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パーティーメンバーに婚約者の愚痴を言っていたら実は本人だった件  作者: ぷにちゃん
第一章 悪役令嬢、死なないため冒険者になる!
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4:新しい部屋

「ロゼッタ様、本日のドレスはこちらなんていかがでしょう?」


 ナタリーは桃色のドレスを手にして、にこにこ顔だ。フリルがたくさんついていて、とても可愛らしい。


「それにするわ」

「はい」


 素直に頷き、ロゼッタはドレスに袖を通す。

 転生したときは三歳だったけれど、あれから一年が経ち四歳になった。舌っ足らずだった言葉は綺麗に発音できるようになったし、この世界のことをいろいろ調べたりもした。


 そんな中で一番の収穫は、ロゼッタ付のメイドのナタリーと仲良くなれたことだろう。

 最初こそ人形のように仕事をこなすだけだったナタリーだが、ロゼッタが笑顔で話しかけるようになると、次第に笑顔を返してくれるようになった。

 彼女も闇属性のロゼッタを忌避していたが、今では屋敷で一番信頼することができる。


「ねえ、ナタリー」

「はい」

「ドレスじゃなくて、もっと動きやすい服はないかしら?」

「動きやすい服……ですか?」


 ロゼッタが要望を口にすると、ナタリーは首を傾げる。

 基本的に貴族女性の装いは華やかだが動きにくく、かろうじて乗馬用の衣装であれば……と言った感じだろうか。けれどロゼッタはまだ幼く、乗馬をする必要はない。


「ええと、私たちが着るような平民の服装でしょうか?」


 それであれば、ドレスよりはかなり動きやすい。

 しかし、ロゼッタは首を振る。


「スカートではなくて、ズボンがいいの」

「ええっ!? さすがにそれはちょっと……よろしくないのではないでしょうか」

「駄目かしら……」


 闇属性で世間から忌避されているので、あまり表立った行動をするのはよろしくない――と、ナタリーはそう言っているのだろう。

 ロゼッタも、その点に関しては同意できる。


(私が活発に行動したら、自由を奪われるかもしれない……)


 そう考えると、屋敷の中で大人しく過ごしているのがきっといい。


(でも、そのままだと破滅エンドで死んじゃう)


「…………」


 どうするのが最善だろうかと、ロゼッタは考え――一つの結論を出した。



 ***



 それから数年が経ち、ロゼッタは七歳になった。

 下手に悪目立ちすることなく、静かに屋敷で過ごしているように見せかけ、自室でできる柔軟体操やストレッチなどを念入りに行い、読書で勉強をした。

 五歳になったころには、家庭教師をつけてもらえた。


 ――ただ、それでも家族とはあまり関わらない生活だけれど。


 ロゼッタがため息をつくと、ものすごい勢いで部屋の扉が叩かれた。そして同時に、ナタリーの声。


「あわわわっ、ロゼッタ様! 大変です!!」

「ナタリー、どうしたの?」


 慌てて入ってきたナタリーを落ち着かせるように、ロゼッタは果実水を差し出す。ナタリーはそれを飲んで、深呼吸を何度か繰り返した。


「ふうぅぅ……。って、大変ですロゼッタ様!」

「だから、どうしたの?」


 こんなに慌てふためくナタリーを見るのは初めてだ。

 ロゼッタがくすりと笑うと、ナタリーは「部屋です!」と告げた。


「部屋?」


 この部屋がどうかしただろうかと、見回してみる。しかし、特に普段と変わりはない。


「お部屋を、移るように……と!」

「えっ?」


 思ってもみなかったナタリーの言葉に、ロゼッタは目が点になる。


「この日当たりのよくない、裏庭に面した部屋から移動? どこに? 今度は地下に行かされて光も当たらなくなっちゃうとか……?」


 思わず自分の悪役令嬢という状況を考え、そんな言葉が口を出た。けれどナタリーは、これでもかというほど首を振った。


「違いますよ! 表に面したお部屋をいただけるそうです!」

「え……」


 さすがにこれにはびっくりだ。


「ど、どうしてかしら……?」


 思わずナタリーに理由を聞くも、それはナタリーにもわからないようだ。


「ですが、ロゼッタ様はお勉強も頑張っていますし……その努力を公爵様に認められたのではないですか?」

「認められる……ね」


 ロゼッタは生まれてから、父親である公爵と顔を合わせたのは数えるほどしかない。その際も雑談などはせず、淡々とした言葉のやり取りばかり。

 正直、父親がどんな人物であるかはわからない。


 今まで触れていなかったが、フローレス公爵家は公爵であるグラート、母親のアマリリス、長兄のフォルナー、長女のアンリエッタ、次女のロゼッタの五人で構成されている。

 けれど、ロゼッタは兄姉とも数回会ったことがあるだけ。言葉もろくに交わしていないので、きっと嫌われているのだろうと思う。


 そんなロゼッタが、認められる?

 ちょっと意味がわからない。


(でも、部屋を移れるなら嬉しい……かな)


 そこは素直に喜んでおこう。


「それじゃあ、さっそく新しい部屋に行きましょう!」

「はいっ!」




 新しい部屋は、三階の角部屋だった。

 窓の近くに大きな木があるけれど、日当たりは良好。個性的な鳥の鳴き声をBGMにして、広く美しい庭と、その先にある街並みと王城を眺めることができる。


「うわあぁ、すごい」


 あれがパッケージにも描かれていた王城かぁ、いつまで眺めていても飽きそうにない。なんてことをついつい考えてしまう。

 そして街の中にひときわ大きな建物を発見する。冒険者ギルドだ。


(おおおぉ~! これもテンションが上がる!)


 成長したら、冒険者になって強くなる予定だ。そして死ぬ運命を打ち砕くのだ。

 強くなれば物理的に死ぬ確率はぐっと減るし、もし怪我や毒を盛られた場合も仲間を見つければ回復魔法で助けてもらうことができるだろう。


(ばっちりな計画だわ!)


 思わず鼻歌でも口ずさみたくなる。


 ロゼッタがふんふんふん♪と窓の外を見続けていると、部屋にノックの音がして、公爵家の執事が顔を出した。


「ロゼッタ様、旦那様がお呼びです」

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