7:実技試験2
今度はいったい何事だ!? とロゼッタが振り返ると、教師と剣でやりあっているルイスリーズの姿があった。
どうやら、剣士は模擬試合をしているようだ。
「おぉ~! さすがルイ、強いね!」
見ると、相手が教師だというのに、ルイスリーズの方が一枚も二枚も上手だ。教師の剣を軽くいなして、そのまま流れるような動作で反撃に出ている。
これでは、どちらの試験かわからないとロゼッタは苦笑する。
「これは私も気合入れないと!」
ふんと鼻息を荒くして、ロゼッタも教師の下へ急いだ。
「ロゼッタ・フローレスさんは、魔法で試験を受けるの……ね?」
「はい!」
どこかびくびくしている様子の教師に、ロゼッタは元気よく返事をする。
「あなた……魔法で試験を受けるつもりですか?」
「よろしくお願いします」
「…………」
ロゼッタが優雅に腰を折ると、教師は言いづらそうにしつつも、口を開いた。
「その、ロゼッタさんは闇属性でしょう? 魔法ではなく、戦闘分析などサポート分野に回った方がいいと思うのよ」
「…………」
教師の言葉を聞いて、今度はロゼッタが言葉を失う。
(この先生も、闇属性忌避貴族なの!?)
せっかくいいところを見せられる実技試験だというのに、出鼻をくじかれてしまった気分だ。
(まあ、確かに私は王太子の婚約者だし、公爵家の令嬢だし……闇魔法を大々的に使わない方がいい立場だってことくらいはわかるけどさ)
けれど、ルイスリーズやカインはロゼッタが闇属性だということは気にしていないし、最近は父親も理解をしめしてくれている。
ここは、引いてはいけない。
(これから先だって、闇属性の子どもは生まれてくるからね!)
その子たちに、自分のような思いはしてほしくない。だからここから先は、貴族として闇属性は悪くないと示していかなければいけないのだ。
ロゼッタは公爵家の令嬢として、優雅に微笑む。
「わたくしは、闇属性の初級魔法で実技試験を受けさせていただきます」
「……わかりました」
有無を言わさないロゼッタの笑みに教師は一瞬息を呑んだが、すぐに了承の返事をした。
魔法の試験は、カインの弓と似ている。
一〇メートルほどのところに的があるので、それに向かって魔法を放てばいい。動かない的なんて、ロゼッタには楽勝だ。
周りを見ると、女子生徒が魔法を撃っているところだった。のろのろと発動した魔法は、的に当たってぽひゅんと軽い音を立てて消えた。
もう一人は火の初級魔法で、ちょっとだけ的に焦げ跡がついている。周囲で見ていた生徒たちは、「すごい!」と拍手している。
ロゼッタが的の前に立つと、ざわざわしていた鍛錬場がしん……となった。どうやら、全員がロゼッタに興味を持っていたようだ。
黒髪を隠しもせずに登校してきた、公爵家の令嬢に。
「威力が出すぎると大変だから、初級魔法。って言っても初級魔法もそこそこの威力があるけど……鍛錬場には守りの魔法がかかってるって言ってたから大丈夫か」
建物のことを考えず、気兼ねなく魔法を撃つことができる。
「――闇の妖精よ、影から闇を作り出せ! 【ダークアロー】!」
ロゼッタが力強く呪文を唱え、魔法を撃つと――ドゴォンと大きな音を立てて的は砕け散り、鍛錬場の壁に穴が開いた。
(えっ、守りの魔法は??)





