俺たちの旅はこれからだ!
魔王がいて、勇者がいて、神様がいて、そんな様々な存在が乱立する世界。
ここに、新たな物語が始まる。
15になった年、俺は村を出ることになった。
王都にある学園に特待生で通うことになったのだ。
金のない村では自立できそうだし食事も要らなくなるしでちょうど良かったのだろう。
俺が出ていくときにはちょっとした宴までしてくれた。
村を1人で出るときは不覚にも涙が出てしまった。
みんな二日酔いと寝坊で誰1人見送ってくれなかったし。
そんな俺についてきてくれるのは
「まあまあ元気出しましょうって!これから新生活なんですから!」
この不思議な喋る剣だけである。
「というか私は剣でして、あなたが装備してるんだから自主的についてきてるわけじゃないですよ?」
「急に厳しくない?」
「あなたはこの聖剣211039号をあの大木から抜いたのです!甘えは許しませんから!まあ先ずは新たな門出を祝福しましょうよ!」
この自称聖剣はなんか故郷の森の近くの木に刺さってたところを13歳だった頃の俺が抜いたものだ。
あの日のことは今でも覚えている。
俺の13歳の誕生日を村のみんなが祝うためにみんなに言われて、材料を集めに森に入った時だった。
そう、パーティーの主役である俺が働かされていたのだ。
しかも集めてきたものは俺が食う前に味見と称して、俺が作ってる横で食い荒らされた。
俺にとって非常に忌まわしい記憶だが、絶対に忘れてたまるか。
話が逸れた。
そう、こいつは俺が材料を集めに入った森の奥で木に刺さっていたのだ。
まあ確かにでかい木だったけど倒れてたし、腐ってたし、シロアリに食われたから俺が抜かなくてもなんか抜けてた気もするけど。
ちなみに剣を持ち帰った為、普段より獲物が少なかった俺は叱られた。解せぬ。
てか最初この剣が汚らしかったのも悪いんだよな。
なんかキノコ生えてたし、なんで剣にキノコが生えるんだよ。
「アレは私の溢れる聖なる力が温床になり生命を育んでいたのです」
生えてたの毒キノコだったけどな。
「うるさいですよ!だいたい私ほど装備者に恩恵をもたらす剣なんか他にありませんよ。・・・だから売るのはやめてくださいね?」
確かにこいつはすごいと思う。
ただこいつの機能を思い返すと、なんていうか、
「聖剣っていうか便利グッズ?」
「だ、誰が便利グッズですか⁉︎」
いやだって・・・。
「私ほど機能を積んでるものはありませんよ!剣身は使用者の意志で熱することも冷やすこともでき 「暑い時や寒いときは重宝してる」 持っているだけで魔法が使えますし 「家庭魔法だけだけど使えると便利だよな」 溢れ出る聖なる力は心を穏やかにし 「お前のおかげで最近すごい寝やすい」 何よりも喋れます! 「朝起こしてくれるのはほんと助かる」 ええいさっきからうるさいですよ!」
「おまえって、痒い所に手が届く剣だよな」
「形状変化もできますからね!」
「そういう意味じゃないんだけど。てか剣で搔くのはいいのか」
「・・・いやダメですよ!絶対やめてくださいね!」
まあでも実際のとこ、
「やっぱ聖剣らしくはないよなぁ」
「まだ言いますか!」
そんなことを話しているとふと思った。
「なあそういや毎度思うんだけどなんで211039号?」
聖剣はあと211038本もあるのだろうか。
いやだなぁ聖剣が20万本もあるって。
「私の様々な機能の総数ですよ!」
「マジで?それは凄いな!」
「え?あ、ああ当然でしょう!」
「本当なんだな」
「え、ええ」
「これから1つずつ数えていく」
「うぇ⁉︎い、いやそれは大変ですから別に全部試さなくとも・・・」
「いや、これもおまえにふさわしい剣士になるためだ。きちんと数えていこう」
「そ、そんなに私のことを思ってくれるなんて。じゃなくてっ!で、できれば私も大変だしやめてほしいなーって」
「いや、やらなきゃならない。まさか嘘ってことはないだろう?」
「え、ええーと、その」
「いや、別に嘘だとしても責めやしないさ。ああ、もし嘘だったとしてもすぐ本当になるからな。おまえは綺麗に飾られ、俺は懐に恩恵を受ける」
「それ売るってことですか!?売るってことですよね!?」
「ハハハ」
「いや、答えてくださいよ!?」
「で、本当なんだな?」
「・・・えっと、その、ごめんなさい」
「え?聴こえないなー」
「ごめんなさい!嘘です!そんなに機能はありません!正直に言ったので許してください!お願い、だから売らないで!売らないでくださいー!」
剣が伸び、温まり、水を出し、風を起こし、他様々な機能が勝手に出始める。
「うわ!うるさっ!売らない、売らないから!売らないからおさまれって!」
「ほ、ホント?」
「悪かったよ。からかいすぎた」
「・・・許します。私も嘘ついてすみませんでした」
「よし。これでこの話は終わりだな」
「はい、そうですね!せっかくの門出なんです。晴れやかに行きましょう!」
「だな」
1人と一本は王都へと進み始めた。
このコンビが何をするか。
それはまだ誰も知らない。
「そういやぁ、結局何でおまえそんな名前なんだ?ホントに211038本他にあるのか?」
「違いますよ。私を作った人が言ってたんです。『俺は、なんてものを作ってしまったんだ。これは正に、211039聖剣だ!』って」
「ふーん」
「自分から聞いといてなんなんですかその反応は!」
「思ったより面白い理由じゃなかったから」
「まったく、マスターはしょうがないですね。剣に面白さを求めてどうするんですか」
「・・・お前が言う?」