この人殺しが
「で、さっきの質問の答えだけど……」
「質問?」
「したでしょ」
綾平の言葉に、なにも言い返せなかったところでへ……重ねるようにして、綾平が話しかけてくる。
それは、先ほどの質問の、その答えを言うというもので……
『ならなんで、俺に正体を明かしたんだ? 単に協力したいってだけか?』
「あー……」
確かに俺は、直前に質問をしていた。質問にたいして返ってきたものがあまりの迫力でわすれかけてしまっていた。
今のやり取りではぐらかさないあたり、やはり綾平にはなにか目的があって……?
そうやって考えて答えを出そうとするよりも、綾平が口を開くのが早い。
「協力……協力、まあ、そうかもね。一応キミには、私のことちゃんと知ってもらいたかったし」
「知って?」
「そ。キミがクラスメートを殺すのは……私と一致してる。そうでしょ?」
互いに共通するのは、海音を死に追いやったクラスメートに復讐する、ということ。その点で、俺と綾平の利害は一致している。やはり、綾平もそう考えている。
ならば、互いに協力すればもっとスムーズに、クラスメートを殺していけるはずだ。これで……
「……ん、どこだここ」
ふと、周りが見覚えのない景色であることに気づく。話し合い、考え事に夢中で、周囲をよく見ていなかったか。
ここはいつも通る場所ではないな。周囲には人通りもあまりないし……というか、建物もあまりない。空き地のような場所だ。
考え事に没頭していたとはいえ、ここに来るまで気づかなかったとは。
「あー、知らんうちに変なとこまで来ちまったみたいだな。ま、いいや……とにかく綾平、お前との協力関係は成立ってことでこれからもよろしく……」
ドスッ……!
「……ぁ?」
……なんだ、今……背中に、衝撃が走ったような……
辺りを見回して、綾平に改めてよろしくしようとしていたところだ。それが、急にどうして……
体から力が、抜けていく。立っていられない。膝をついてしまう。
「……やぁっと、油断してくれたね」
「綾、平……?」
後ろを向くと、そこには……当然のように、綾平が立っていて。右手に、血のついたカッターナイフが握られていた。
……血のついた、カッターナイフ……?
「お、まえ……なにを……?」
「大丈夫、急所は外してるから。死にはしないよ、まだね」
なんだ、とうして……なんで綾平が?
「なんで……こんな……」
「なんで? それはこっちの台詞よ……この、人殺しが!」
向けられるのは、とんでもなく強い憎悪……なんだ、なにが、起きている?




