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パーティーメンバーに婚約者の愚痴を言っていたら実は本人だった件  作者: ぷにちゃん
第一章 悪役令嬢、死なないため冒険者になる!
27/67

27:過去エピソード

 がたごとと馬車に揺られ、ロゼッタたちは北の山脈を目指していた。――そう、ゲームで魔王城がある場所だ。


(まさか、極秘依頼がお姫様の救出だったなんて……)


 ロゼッタはごくりと息を呑み、窓の外を見る。

 雪こそ降っていないけれど、霜が降りてとても寒いということは見て取れる。ここだけ、まるで別世界だ。


「ロゼリー、大丈夫?」

「あ、うん。ちょっと緊張しちゃったみたい」

「なんだ、ロゼリーも緊張するのか?」

「するよ! 人をなんだと思ってるの!!」


 いつになくシリアスな雰囲気を出していたロゼッタを、カインが心配してくれた。そして、ルイが緊張をほぐすようにちゃかしてくる。


「まったくー!」


 ロゼッタは頬を膨らませながら、おやつにと買っていたクッキーを頬張る。そして、ゲームのシナリオに少しだけ書かれていたことを思い出す。



 ――お姫様の救出。

 数年前に攫われたシャルティアーナを助け出すというもの。

 実はこれ、メインシナリオでさらりと触れられているのだ。

 ヒロインが王太子ルイスリーズと話をしている際に、『攫われた妹を助けにいった』と教えてくれる。

 それはまさに美談で、絵本にまでなったほどだ。



 その過去が今、起きようと――いや、起きている。

 しかし大問題も大問題だ。


(助けに行くはずのルイスリーズはどうしちゃったの!?)


 もうずいぶんと顔を見ていない、ロゼッタの婚約者ルイスリーズ王太子。本来であれば、彼が助けに行くはずなのに。


(私が強くなりすぎて、過去のエピソードに影響が出てる……!?)


 こんなの予想外がすぎる。

 たとえルイスリーズがロゼッタより弱かったとしても、頑張って救出してくれ! と、切に思う。


(……まあ、私たちが行った方が成功率は高そうだけど)


 そう思いながら、クッキーでお腹がいっぱいになったロゼッタは、心地いい馬車の揺れで夢の中へと旅立った。



 すやすや眠るロゼッタを見て、ルイとカインは笑う。


「緊張してたんじゃなかったのか」

「まったく、ロゼリーらしいね。よいしょっと」


 カインは鞄からブランケットを取り出して、ロゼッタの膝にかけた。それを見たルイは、お母さんみたいだと思う。

 外見は幼いけれど、カインは自分たちの中で一番しっかりしている。


「今回の依頼、カインが一緒にいてくれてよかった」

「なんでさ?」

「だって、今までの依頼より難易度が高いだろ? 客観的に、視野の広いカインはすごく頼りになるからさ」


 ルイが褒めると、カインは照れて耳の先が赤くなる。


「褒めても何も出ないよ?」


 と言いつつ、こんなときのカインは食事の際の品数が増えることは知っている。一緒にパーティを組めてよかったと、ルイは微笑んだ。



 ***



 しんしんと雪が降り出したのを合図にし、馬車がその歩みを止めた。これ以上先へは、歩いていくしかない。

 御者が引き返していくのを見送りながら、ロゼッタは「はーっ」と息をはく。


「――寒い!」


 防寒対策はしっかりしてきたけれど、この寒さには慣れる気がしない。ロゼッタは寒い寒いと、その場で足踏みを繰り返す。

 カインも寒いようで、ネロにくっついている。


 そんな中、平気そうにしている人物が一人。ルイだ。


「目的地は、北の山脈の中腹にある洞窟だ。そこにモンスターがいて、姫を捕えてる」

「洞窟なの?」

「ああ」


 てっきり魔王城だとばかり思っていたロゼッタとしては、拍子抜けだ。


「魔王城に行くのかと思ってた」

「おま、恐ろしいこと言うなよ……魔王がいたら、世界は終わりだ」

「え、魔王っていないの!?」


 何とも驚きの情報だ。

 どうやら、魔王はまだ覚醒していないようだ。



 ――魔王。

 ゲームのラスボスで、世界征服を企んでいる。

 黒髪と黒い瞳の、美青年。

 モンスターを意のままに操り、絶対的な力を持つ。



(まあ、もう私の方が強いんだけどね……)


 しかし、まだ魔王はいないらしい。

 ということは、配下の中ボスあたりのモンスターが姫を攫い、捕えているのだろう。

 シャルティアーナ姫は、もう数年囚われていると言っていた。小さな子に、なんて酷い……と、ロゼッタは怒りが込み上げる。

 本来助けに行くはずのルイスリーズには悪いが、容赦なくシャルティアーナ姫を助け出そう。


「――うっし! 寒さに負けるな! いくぞー!!」

「「おー!」」

『わうっ』




 最終的にラストステージになる北の山脈は、歩きにくい地形な上にモンスターも強い。ロゼッタたちはゆっくりと、確実に歩みを進めていく。


「前方、ホワイトウルフが二匹!」


 モンスターを見つけたカインが声をあげると、まっさきにロゼッタが反応する。詠唱している間に、ルイも走り出す。


「――【ダークアロー】!」


 ロゼッタが一匹を倒し、二匹目がルイに牙をむく。しかしレベルが上がり、成長したルイにとって敵ではない。

 いとも簡単に、向かってきたホワイトウルフを切り捨てた。


「楽勝っ!」

「それはわかったけど、奥からスノーボールが五体くるよ」

「えっ!?」


 ルイが余裕で戦っていたけれど、モンスターの数も多いようだ。次から次へやってくる雪だるまに似たモンスターに、全員で武器を構えた。




「ふ~、そろそろ洞窟に着くかな?」


なん十匹目かのホワイトウルフを倒したロゼッタは、汗をぬぐって地図を持つカインに問いかけた。


「うん、もう目と鼻の先だと――っ、うぅ」

「「カイン!?」」


 カインが突然目元を押さえ込んでしゃがみ込むのを見て、ロゼッタとルイは慌てて駆けつける。

 もしかしたら、モンスターから何か攻撃を受けていたのかもしれない。もしくは、体調不良という可能性も考えられる。


「しっかりして、カイ――っ!」


 ロゼッタはカインの顔を覗き込み、息を呑んだ。

 カインの瞳が、キラキラと輝いていたからだ。魔力が体の底からあふれ出ているようなそれに、ロゼッタは見覚えがあった。


(魔王と同じ瞳だ)


 ゲーム画面で何度も見た魔王も、今のカインと同じ瞳をしていた。宝石のように綺麗で、画面の前で目を奪われてしまったことを思い出す。


 黒い、綺麗な――神秘的な瞳。


(って、そうじゃなくて!!)


 今、ここで推測できる可能性なんて一つしかない。


(カインが、魔王――?)

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『私、魔王。――なぜか勇者に溺愛されています。』コミカライズ連載中!
魔王を倒しに行った勇者が、魔王に一目惚れしてお持ち帰りしてしまうお話です。

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私、魔王。―なぜか勇者に溺愛されています。
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