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パーティーメンバーに婚約者の愚痴を言っていたら実は本人だった件  作者: ぷにちゃん
第一章 悪役令嬢、死なないため冒険者になる!
29/67

29:正体

 お姫様――シャルティアーナの言葉に、ロゼッタとカインはルイを見る。彼女に『お兄様』と呼ばれたのは、ルイだ。

 お兄様ということは、シャルティアーナの実の兄ということで、つまりは――


「「え、王子様だったの?」」


 ロゼッタとカインの声が重なった。


「そうなんだ、黙っててごめん……」

「まさかルイが王子様……。まあ、それはあと。早くお姫様を助けてあげないと」

「あ、ああ!」


 ルイは剣で鍵のかかった扉を切り、部屋へと入った。

 まさに、お姫様を助ける王子様そのものだ。

 シャルティアーナが泣きながらルイに抱きついて、何度も「お兄様」と呼ぶ。大きな瞳からはぽろぽろ涙がこぼれて、とまらない。


「助けに来るのが遅くなってごめん、シャルティ」

「うぅんっ! お兄様が助けにきてくれて、嬉しい」


 兄妹の微笑ましい再会を見ながら、ロゼッタは内心で冷や汗をかきまくっていた。なぜかって? それは、彼の正体がルイスリーズだったからだ。

 そう、つまり――ロゼッタの婚約者だった。


(え、まって、私はずっと本人に本人の愚痴を言っていたの???????)


 大混乱だ。

 とりあえず一度落ち着くために、深呼吸をしよう。すーはー、すーはー。よし、落ち着くわけがない。

 ロゼッタの頭の中は、『どうしよう』という単語で埋め尽くされている。いや、もうどうしようもできないかもしれない。


 そしてロゼッタの冷静な部分が、ふいに今回の依頼のことを思い出す。


(そうか、だからルイがこの依頼をこなしたんだ……ストーリー通りじゃん……)


 とりあえずロゼッタは考えることを放棄した。




「はしたない姿をお見せしてしまい、失礼いたしました。わたしはシャルティアーナ・クレスウェル。助けていただき、ありがとうございます」

「いいえ。シャルティアーナ姫がご無事で何よりです。私は冒険者のロゼリー」

「俺はカイン。依頼を受けただけだから、別に気にすることはないよ」


 子どもながらにちゃんと礼をしたシャルティアーナに、ロゼッタは微笑む。カインも、彼なりの照れ隠しをしているようだ。

 もう少しゆっくり話をしたくもあるが、まずは場所を移すことが先決だろう。


「それじゃあ、帰り――【ダークアロー】!」

「ひゃあぁっ!」

「あっ、ごめんなさい。コウモリが一匹残っていて……びっくりさせちゃったよね」


 ロゼッタが急に魔法を使ったため、シャルティアーナが頭を押さえてしゃがみ込んだ。すぐにロゼッタが手を差し伸べると、おそるおそる顔を上げてくれた。


「あ……」


 シャルティアーナは倒されたコウモリを見て、ほっとした。


「すごい、すごいです! お姉様と呼ばせていただいてもいいですか?」

「えっえっえっ!?」


 キラキラした尊敬のまなざしで見つめられ、ロゼッタは戸惑う。一国の姫君が、冒険者、それも闇属性の人間相手に呼んでいい敬称ではない。

 ロゼッタはルイを見て、ヘルプを求める。――が、くすくす笑うだけで助けるそぶりは微塵もない。


「よかったな、シャルティ」

「はいっ!」


(あっ、駄目だこの兄妹……!)


 まったく話が通じそうにないぞと、ロゼッタはため息をつく。つくのだが……可愛いシャルティアーナに姉と呼ばれて、嫌なわけがない。


(むしろ全力で嬉しい……)


 にやけた顔をどうにかするために咳払いをして、ロゼッタはシャルティアーナに手を差し出す。


「それでは、帰ります。シャルティアーナ姫、外は危険なので私から離れないでくださいね」

「はいっ! お姉様!!」

「……じゃあ、行こうか」


 こうして、ロゼッタたちは北の山脈の洞窟を後にした。


 ロゼッタとしては魔王城が気がかりだったけれど――今のところ、それらしい建物は見えない。カインの様子も普段通りで、変わったところはない。


(ゲームが始まらないと、駄目なのかも)


 つまり、今できることは何もないのだ。

 またいつか来ることになるだろうかと思いながらも、北の山脈を後にした――。



 ***



 ルイ――ルイスリーズとシャルティアーナは王城へ戻ったため、ロゼッタとカイン、ネロで冒険者ギルドに依頼の報告へやってきた。

 応接室でルイの身分だけを伏せ、説明をした。ちなみにルイの身分を伏せたのは、本人の希望だ。しばらく冒険者を続けたいから、と。


(でも、ルイが冒険をしてた理由って……シャルティアーナ姫を助けるためだったんだ)


 シャルティアーナを助けるため、王城から騎士が派遣され、ルイも一緒にいったことがあったらしい。

 けれど、大量のコウモリとハーピーにやられ、助け出すことができなかったそうだ。


 それからは、王子としての仕事と、強くなるために冒険者となったようだ。結果、助け出せるほどに強く――いや、強くなりすぎている気がしてならない。


(そもそもルイスリーズも初登場時のレベルは10……)


 自分のせいで、メインキャラクターたちがめきめき強くなってしまっているような気がするけれど……もう遅い。


「今回の件、速やかな依頼達成感謝する。報酬と、ロゼリー、カイン、それからルイ。三人のAランクへのランクアップが決まった。おめでとう」

「えっ、Aランク!? ありがとうございます!」

「ありがとうございます」


 ギルドマスターのジャングの言葉に、ロゼッタとカインは喜ぶ。二人のランクはCランクで、それが一気にAランクになったのだ。

 これは異例と言っていいだろう。


(つまり私の魔法の腕は、上から数えた方が早い……!?)


 ゲーム開始前から、すでに最強になってしまった。

 あとは筋トレを続けて強い肉体を手に入れることができれば、死亡フラグが立ったとしても跳ね返すことができそうだ。


(やっぱり私の作戦は間違ってなか――あっ!)


 とてつもなく大変な問題が一つ残っていたことを思い出す。

 そうだ、ルイことルイスリーズの件を放置していた。

 今なら円満婚約破棄ができるかもしれないが、もしかしたら婚約を続けても上手くいくかもしれない。


 ――が、ゲームが始まっていない現段階で判断するのは時期尚早か。


(あとは普通に、顔を合わせづらい)


 婚約者の愚痴を、まさか本人に言っていたなんて。そんな偶然、あっていいわけがないだろう。


(ああ、気が重い)


 とりあえず会う機会なんてないので、この件はもうしばらくそっとしておくことにする。

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