ピースがハマる
頭の中に、浮かぶ映像……それはまるで、テレビの映像にノイズが走っているように、途切れ途切れに映像を映す。
それは、俺が……仮刀 神威として、生まれ変わる前のもの。それも、俺がいじめられる前の……クラスでいじめられていた、海音という少女を映したものだ。
これは俺の視点……だろうか。彼女がクラスメートにいじめられ、うつむき、涙を流している。……俺の、目の前で。
これは、おかしい。俺は、傍観者だったはずだ。海音がいじめられるのを、黙って見ていただけの……遠巻きに見ていただけの、一人に過ぎないはず。
なのに、目の前にいる少女は確かに、海音で、泣いていて……クラスメートがケラケラ笑っている姿が、視界の端に移るだけで。
同時に、聞き覚えのある言葉が、頭の中で話される。
『彼、死ぬなら絶対自殺だって思ってたのに、まさか他殺だなんて』
それは……いつだったか、クラスメートの歩乃咲 結可里が言っていた言葉。あの女は直後に殺してしまったため、真相は聞けずじまいであったが……
彼、とはつまり俺……生まれ変わる前の、俺だ。俺の中の記憶では、俺は自殺していたはずだ。なのに、あいつは他殺だと、言っていた。
二つの、わからない要素が……頭の中を、巡っていて……
「う、うぅ……」
思わず頭を押さえ、その場に膝をつく。これは、先ほど背中を刺された痛みによるものではない。頭の中を、ぐちゃぐちゃしているものが……
『まさか他殺なんて……』
『ねぇ……人殺しさん』
『他殺』
『人殺し』
「人殺し」
「!」
顔をあげると、そこには……綾平が立っていた。人殺しと、先ほどと同じ事を言っていて。
「思い出しなよ、あなたがなにをしたのか……あなたを殺したのは、誰なのか」
まるでなにかの暗示のように、俺の頭の中にその言葉が入ってくる。それは、俺の中の……忘れていた、記憶を呼び覚ましていって……
『おいなに突っ立ってんだよ』
『ほんと暗いよなお前、毎日楽しいわけ?』
『あーあー、荷物ぐちゃぐちゃになってんな、くせー女』
『あはははは!』
『なー、笑えよ、う、み、ね』
記憶の中で、海音というクラスメートをいじめている人物の声が、聞こえてくる。ゲラゲラと、耐えようもなく下品な声が。
この声は……いや、そんなわけ……でも、聞き間違えるはずがない。自分の、声なんて。
「……海音をいじめてたのは……俺……?」
記憶の中で、なにかのピースがハマったような気がした。
「お姉ちゃんの名前を気安く呼ぶなよ、人殺し」
「ぁ……」
「はぁ……もしかして、自分はお姉ちゃんいじめに加担してない、傍観者の一人だとでも思ってた? 違うよ……加担どころか、主犯だよ、お前」
俺が……海音を、いじめてた……主犯? なんだよそれ、どういうことだよ……
俺の元々あった記憶と、まるっきり違う。なのに、なぜかすんなりと受け入れられる部分もあって……
「だから、私が殺した……なのに、生まれ変わって、また戻ってくるなんて。意味がわからないよ」
「……は?」
今、なんて……私が、殺した? まさか、俺が他殺だっていうのは……綾平に、殺されたってことなのか?
そして今、また……俺の、ことを……
「お姉ちゃんを殺しといて、被害者面をして……逃げ切れると、思うなよ」
殺意が、向けられる……




