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パーティーメンバーに婚約者の愚痴を言っていたら実は本人だった件  作者: ぷにちゃん
第一章 悪役令嬢、死なないため冒険者になる!
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16:カインの拠点

「戦闘が強くても、酒には弱いんだな」

「そりゃあ子どもなんだから、仕方ないよ。カイン、お水飲める」

「うぅ……」

「駄目だ、完全に落ちてる……」


 ほかの客のお酒を飲み、酔いつぶれてしまったカイン。ロゼッタが水を勧めるも、寝てしまっていて飲ませるのは難しそうだ。

 幸い、コップの中身はほとんど減っていないので、そんなに呑んではいないようだ。


(めっちゃお酒に弱い体質なんだろうな)


 もちろん、まだ一二歳ということもあるけれど。


『くうぅ……』


 ネロがカインを見つめ、その頬をペロペロ舐めている。とても心配しているのだろう。


「ネロ、家の場所に案内できる?」

『わう!』

「わかるみたい、いい子」


 ロゼッタはネロの頭を撫でて、「よろしくね」とお願いする。

 すぐに会計をすませ、どうにかしてカインを運ぼうとロゼッタが肩を貸してみたのだが、うまく支えられない。


「俺がおんぶするから、ロゼリーは後ろから支えてくれ」

「ありがとう、ルイ!」


 ルイが軽々とカインをおんぶすると、ネロが『こっちだよ』と言うように歩き出した。ちゃんと家まで案内をしてくれるようだ。

 ほっと胸をなでおろし、ロゼッタとルイはついていった。



 そしてたどり着いた場所を見て、ロゼッタはあんぐりと口を開けた。


「え、ここがカインの家なの!?」

「そうみたいだな……」

「めっちゃ冒険者って感じ」

「お前は……」


 思わず目を輝かせたロゼッタに、ルイは苦笑する。


 ネロの案内で辿り着いた場所は、宿屋だった。

 そう、カインは家族がいる家に住んでいるわけではなく、宿を拠点とした冒険者だった。

 冒険者ギルドから15分ほど歩いたところにある、こじんまりとした宿。中に入ると店員がいて、ぐったりしたカインを見て驚いた。


「ちょっと、どうしたんだい!?」


 人のよさそうな女将さんが、何があったか心配そうに駆け寄ってきてくれた。酒場での出来事を説明すると、「そんなことかい」とホッとしている。


「モンスターにやられたり、毒か何か受けたのかと思ったよ」


 何事もなくてよかったと、微笑んだ。


「この子の部屋は二階の奥だから、連れてってあげておくれ。予備の鍵を渡すから、あとで返しにきてくれたらいいよ」

「ありがとうございます」

「ネロ、あんたは体を拭いてあげるからちょっと待ちな」

『わふっ!』


 宿屋を汚さないように、足の裏などを女将さんが洗ってくれるようだ。


「いつもはカインがやってるんだけど、今日は特別だよ。あんたたちは、先にカインを連れて部屋にいっときな」

「はい。すみませんが、お願いします」


 鍵を受け取り、ロゼッタたちは言われた通り二階の部屋へとやってきた。

 そこは長らくカインが借りている部屋のようで、生活感があった。といっても、日常生活に使う私物が少し置いてあるだけだけれど。


 ひとまずベッドへ寝かせ、ルイは水をもらいにいってくれた。


「ふぅ……」


 ロゼッタはカインにブランケットをかけてあげて、首元などを苦しくないようにゆるめてあげる。

 寝顔を見ると、酒場のときとは違って穏やかなものになってきている。


「よかった、大丈夫そう」


 もう少しして目が覚めたら、きっと水も飲めるだろう。

 カインと二人だけになり、ロゼッタは優しくカインの頭を撫でる。

 前世の記憶を持っているロゼッタは、こんな幼い子が一人で冒険者をして生計を立てなければいけないなんて……と、思ってしまう。


(まあ、私も人のことは言えないんだけどね)


「私でよければ、何か力になってあげたいなぁ」


 そんなことを、考えてしまう。


「ん……?」

「あ、起きた?」


 ロゼッタはカインの顔を覗き込み、前髪を掻き上げてあげる。部屋のランプが眩しかったのか、カインがわずかに目を細めた。


「……母さま……?」

「え?」


 ぽつりと溢れたカインの言葉に、ロゼッタは目を見開く。寝ぼけて、自分のことを母親と間違えたみたいだ。


(えっ、なにそれ弱ってるの? 絶対私が守ってあげるから……!!)


 思わず前世のアラサー心に火がついた。

 のも一瞬で、自分の失態に気づいたカインがぶわっと顔を赤くした。ロゼッタのことを母親と間違え、恥ずかしくて仕方がないのだろう。


「……お母さんだよ!」

「忘れろ!!」


 ロゼッタがいい笑顔で告げるも、カインに一蹴されてしまった。カインとしては、かなりの大失態なのだろう。


「最悪だ。頭も痛いし、どうしてこんなことに……」

「カインは間違えてお酒を飲んじゃったんだよ。今、ルイが女将さんに水をもらいに行ってるから――あ、戻ってきた」


 タイミングよく、水差しを持ったルイと、足を洗ってもらったネロが戻ってきた。


「お、目が覚めたのか。よかったよかった」

『わふっ!』

「……世話をかけた」

「気にすんな。ここにはネロが案内してくれたんだぜ。賢いな」


 ルイはコップに水を入れて、ネロはカインに飛びついた。


「ネロが宿まで二人を連れてきてくれたのか……ありがとう」


 カインはネロをもふもふ撫で回して、水を飲んだ。

 そんな様子を見て、ロゼッタはとあることを思いつく。


「ねえ、私たち三人でパーティを組まない?」


 突然すぎるロゼッタの提案に、ルイとカインが顔を見合わせた。二人とも、困ったような表情を浮かべた。


「楽しそうだけど、毎日時間を取るのは難しいんだよね」

「なんで俺がそんなことを……」

「そんなぁ……」


 めちゃくちゃいい案だと思ったけれど、ルイからも無理だと言われてしまった。


(いけると思ったんだけどなぁ)


 ロゼッタがしょんぼりすると、ルイとカインが少し焦る。元気いっぱいのロゼッタに元気がないと、どうにも調子がくるってしまう。


「えっと、俺は日程が合えば組める」

「……まあ、たまになら付き合ってもいいよ。今日は世話になっちゃったから」

「本当? やったぁ!」


 ということで、タイミングがあったときにパーティを組もう! という話に落ち着いた。

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