表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/34

殺してほしい人がいる



 この女、緋美也(あけみや) 来音(らいね)は……可愛い顔して、とんでもない悪魔だ。



「実はね、最近、私ストーカーされてるんだ。そのおじさんの視線が、気持ち悪くて気持ち悪くて……もう、家の場所まで知られてるんだよ、信じられないよね? このままじゃ私に危害が及ぶかもしれないでしょ? だから、そうなる前に……殺したいの」



 殺してほしい人がいる……その対象と理由を、緋美也 来音は口早に言うが……その内容に、俺は衝撃を受けた。だってそうだろう。



「えっと……警察とかじゃ、だめなのか?」



 そう、だってこれは……殺してまで解決するべき案件には、思えない。決して、ストーカーを援護するわけではないが……それでも、それだけの理由で、人を殺そうという考えに至るのか?


 無論、俺が人殺しについて語るつもりはないが……少なくとも、こんな簡単な問題じゃないだろう。しかも相手は、ストーカーとはいえ見ず知らずの人間だぞ?



「ふ、ふふ……」



 そんな俺の気持ちとは裏腹に、緋美也 来音は突然笑い始める。



「やだなあ、神威くんったら。どうせ警察に話しても、私がなにかされたわけじゃないんだし、まともに取り合ってくれるわけないじゃん。警察は、事件が起きてからしか動いてくれないの……せいぜいが、接近禁止命令とかでしょ? でも、そんなの守る人がストーカーになるわけないじゃない。それに、私になにかあってからじゃ遅いでしょ? だから、なにか起きる前に、自分の手で対処しなきゃ」



 と、先ほどと同じように口早に話すが……すごいな、言ってることはわりと正論なのに、だからといって行動するのが正しいものであるとは、全然思えない。


 こんな美少女からこんな物騒な話が出ているからなのか……それだけではない。目が、ヤバい。まるで禍々しいなにかでも出ているように、狂気を感じる。


 俺に断る選択肢はないが、仮に断れたとして、その瞬間俺も殺されるんじゃないか? 俺は男でこいつは女……単純な力勝負では負けないだろう。が……


 なんだ、この女から感じる、とてつもない不気味さは。これまでに何人もクラスメートを殺している俺だが、この女からは人殺しの俺とはまた違った不気味な感じがする。



「神威くんなら、この気持ちわかってくれると思ったんだけど」



 ……この女は、どういう経路を使ってか知らないが俺がクラスメートを殺していることを知っている。だが、さすがに俺が、生まれ変わったなんてことはわかるはずもないだろう。


 だが……もし、俺がクラスで以前いじめられていた男の生まれ変わりだと話したとして、この女の場合すんなり信じてしまいそうなのが怖いな。



「……さっきの話で、俺が協力しない流れにならないのはわかってるだろ」


「わー、まだ認めないんだ。ま、いいけど」



 オレがクラスメートを殺した……それは、この女の中ではまだ推測のはずだ。それを話された時点でまずいのは内容が内容だからであって、その事実の真偽は緋美也 来音の中ではどうでもいいのかもしれない。


 しれないが……だからといって、俺自身の口から人殺しを認めたんじゃ、状況は悪化する気がする。


 緋美也 来音は俺の秘密(ひとごろし)を知っている。だからといって、素直にそれを認めてやる意味はどこにもない。



「じゃ、ひとまず連絡先交換しよっか! 振るやつやろうよ!」


「悪い、俺携帯持ってないんだ」


「えー?」



 この女と個人的に連絡先を交換するのはまずい……と思っているのは事実だが、これは本当。俺は仮刀 神威に生まれ変わってから、生活するための住まいを与えられはしたが……それだけだ。


 連絡手段など、固定電話しかない。買えばいいのだろうが、復讐でそれどころじゃない。



「なーんだ、せっかく二人きりの殺人連絡できると思ったのに。ま、ネットは痕跡が残るからやめたほうがいいかー」



 ……この女、携帯のメールとかで人殺しの作戦会議でもするつもりだったのか? 本気ならヤバいが、冗談に聞こえないのが怖いところだ。



「ま、いっか。こうして直接会って話せばいいんだし……会える機会が増えるってことだもんね!」



 と、緋美也 来音はぐいっと顔を近づけてくる。その整った顔に、ほのかに香る甘いにおいに、本性を知らなければ俺でもクラっと来たかもしれないが……


 今は、なにも感じない。ただこの女が、恐ろしい。



「で、なにか考えがあるのか。ストーカーとはいえ、見ず知らずの人間を殺すなんてなんの考えもなしじゃ……」


「ふふ、その乱暴な喋り方嫌いじゃないよ。心配しなくても大丈夫……ちゃんと考えてあるから。でも、ここじゃなんだし……後で、待ち合わせしようよ」



 今更そんな心配をするのかこいつは……用心深いのかそうでないのか、大胆不敵なのかそうでないのか、よくわからない奴だ。


 緋美也 来音は、俺にそっと耳打ちをしてから……背を向ける。待ち合わせ時間と場所を伝え、そこに集合しようというのだ。俺のことを人殺しとわかりながら無防備に背を向けるのは、学校じゃ大胆な真似はできないと思ってか。


 ……決めた……次の殺害対象(ターゲット)は、この女だ。俺の秘密を知る人間を野放しにしておくわけにはいかないし、それがなくても危険な人間だ。邪魔になりそうなら、優先して排除する。


 そう決め、出口に向かう緋美也 来音の背中に続き、俺も歩みを進める。


 ……そこへ、緋美也 来音が急に振り返り……こう言った。



「あ、そうそう。馨子(かおるこ)ちゃんを殺したのは、神威くんじゃないのはわかってるからね」


「……は?」



 俺が頑なに認めなくても、この女の中でもう俺は人殺しで確定しているらしい……が、それはこの際もういい。今この女は、なんて言った?


 馨子ちゃんを殺したのは、だと? 萩野宮 馨子は今朝、先生から自殺が伝えられたクラスメートだ。俺は関与してないし、言ったいた通り自殺なのだと考えていたが……



「おい、それ……」



 どういう意味だ。思わぬ言葉に足を止めてしまった間に、緋美也 来音は屋上を出ていってしまい、扉が閉まる。すぐに追いかけるために扉を開けるが……そこに、緋美也 来音はすでにいなかった。


 ……どういう、意味だ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ