表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

浦島太郎

彼は夢を抱きながらも

それを半ば諦めながら

生まれ故郷で

平凡な毎日を送っていた


パッと目を引く容姿ではないが

優しく穏やかな恋人もいて


いずれは家庭を築き

ありふれた幸せに

埋没するはずだった


そんなある日

偶然の出会いが

彼の運命を変える

彼の夢の先にいる

第一人者が

彼の才能に目を留めたのだ


『こんな田舎で

頑張っても先が知れている

本気で才能を伸ばしたいなら

都会に出てみるべきだ』


憧れの人のその言葉に

彼は生まれ故郷から

旅立つ決意をする


『俺は必ず成功して

ここに戻ってくる』


行かないで欲しいと

泣いて引き止める恋人に

そう告げて彼は

都会へと出て行く


夢を追いかける日々は

苦しくとも

充実した毎日


更に都会の

華やかな生活は

彼に故郷を忘れさせる


そしていつしか

見ていた夢は現実となり

走り続けてきた彼は

ある日ふと立ち止まる

思い出すのは生まれ故郷と

そこに置いてきた恋人


『そうだ

今こそ帰ろう

そして彼女を迎えに行こう』


決心して故郷に帰った

彼が見たのは

知らない男と

平凡だが幸せな

家庭を築いている

彼女の姿だった


彼女は懐かしさと

幾ばくかの苦さを湛えた瞳で

彼を見つめて言う


『私にもあなたにも

同じだけ時間が流れているの

いつ果てるとも知れない

待つだけの日々は

私には長すぎたわ』


彼女の言葉に

彼は初めて

故郷を離れてからの

時間の長さを知るのだった

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 切ないながらも恋愛の本質ついてる物語だなあと思います。 幸せの定義って人によって違いますけど、定義が違うもの同士が恋愛するとすれ違うという典型ですね。 文章の雰囲気もあって、とても好きです。…
[良い点] あー、これは、切ないけどわかります。なんか浦島太郎の深い意味を除けた気がします。 小さな幸せでいいんです。その人がとなりにいればよかったんです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ