蝶の羽ばたき
世界は移り変わっている。一分、一秒、刹那のその時まで変わり続けている。
その変化の中で、何かをすれば世界はそれに応える。歩き出す脚、呼吸のペース、視線を逸らす、会話する、気にも留めない些細なやり取りですらこの世界は応えてしまう。あなたと毎日通うこの道程、他愛もない話で盛り上がる放課後、帰り道で別れるその時まで、何気なくしたことがすべて返ってくる。
あの日あの時、蝶が羽ばたいた位の些細な忘れ物。少しばかり忘れたそのことが、この結果に含まれているのだったら、後悔してもしきれない。あの時言えなかったあの言葉が、あのタイミングで行動に移せなかった意気地無さが、あの人を取られたきっかけだったのならば。
誰もいないこの部屋で、こぼれ落ちた雫に世界が応えてくれるなら、どうかこの悲しみを掻き消すだけの変化が起きますように、私の不甲斐なさを笑い飛ばしてくれる人が現れますように。