王都
ゆっくりとその大きさを表すかのように、その扉は開いていく。
「つ、着いた」
「ようやく着きましたね!いやー大きい門ですね!」
門をくぐると涙がこぼれそうになる。
そこには今まで見たこともないような大きな建物や、色とりどりの果物を売っているお店などがあった。
「もう二度と、旅はしない」
「旅って大変なんですね!カラスにさらわれた時はもうダメかと思いましたよ!」
「いやもっとヤバいこと色々あったろ!」
「おい坊主。漫談はいいがそろそろ入るぞ」
「あ、分かりました」
王都まで乗せてくれた御者のオッチャンに促され前を見る。
「驚いて腰抜かすんじゃねえぞ」
「はは、どうでしょ 「うわー凄い!」 あっ、おまっ、ズルイぞ!」
てかお前俺に背負われてるのにどうやって見たし。
「フフフ。これぞ私の数ある機能のその一つ。鳥瞰視点ですっ!」
「お前剣じゃないだろ」
「どこかどう見ても剣以外のなにものでもないでしょうっ!」
「ああ、はいはい。そうだな、お前は立派な剣だよ」
「わかればいいんですよ!」
チョr・・・、やめとこう。
こういうこと考えると高確率でなぜかバレるし。
「マスターがわかりやすいんですよ?」
「な、なっ、なんのことだ?」
「いえなんとなくそう言いたい気分でした」
何も考えないようにしよう。
「さて坊主。俺は悪いが店の方に顔を出しに行くからよ。ここいらで降りてくれるか?」
「ん?ああ了解。でもオッチャン本当に助かったよ。ここまで乗せてくれてありがとうございました」
「あん?どうした急に殊勝になって」
「感謝はきちんと言葉にしなさいってのがうちの教えでね」
ロクでもない親であるが言ってることは間違ってなかったし。
ちなみに俺は親が礼を言うところを見たことがない。
親の口癖は俺のようにはなるなよ、反面教師にして器の大きい男になれよとのことだった。
反面教師だからって何してもいいと思ってんじゃねぇぞ、あの野郎。
「そうかいそうかい。ならありがたく受けとっとくよ。それに俺も坊主が強いお陰で護衛の冒険者を雇わなくて済んだからな。感謝してるぜ」
「いやまあ護衛は安全のために雇ったほうがいいと思うけど。あ、最後に学園の場所教えてくれないか?」
「ん?ああ初めてなら分からねぇか。よし、じゃあよく聞いとけよ」
「ああ、助かる。ありがとな」
「こんぐらい気にすんなって。そんじゃいくぞ。
まずこの大通りをまっすぐ行って三つ目の角を左に曲がり道なりに進むと『ガルシア古書店』って本屋があるからその手前を右に曲がってだいたい500mも行けば突き当たりにぶつかるから右の道に進んで少し行って右手側に薬屋の『エルキド』が見えるところまで行き手前側の上り階段を上がって行くと『タンブリア通り』に出るから武器屋の『バルカン』を左に抜け防具屋の『アダマント』の奥の小道に入って道なりに進めば大通りに出るから
そこをまっすぐいけばすぐだぜ」
「ん、分かった。
まずこの大通りをまっすぐ行って三つ目の角を左に曲がり道なりに進むと『ガルシア古書店』って本屋があるからその手前を右に曲がってだいたい500mも行けば突き当たりにぶつかるから右の道に進んで少し行って右手側に薬屋の『エルキド』が見えるところまで行き手前側の上り階段を上がって行くと『タンブリア通り』に出るから武器屋の『バルカン』を左に抜け防具屋の『アダマント』の奥の小道に入って道なりに進めば大通りに出るから
そこをまっすぐいけばすぐなんだな」
「なんとも道を間違えそうですね。ですがご心配なく、わたしの機能でしっかり録音しときましたからいつでも聞けますよ!」
「俺も覚えてるから大丈夫」
「まあ、分からなくなったらここに戻ってくるといい」
「そうですね、ここからもう一度聴きながら進めば」
「この大通りをまっすぐいきゃすぐだからな」
「上等です!喧嘩なら買いますよ! マスターが‼︎」
「買うの俺かよ!」
「当然でしょう?わたしに買えるわけないじゃないですか?剣ですから!」
「おい。んじゃあ俺は店いるからな。なんか用あったら顔出してくれ。大抵のものは用意するぜ。ゲオルの親父に用事があるっていえば通じるからよ」
「おっちゃんの店はどこだよ」
「あん?それだよ」
門のそばにある大きな建物を指す。
「いや、そこかよ!」
「おう、じゃあ坊主。またな!」
「あ、ああ。じゃあなおっちゃん」
なんとも豪快な親父だな、あいつ。
さて、この後はとりあえず
「あれ?マスター喧嘩買わないんですか?もしくは売らないんですか?」
「ん?いや売るつもりだぞ。とりあえずおっちゃんに教えてもらった『バルカン』に行こうぜ」
「分かりました!」
・・・「アレ?『バルカン』ってなんのお店でしたっけ?」