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クビ

「パーティーの編成を変えよう」


ギルド併設にされた酒場での反省会で「閃光の一撃」のリーダーのフィリッポは、メンバーにそう告げた。


(やっぱりか)


予感はあった。今日でトレンカダンジョンの山岳エリアの門番・地竜討伐を三回連続での失敗。幸い死者や重症はないもののパーティーの雰囲気は暗い。




「たしかに今の編成だと火力不足だもんねー」

エルフのヒーラー、ジャンパオロ(通称ジャン)が、手を頭の後ろにくみながら、そううそぶく。


「はぁ?!」

ジャンの言葉にダークエルフの弓使いアントネッラが、低めの声でにらみをきかす。


同じ火力枠(アタッカー)の魔法使いレッダは紫がかった黒髪をいじりながら、ジャンを見据える。


「いや、だってさ、地竜に集中出来てないのは、いつまでも取り巻きのワイバーンを倒せてないからでしょ?」

ジャンは説得するように続けるが、実はダークエルフであるアントネッラをからかってるだけだったりする。



このパーティーはトレンカダンジョンにおける最大枠の6人

そして火力枠は弓使いのアントネッラ、魔法使いのレッダ、リーダーで槍使いのフィリッポの3人で十分に火力は揃っている。



それでも、リーダーでアタッカーのフィリッポを含めての火力不足との非難だった。

つまりジャンの軽口であり、本心ではない。


仮に本心なら、ヒーラーであるジャンパオロが火力不足と断ずるということは、そこにエンチャント後に劣化アタッカーとして参加するオレへの非難が含まれている感じがする。




「そもそも短時間では突破出来ないのはわかっている。だのに、体制が崩れてしまうのは支援が・・・」

普段は口数の少ないオッタビオが口を開く。

壁役として、パーティーを支える盾持ちの獣人である。

その言葉は、口の軽いジャンと違い説得力が増すが、内容は支援枠の批判だった。


「ボクの回復は完璧だったよ!現に離脱者は出ていない!」

ジャンがすかさず反論する。そして、その言葉は正しい。


普段のジャンはヒーラーとして、6人の状態を見ながら、立ち回っていた。

しかし、地竜戦ともなると壁役のオッタビオに集中してしまうのはしょうがない。


そこをフォローするのが、サブヒーラーとして立ち回れるエンチャンターのオレだ。

だが今回はその余裕がなかった。

余裕が足りなかった。


オッタビオの言葉は、メインヒーラーのジャンパオロではなく、サブヒーラーだったオレへの不満だろう。




「ていうかぁ、あのワイバーンがねぇ、邪魔でねぇ。」

魔法使いのレッダがぼやく。


地竜の取り巻きのワイバーン。

壁役のオッタビオが地竜に専念しているため、ワイバーンを引き付けるのは、オレの役目だった。


防御力が優れる順番は、もちろん壁役のオッタビオが一番。次が近接アタッカーのリーダー・フィリッポ。三番目がオレだった。


空が飛べるワイバーンを引き付けるスキルがオレにはあったのも大きい。


だが、魔法の一発や二発、弓の一撃や二撃で落ちるほど、ワイバーンは弱くなかった。そのためワイバーンの注意は、オレにとどまらず魔法使いのレッダや弓使いのアントネッラに向かってしまった。


つまりは、壁役の補助であるオレへの愚痴である




「や、やっぱりまだ早かったんだよ。」

とりあえず流れを切るように言ってみた。

「もう少しさ、山岳エリアの中腹辺りで連携とかスキルを磨いて」

全ての反省がオレに向いているのに耐えられないこともあり、少し早口になっている。


そんな焦りを察して、リーダーのフィリッポが首を横に振りながら言う。

「ザップ、編成を変えると決めたんだ。」


予感はあった。イヤな予感だ。


「オレ達は先に進みたいんだ。そして、その力はあると判断している。」

鋭い目付きで、フィリッポが続ける。

「なのに進めないのは、君の現状維持のまま、問題を先送りしようとする姿勢にあると思う。」


そして、オレを見据えて

「ザップ、いやザパタ。君にはこの閃光の一撃を離れてもらう。君はクビだ。今までありがとう。」

そう告げた。

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