零話
ザーザーと止む様子を見せない雨。
そんな中、雨に打たれながら男が立ち尽くしていた。
「チッ!何だって俺はこんなとこにいるんだか」
男はそう呟きながら空を見上げる。
曇天、まるで天が落ちるかのような雨が顔を、身体をうつ。
それは、否応無しに男が一人であることを自覚させた。
そんな中、男はふと気づく。
「おぎゃあー!おぎゃあー!」
少し歩くと、雨降りしきる中一人の赤ん坊が泣いていた。
「おいおい、何だってこんなとこにガキがいんだよ」
辺りを見回すも、周りは建造物は愚か、人の気配一つ感じられない。
そもそもここは人が生きれる環境ではないのだ。
そしてこのあたりに人が住んでいたとも聞かない。
男がたどり着くと、赤ん坊は泣くのをやめ、彼の顔を見つめた。
「まあ、どうでもいいか。じゃあなガキ」
男は、そのまま歩き去っていく。
「おぎゃあああ!おぎゃあああ!」
男が早足で戻ってくる。
「うるせーっ!俺はガキが嫌いなんだよ!」
そう怒鳴るが赤ん坊は顔を見つめキャッキャッと笑い出す。
「何がおかしいクソガキ!ええい、いいか。絶対泣くんじゃねえぞ!」
そう凄むも赤ん坊はニコニコと笑い続ける。
「ふん」
男が再び歩き去る。
「おぎゃあああああああ!おぎゃあああああああ!」
「うるせーっ!」
「なんだ?喧嘩売ってんのか?あぁ?このガキぃ!」
「きゃっきゃっ!」
「いいか、泣くな!泣くんじゃねぇぞ!」
「きゃっきゃっ!」
「よし、よーし、そのままだ。いいか?泣くんじゃないぞ」
「きゃっきゃっ!」
「ふっ、やるじゃないか。じゃあな。あばよガキ 「おぎゃあああああああああ!」 だぁー!?」
しばしそこで男はしゃがみこみ頭を抱える。
「ああっ、くそっ!」
ガシガシと男は頭を掻くと、乱暴な手つきで赤ん坊を拾い上げる。
「ハッ!俺に音をあげさせるなんざ大したガキだなテメエは!クソッタレが!!」
そうして男はその場を去っていく。
いつの間にか雨は、上がっていた。