりはするが、純粋にカインの料理スキルが高すぎるのだ。
なので野宿でも温かいスープが出るし、食事も美味しい。
一通り食事を済ませると、話題は学園のことになった。
「遠征課題のプリント読んだ?」
「一ヶ月後に遠征するってやつ? 確か、『シャリリア地方』だっけ」
「え、シャリリア!?」
ロゼッタがわくわくしつつ問いかけると、カインが詳細を口にした。しかしそれに驚いたのも、話題を出したロゼッタだ。
それを見て、ルイが呆れる。
「読んでなかったのか?」
「いや、どこに行くかってところはあんまり注目してなかった……」
ロゼッタが確認していたのは、いつ行われるのかということと、班分けをしてパーティーを作って遠征をするということだ。
うっかりしていた。
「……シャリリア地方って、ロゼリーの母方の領地だったか」
「うん」
「え、そうだったの!?」
やはりルイは知っていたようで、ロゼッタは苦笑する。カインは当然知らないので、驚くのも無理はない。
「私の母は、闇属性をめっちゃ嫌ってるからさ。その原因も、実家の影響みたいで……」
だから遠征先を聞き、楽しいという気持ちがどんどんしぼんでいっている。
まあ、だからといってロゼッタが関わるようなことはないとは思うのだけれど――
「とはいえ、孫娘が遠征に行くというのに挨拶がないのも外聞が悪いな」
「えっ!? やっぱり行かなきゃ駄目なの!?」
ががーん! と涙目になるロゼッタに、ルイは「当然だろう」と息をつく。
「別に仲良くしろってわけじゃない。訪問しました、っていう体裁だけあればいいんだから。俺とカインも同行してやるから、頑張れ」
「………………うん」
どうやら遠征も、楽しいだけではないようだ。





