22:攻略対象キャラクターとの出会い
ロゼッタは順調に冒険者を続け、一四歳になった。さらにギルドランクはCランクになっており、レベルは83になった。
正直に言って、これだけレベルが高ければ余裕でゲームクリアができる。そう、レベルが80もあればラスボスの魔王を倒し、ゲームをクリアすることができるのだ。
(もしかして、この世界に私を殺せる人なんていないのでは?)
――と、最近では思うようになってきた。
しかし、ロゼッタにはまだ懸念すべき事柄がある。
それは――上級以上の魔法を使うことができない、ということだ。
図書館や魔道具店を探してみたけれど、闇魔法に関するものは置かれていなかった。魔法を極めるための道は、なかなかに遠そうだ。
――と、本人は思っている。
のだが。
実はレベルが上がりすぎて、初級魔法の威力もすさまじいことになっているのだ。そこら辺にいるモンスターであれば、初級魔法で十分だ。
しかし死亡フラグを回避するため、ロゼッタの冒険者生活は終わらない。
――と、言いながら。
今では冒険が楽しくなってしまい、普通の令嬢には戻れそうにないな――なんて、思っていたりする。
***
「カイン、そろそろお昼にしない? お腹ペコペコ!」
ロゼッタは【ダークアロー】でオークを倒すと同時に、周囲の警戒をしていたカインに声をかけた。前では、ルイがオークのドロップアイテムを拾ったところだ。
「今のオークで討伐依頼数も達成したし、ちょうどいいかもね」
「やった~!」
カインの美味しいご飯が食べられるので、ロゼッタは大喜びだ。
「今日はハンバーグが食べたいなぁ~」
「わかったから、先に手を洗って」
「はーい! ルイ、水出して~!」
近くに川など、水がないときはルイの水魔法が大活躍する。ロゼッタはルンルン気分で、ルイの下へ行って手を出した。
「ったく……。水の妖精よ、大地に恵みと祈りを【ウォーター】」
ルイが魔法を使うと、その両手から水が溢れ出た。勢いがあって冷たい水は、戦闘で熱くなった体を冷やすのにもちょうどいい。
ロゼッタは、こういったちょっとした光景が好きだ。
(パーティって感じで、いいよね!)
なんだかんだ、ロゼッタ、ルイ、カイン、ネロの三人と一匹はソロよりも組むことが多くなり、今や暗黙の了解でパーティになっている。
上手くいったのは、メンバーのバランスがいいというのも大きな理由だ。
人を纏め、前衛として前を駆けるルイ。
圧倒的な火力でモンスターを倒す、ロゼッタ。
冒険に関する知識が深く、視野の広いカイン。
野生の勘はパーティ一、もふもふのネロ。
どんな強敵が現れたとしても、負ける気がしない。
「ほら、ご飯の支度するからロゼリーは薪を集めてきて」
「はーい!」
カインの指示に元気よく返事をし、ロゼッタはネロを連れて薪を集めにいく。
とはいっても、遠くには行かない。モンスターが出る危険があるので、仲間が見えなくなるところには行かないというルールだ。
ロゼッタが薪を集めていると、話し声が聞こえてきた。どうやら、近くに人がいるようだ。
(男の子の声……?)
今、ロゼッタたちがいるのはオークが出る深い森の中だ。近くに村はないので、冒険者が依頼かレベル上げで来ているのだろう。
だから別に、深く何かを考えたわけではない。どんな人だろうという、単純な興味本位でロゼッタは話し声のした方に目を向けた。
「もしかしたら、ギルドで見かけたことのある人かも――」
そんな風に、気楽に考えた。
が、ロゼッタの目に飛び込んできたのは、とんでもない人物だった。嫌な汗が、一気に噴き出す。
ロゼッタが見たのは、同い年の男の子が二人。
「まさか、こんなところで……攻略対象キャラクターを見つけるなんて」
――運が悪い。
いや、ゲームのファンとしては嬉しいことこの上ないのだが、素直に喜ぶことができない。
だって、彼らはヒロインと恋に落ち、ルートや選択肢によっては、悪役令嬢ロゼッタのことをその手にかけるのだから。
(今は、私と同じ一四歳だけど……)
ゲームでは、傲慢な態度でルイスリーズの隣に立ち、ヒロインをいじめるロゼッタは二人に嫌われていた。
国随一の魔法使い(になる予定の)、リュイス・アールグレー。
綺麗に切りそろえられた青の髪と、宝石みたいな黄緑色の瞳。内に宿る探求心はすさまじいものがあり、新しい魔法を生み出すほどのポテンシャルを持っている。
若き騎士団長(になる予定の)、ラインハルト・ルーデン。
燃えるような赤い長髪と、強さを秘めたアンバーの瞳。ルイスリーズの護衛騎士のポジションについており、攻略するとヒロインの護衛騎士になる。
主人への忠誠心はとても強く、剣を手にしたときの強さは圧倒的だ。
ゲーム開始前の彼らに出会えたことは純粋に嬉しいが、自分の立場が悪すぎる。なんと言っても、悪役令嬢なのだから。
(ここはそっと離れて――)
見なかったことにしよう。
そう、思ったのに。
パキッと、落ちた枝を踏んでしまい、音が鳴った。もちろん、それを聞き逃すリュイスとラインハルトではない。二人がこちらへ振り向く。
「誰だ!?」
「お前は……冒険者、か?」
ロゼッタがローブを着て杖を持っていることから、すぐに冒険者だと判断したようだ。二人の顔から、焦りが消えた。
そしてロゼッタも、自分がフローレス家の娘であると気づかれなかったのでほっと胸を撫でおろす。
「そうです、冒険者です。今日はオークの討伐依頼を受けて、この周辺で狩りをしていました」
「オークを? ……失礼だが、私たちと同じ年頃に見えるが……?」
一四歳のロゼッタがオークを倒したことが、信じられないようだ。しかし、ロゼッタはCランクだ。
初期レベルが10のリュイスとラインハルトと比べたら、天と地ほどの差があるのだ――。





