10:ホームルーム
そうだった――!! と、ロゼッタは口をあんぐりと開ける。
今まで公爵令嬢のロゼッタは桃色のウィッグをつけていたので、ラインハルトもリュートも同一人物だとは微塵も考えてはいなかったのだろう。
しかし今は黒髪で、魔法の腕もきっと先ほど見ていただろう。そう考えると、結び付けることは容易いだろう。
(なんて説明すればいいのか……)
ロゼッタが腕を組みながら言い訳を考えていると、ルイスリーズがさらりと「経験を積むために冒険者をしてたんだ」と告げた。
「私は将来上に立つ人間だから、いろいろなことを知っておきたかったんだ。それは、婚約者のロゼッタにも言えることだ。だから、私とカインと三人で冒険者をしていたんだ」
「なるほど……。この国の貴族は、魔法を使った職に就く者も多いですし――有事の際は戦闘に立つことも求められますからね」
納得だと、ラインハルトが頷いている。
(おぉ~! 何事もなくてよかった。私も次からはそう言おうっと)
すると、リュートがロゼッタの前にやってきた。
「まさか、ロゼリーがロゼッタ嬢だとは思いませんでした。ぜひ一緒に魔法の話をしたいものです」
「……! もちろんっ!」
以前会ったときから随分大人びたように感じたリュートだが、嬉しそうにはにかんだ表情は年相応だった。
ロゼッタも本当は魔法のことを話したりしたかったけれど、いかんせん属性が闇。無意識の内にも、やはりどこか遠慮してしまうところはあった。
(でも、リュートは――リュート様の方がいいか。私が相手でも忌避は感じてないみたい)
これは嬉しい発見だと、ロゼッタは頬が緩む。もしかしたら、自分が死にそうになったとき味方にもなってくれるかもしれない。
――というのはさすがに都合よく解釈しすぎかもしれないけれど。
(でもでも、仲良くなっておくにこしたことないもんね!)
仲良く話をしていると、教室のドアが開いて担任の教師が入ってきた。ロゼッタの魔法実技を担当した教師だった。
(うわ、相性悪そうな人が担任になっちゃったな……)
ちょっとげんなりしつつも、ロゼッタは静かに席に着いた。
「みなさん、入学おめでとうございます。私は担任のロージー・フィナンナです。この学園で学び、大きく羽ばたいてくれることを楽しみにしています」
挨拶を済ませたロージー先生は、次に数枚のプリントを配った。クラス表や授業内容、学園の案内などが書かれている。
(あ、このプリント……スチルに書いてあった!)
なんてことを思い出して、ロゼッタは少しテンションを上げる。
プリントを見ていくと、『遠征課題について』というものがあった。
(そういえば、学園メニューに遠征コマンドがあったっけ)
遠征コマンドは年に一回使うことができて、大幅にステータスを上げることができるもの。
とはいえ、別に細かいシナリオが用意されている……ということはなかった。ただ、遠征仕様の攻略対象キャラクターの台詞はあったけれど。
つまりこの遠征は、大幅なレベルアップのチャンスでは……? と、ロゼッタは考える。
今までは魔法がメインだったけれど、剣や弓、防御関係に力を入れて鍛錬してみるのもいいかもしれない。
ゲームでは重要視されていなかったものなので、別に難しいことはないだろう。ロゼッタはそんなことを考えながら、引き続きロージー先生の話に耳を傾けた。





