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パーティーメンバーに婚約者の愚痴を言っていたら実は本人だった件  作者: ぷにちゃん
第一章 悪役令嬢、死なないため冒険者になる!
19/67

19:初めての野宿

 ロゼッタ・フローレス(ロゼリー)・レベル32・HP1000/1000・マナ600/500+100

 装備:

 月夜と炎の杖

 属性に火が追加される。元々火属性の場合は、魔法の威力が1.5倍になる。マナの総量+100。

 魔法:

 初級闇魔法【ダークアロー】

 闇の矢を出現させ、ダメージを与える。

 中級闇魔法【ダークストーム】

 闇の風を出現させ、ダメージを与える。

 固有魔法【夜の化身】

 思い描いた化身を出現させる。出現させている間は、一分毎に10のマナを消費する。



「んっふふ〜、いい感じにレベルが上がった!」


 早朝にこっそり屋敷に戻ったロゼッタは、すぐに【夜の化身】を使い自分は夢の中へと旅に出た。

 そして目覚めたのは、夕方になるという時間だった。


「寝てる間はマナが回復するから、化身を出しっぱなしでも大丈夫なんだ」


 起きている間は、マナが尽きたら化身が消えてしまう。ちゃんと時間を確認し、定期的に残りのマナを確認するのがいいだろう。


「私のマナは600だから、だいたい一時間か……」


 自然に回復する分も考えると、もう少し化身を出していられる。しかし、マナを使って戦うので、定期的にマナポーションを飲む必要がある。


「一角ウルフのドロップアイテムを売ればかなりのお金になるから、昼間はマナポーションを飲みながら化身を部屋に置いておこう」


 そうすれば、ロゼッタは思いっきり冒険者をすることができるのだ。



 ***



 ロゼッタが化身を自室に残し、冒険をするようになって数ヶ月――貴族たちの間では、とある噂が流れていた。


 それは、『美しい、深窓の令嬢がいる』というものだ。


 美しい桃色の髪と、憂いをおびた優しい表情。刺繍をし、ときおり窓の外を覗くその姿がとても可愛らしい。

 馬車に乗って通りかかる貴族たちは、フローレス家にはとても素敵なお嬢さんがいると、そんな話をしているようだ。


 そんなことを知ってか知らずか、ロゼッタ本人は今日も楽しく冒険者をしている。




 ロゼッタが冒険者ギルドへ行くと、依頼掲示板にルイとカインがいた。なにやら、依頼書を手にとって話し合っているようだ。


「二人とも、どうしたの?」

「お、ロゼリー! ちょうどいいところに」

「確かに、この依頼は三人の方がいいかもしれないね」

「うん?」


 ルイとカインが見ていた依頼は、『ゴブリン村の殲滅』というものだった。

 場所はここから乗合馬車で半日ほど行った村で、その近くの森でゴブリンが大量に発生し村を作っているということだった。

 ゴブリン村は森を半日以上歩いた場所にあり、野宿をする必要がある。それもあって、パーティで受けることを推奨されている依頼だ。


「へえ、いいね!」


 ロゼッタはすぐに賛成し、自分も一緒に行く旨を伝える。


「村ができてるなら、ゴブリンもいっぱいいるし……レベルも上がってドロップアイテムもたくさん! かなり美味しい依頼じゃない!?」


 受けない選択肢なんてない。


「ロゼリーならそう言うと思ったよ。んじゃ、これは三人で受けるってことでいいか?」

「もちろん!」


 ルイが代表して依頼を受理し、パーティを結成する。


「よろしくね、カイン、ネロ。もしかして野宿のときは、ネロのもふもふで寝ることができたりしちゃう!?」


 ネロのもふもふした黒い毛に包まれたら、たとえ雪山でも快適に眠ることができそうだとロゼッタは思う。

 しかし、そんなロゼッタの考えはカインに一蹴されてしまう。


「ネロは周囲を警戒して寝るから、一緒になんて無理だよ」

「ええ、そんなぁ……」

「野宿を舐めてんの?」


 楽しい野宿というロゼッタの妄想は、一瞬でカインに打ち砕かれてしまった。さらに、依頼を受けてきたルイにも追い打ちをかけられてしまう。


「そうだぞ、野宿は大変なんだ。いつモンスターが襲ってくるかわからないから、なかなか寝付けないし、休めない。飯だって日持ちする硬いパンと、味気ない干し肉だぞ?」

「うぅ、せめてあったかいスープは……」

「あるわけないだろ、そんなもの」


 楽しくキャンプ、というわけにはいかないようだ。


(まあ、モンスターが出る森で一晩過ごすんだもんね、そうだよね)




 目の前には、湯気の出た温かなスープ。たっぷりの野菜と、森の中で捕まえたウサギの肉がたっぷりと入っている。

 そしてパンには野菜とベーコンが挟んであり、食欲をそそる。


「ルイの嘘つき――! あったかいスープがあるし、めちゃくちゃ美味しいサンドイッチがあるじゃん!」

「お、俺の知ってる野宿じゃない……だと!?」

「…………」


 騒ぐ二人を見て、カインはやれやれと息をつく。


「硬いパンを食べて硬い地面で寝るなんて、嫌だよ」


 そう言い切ったカインが、温かな料理を用意してくれたのだ。

 鞄から鍋を取り出し、少量の野菜を切り、あとは森の中で採取したきのこなどを具材にしてあっという間に料理を作ってしまったのだ。

 あまり美味しくないはずの干し肉も、カインにかかれば極上の肉になった。


(お嫁にきてほしい……!!)


 全力でそう思ってしまったのも、仕方がないだろう。


 逆に、ロゼッタとルイの料理スキルは壊滅的だ。

 嫌われている闇属性のロゼッタだが、食事はちゃんと用意されていた。自分で作る、ということは今までなかったのだ。

 ルイはまさに男という感じで、一手間を加えずそのまま食べれる食材を用意している。


「「カインがいてよかった」」


 これほどまで、このパーティでよかったと思ったのは初めてかもしれない。


「ほら、早く食べて。明日は朝から出発して、昼前にはゴブリン村に到着してる予定なんだから」

「そうだった! でも、カインの美味しいご飯を食べたら負ける気はしないね!」

「ロゼリーの火力はすごいからな……」


 なんて、楽しく雑談をする余裕もある。


(初めての野宿だから少し緊張してたけど、大丈夫みたいでよかった)


 ロゼッタはほっと胸をなでおろす。



 食事が終わったら、見張りの順番を決めて就寝だ。

 モンスターのいる森の中なので、夜中は焚き火を絶やさず誰かしらが寝ずの見張りをするのだ。


「んじゃ、最初は俺が見張ってるよ」


 まっさきに手を挙げたのは、ルイだ。


「なら、私は二番目!」

「俺が三番目だね」


 次にロゼッタとカインが申し出て、見張りの順番はすぐに決まった。一人二時間ほどで交代し、何かあったらみんなを起こして対応するのだ。


 カインは木の枝を利用して、あっという間にテントを張ってくれた。

 さらにハンモックをかけ、そこに横になり「おやすみ」とさっさと目を閉じてしまう。


「え、ハンモック!?」


 ロゼッタとルイは寝袋を持参していたが、薄い作りなので地面が硬いだろうと思っていたので、そんないいものがあったなんて! と、衝撃を受ける。


「そんなのがあるなら教えてほしかったー!」

「寝袋だと、起きたとき体が痛いんだよな……」


 二人でぶつぶつ言ってみるが、カインはあっというまに寝てしまった。この状況下で一瞬で寝てしまうなんて、ある種の特殊能力みたいだなとロゼッタは思う。

 そして寝袋を使った結果、地面が硬くて……ハンモックを買おうと思いながら眠りについた。

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