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パーティーメンバーに婚約者の愚痴を言っていたら実は本人だった件  作者: ぷにちゃん
第一章 悪役令嬢、死なないため冒険者になる!
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11:魔法使いの杖

 ウルフ討伐は明日ということになり、今日は解散になった。

 屋敷に戻ったロゼッタは、さっそくウルフ討伐の準備を行う。とはいっても、ポーション類を準備するだけだけれど。


「でも、自分で持ち運ぶには限界があるんだよね……」


 なぜゲームのようにインベントリがないのだろうと、ため息をつく。それか、魔法の鞄でもいい。無限にポーションが入るとまでいかなくても、せめて九九個くらい入ってほしい。

 そんなことを考えていると、ふと宝物庫の存在を思い出した。

 家のことにあまり関心のないロゼッタだが、この屋敷にそんな部屋が存在していることは知っていた。もしかしたら、魔法の鞄のようなアイテムがあるかもしれない。


(でも、勝手に持っていったら泥棒になっちゃうよね)


 父親――グラートにお願いしたら、貸してくれるだろうか。


(何に使うんだ? って聞かれたら、詰む……)


 借りるのも難しいかもしれない。


(だけど魔法の鞄だけじゃなくて、杖とか装備もあるかもしれないし)


 想像すればするほど、宝物庫に行きたくなる。

 しかし自分は嫌われている闇属性の娘。理由すら聞かずに却下されてしまうのがオチかもしれない。


「でもまあ、見るだけならいっか」




 フローレス公爵家の宝物庫は、地下にある。

 特に見張りはいないが、その代わり魔法で施錠がされている。開くには、フローレス公爵家の血があればいい。


「つまり、私にも鍵を開けることはできるんだよね」


 ロゼッタは指先を切って、血を一滴だけ扉の鍵穴につける。カチャリと音がし、扉の鍵が解除される。

 扉を開けて中へ入ると、二〇畳ほどの広さにたくさんの装備品や魔道具が置かれていた。


「すごい、思ってたよりいっぱいある」


 超激レアなお宝が数個あるだけかと思ったが、どうやら魔道具の類も一緒に保管してあるみたいだ。

 見回すと、ロゼッタがほしいものばかり。

 魔法使いの杖に、剣に、盾に、マナを上げるための装備品もある。これを手に入れられたら、間違いなく大幅に戦力アップができるだろう。


(うぅ、ほしい――って)


「これ!! ゲームで伝説の杖と紹介されていた『月夜と炎の杖』じゃない!?」


 どうしてこんなものが自分の屋敷の宝物庫に!? と、驚きを隠せない。

 ぜひ装備したい。


「この杖は確か、使うと炎属性が追加されるっていう説明があったはず」


 つまり闇属性+火属性。


「めっちゃ格好良くない?」


 使ってみたいという欲が、湧き上がってくる。そわそわしてしまう。


「ちょっと試すくらいなら、いいかな?」


 別に持ち出すわけではない。

 今ここで使うだけだ。


 ということで、ロゼッタは杖を手に取った。

 杖は羽のように軽く、手によく馴染む。いつもより、体の中にマナが溢れているような気がする。


「あ、ちょうどいいの発見!」


 部屋の片隅に、魔法の練習用の的があった。もしかしたら、ここにある装備や魔道具の試し撃ち用なのかもしれない。


(よーし、あれに撃ってみよ!)


「【ダークアロー】!」


 ドゴオオォォォン!


「ぎゃっ!」


 思わず品のない声をあげてしまったけれど、許してほしい。

 だってまさか、初級の魔法の威力がここまで上がるなんて思ってもみなかったから。

 さすがは伝説級の杖だ。


 見ると、天井付近に穴が空いて外の光が入ってきている。今はちょうど、夕方くらいだったはずだ。


「どうしよう……」


 ロゼッタがあわあわしていると、すぐに足音がして宝物庫の扉が開いた。


「何事だ!!」

「……っ、お父様!」


 普段ほとんど顔を合わせることのなかった父親に、ロゼッタは息を呑む。

 宝物庫にいるだけでも怒られるのに、無断で杖を使い、勝手に魔法を撃ち、宝物庫の天井付近に穴を開けてしまった。


(も、もしかして家から追い出されちゃう……とか)


 一気に嫌な考えが脳裏を巡り、杖をぎゅっと握りしめる。

 どうにかして、謝罪と言い訳を――そう思ったが、先に父親が口を開いた。


「ロゼッタ、お前……すごい魔法の才能があったのか!」

「えっ」


 怒られると思っていたのに、まったく予想外の言葉。思わず、ぽかんとしてしまう。


「あ、ああ、すまない。ロゼッタの持っているその杖は、使用者を選ぶんだ」

「この杖が、ですか?」

「選ぶといったら聞こえはいいかもしれないが、使いこなせる人がいないんだ。マナが暴走して、魔法が発動しない」


 だから魔法を使えたロゼッタはすごいのだと、そう言って褒めてくれた。


(お、怒ってはないみたい)


 そのことにほっと胸を撫で下ろす。


(でも、私が考えていた以上にすごい杖だったみたい)


 父親は、杖を持つロゼッタのことをじっと見つめる。

 ロゼッタは部屋で大人しくしていると思っていた父親は、娘の行動に驚いているのだ。

 魔法に興味があったことも、杖を扱えるほどの才能があったことも。


「…………」


 黙ってしまった父親を見て、ロゼッタも口を噤む。しかしすぐに、父親が口を開いた。


「ロゼッタが魔法を使いたいのなら……その杖の使用を、許可しよう」

「――! いいのですか?」

「ああ。とはいえ、闇属性はまだまだ世間から忌避されている。人前で使わず、屋敷の裏庭で練習するくらいであれば許そう」

「あっ、ありがとうございます、お父様!」


(今まで家族として気にかけなかったお詫びなのかも!)


 思いがけずに杖を手に入れることができて、ロゼッタはこっそりガッツポーズをした。

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