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七話 人は、かつての英雄の剣であろうと利用し尽くし、そして棄てる。

かなり期間が空いてしまい申し訳ございません。

「う.....ぐ.....」


俺は真っ暗な空間で目を覚ます。


「ここは......」


辺りを見回すが何も無い。

只々暗闇が続いているだけだ。


俺は一体......

そう、たしか奴を倒した後に棒切れ.....いや、剣に触れた途端気絶した....?


「一体何が.....」


「やあ、ボクの世界へようこそ。」


「!?」


突然の声に俺は驚き、背後を振り返る。

すると、そこには一人の少女が立っていた。


黄金色の髪を腰まで伸ばし、白いワンピースを着ている。

歳は、15くらいだろうか?


「ここは.....?それにお前は誰だ......?」


「むかーしむかし、あるところに、一人の剣士がいました。」


「は?」


突然、少女はそう言い放つ。


「その剣士の剣裁きは正に天下無双の如く。様々な称号を欲しいがままにし、彼が一つの国を治めると、世界中から戦争が消えたと言います。」


「一体なんの話だ.....俺が聞いてるのh__「彼は二本の剣を振るっていました。一本は雷を帯び、もう一本は風を帯びていたと伝えられています。」


その少女は俺の言葉を遮ってつづけた。


「そして、彼はその身だけで神の領域にすら到達し、最弱の種族人種でありながら剣の神に成り上がりました。その神の名は____」


「ヨハン......誰でも知っているような伝説だ。一体何故そんn___」


俺が言いかけたところで少女は指を立て、俺の言葉を再び遮る。


「まだ話は終わってない。」


「・・・」


少女は黙り込んだ俺を見て微笑み、再び続ける。


「しかし彼が神に成り上がると、『ヨハン』という抑止力を失った世界は再び戦争を始めます。各地で戦争が起きました。当時、彼が治めていた国の王はヨハンに最も信頼されていた人物であった騎士長でした。しかし、複数の大国に攻められ、数週間でその国は陥落します。親友が治めた国を陥された怒りによって、騎士長は親友、ヨハンの剣を握りました。」


少女は少し俺を観察し、また続ける。


「ヨハンに次ぐ剣の腕を持っていた騎士長はその剣を使って様々な国を陥していきます。当時の彼にはもう昔のような穏やかさや騎士道の心は存在しませんでした。やがてヨハンの国を陥した全ての大国を陥落させた彼は気付きます。『自分がこんな事をした所で天界で自分を見ている親友が喜ぶはずが無い。むしろその逆だろう』と。そして彼は親友の剣が二度と汚されぬよう、それぞれ別の場所に隠し、自害しました。」


ここは初めて聞くな....


「そして、その剣の一つの名は.....雷電。」


「___一体何が言いたい?早くこの状況を説明しろ。ここは何処で、お前は誰だ?」


「だからボクの正体は明かしたじゃないか。」


「......は?」


何を言っているんだこいつは?


「雷電。それがボクの名だよ。」


「雷....電?___馬鹿な、お前がヨハンの使っていた宝剣とでも言うのか?」


「そうだよ。」


そう言い、少女は微笑む。


「じゃあその証拠を__「証拠ならあるじゃないか。」


少女は俺の言葉を遮り、そう言う。


「どこに.....?」


「まだ気付かないの?ハァ.....仕方ないな。まあいいか。___魔剣くらいは知っているでしょ?」


「・・・」


「面倒くさい奴だな.....まあ、それはOKであると受け取っとくよ。魔剣には聖剣同様、精霊が宿ってる。その精霊は聖剣と同じ様に、固有結界を張れる。ここがそうだよ。」


魔剣.....召喚魔法の一種だ。

闇精霊の宿った特殊な剣で、決して切れ味が落ちず、宿っている闇精霊が死亡、あるいは失踪しない限り絶対に破壊されないことが特徴だ。


また、自身の血を刀身に垂らすことで属性付与(エンチャント)を行うことが出来る。付与される属性は各武器に異なるが、全てとてつも無い威力を発揮する上に垂らされた血の量によってその属性値も増減する。


対して聖剣は聖精霊の宿った剣だ。

魔剣同様、切れ味は落ちることが無く、聖精霊が死亡、あるいは失踪しない限り破壊されない。


魔剣との相違点は元々属性が付与されている事だ。

魔剣の様に属性付与(エンチャント)する必要が無いが、属性値は魔剣に大きく劣る。

その上召喚をすることが出来ず、使用するには常時持っておく必要がある。


こうして見ると魔剣の方が強力に見えるが、魔剣にはある問題がある。

魔剣は、使用者を憑き殺そうとしてくる。

それで死ねば彼等がソレとなり、人として自由に歩き回れる訳だ。


「____で、なんで俺はここに居る?」


「君がボクに触れたからだね。」


「は......?」


「結構長い間封印されてたからねぇ......お腹が空いてるんだ。」


「つまり.....俺はお前の食糧という事か?」


「御名答!___でも、ただ君を殺して食べるって言うんじゃ面白く無い。君に与えられた選択肢は2つ。ボクとの戦いに勝ち、ボクを手に入れるか。それとも、ボクとの戦いに敗れ、食い殺されるか。まあ、後者になる事は確実だけど。」


「つまり____」


生き残りたければ奴を倒せと。


「これを。」


雷電は一本の剣を俺に投げる。


「!」


俺は慌ててそれを掴んだ。


「日本刀.....?」


渡された剣は日本刀だった。


「ニホ....なに?まあいいや、それはボクが宿った剣を具現化したものだよ。今から君にはボクと一騎打ちをしてもらうんだ。」


「それが戦いか.....」


「そういうこと。じゃあ、まあ適当に攻撃してみてよ。」


そう言いながら、雷電は俺に投げた物と同じ刀を出す。


「____は?」


なに言ってんだこいつ?


「ボクが一方的にやっても楽しく無いんだ。」


なるほど.....勝つ気しかしていないと.....


「後悔するなよ?」


俺は刀を抜刀し、構える。


「そんな構え方でかい?」


あーあ、即効でバレてるよ。

刀や剣なんて握ったことすら無い。

こんなのアニメや漫画の真似事だ。


恐らくこいつは強い。

だから、隙をみて魔法を叩き込む。


「行くぞ!」


俺は距離を詰め、刀を思いっきり振る。


「なッ!?」


しかしそれは簡単に交わされ、雷電は俺の背後に回っていた。


「がっかりだよ。」


そのまま俺の背中を斬りつける。


「ぐッ!」


俺は距離を取る。


「そんなおお振りじゃ駄目だよ。これは刀。刀は繊細な剣だ。大剣でもないのにそんな扱い方はしちゃいけない。」


「チッ」


俺は再び距離を詰め、今度は突きをだす。

それも簡単に交わされ、背中を蹴られる。


「剣先がブレてる。突きはもっと速く、正確に。」


クソ、まるで剣術授業を受けてる気分だ。


「せあ!」


俺は再び刀を振る。

それは躱されるが、そこに俺は蹴りを入れる。


「!」


雷電はそれも飛んでかわした。


貰った!


俺は魔法武器を腕から生成し、斬りつけようとするが____


「!?」


腕からは何も出なかった。


「なるほどね.....剣じゃ勝てないから隙を見て魔法でも叩き込む作戦だったか......残念だけど、この世界で魔法は使えないよ。」


雷電を見ると、腕の位置から体を逸らしている。

つまり、例え魔法武器が出たとしても躱されていた。


「ぐはッ!」


雷電が俺の腹に蹴りを入れた。


そのまま数m飛び、再び起き上がる。


「じゃあ、次はボクの番だね。」


すると雷電は信じられない速度で接近し、刀を振るう。


「!?」


俺はそれを紙一重で躱すと、そのまま斬ろうと試みるが、雷電にけられ、再び阻まれる。


「クソッ!」


俺が立ち上がると、雷電はすぐ目の前に居た。


「!?」


マズい!


俺はその斬撃を刀で受け止める。

すると____


「!」


なんだ.....これ......?

なにかが身体に流れ込んでくる.....

これは.....誰かの......記憶?


「え?」


俺は雷電の刀をそのまま振り切る。


「____どうしたの?いきなり.....」


雷電が困惑しながら見つめている。


わかる。

剣の振るい方がわかる。

あらゆる戦い方がわかる!


俺は再び雷電に接近し、刀を振る。

その振り方は先程の素人の振り方では無く、間違いなく剣豪のソレだ。


「せあっ!」


そのまま時計回りに半回転し、下から刀を振る。

再び刀が打合せられる。


刀と刀がぶつかり合う度、なにかが流れ込む。

それは全ての戦い方だ。

刀の握り方、刀の振り方、刀の長さ、全てが身体に刻まれていく。


「ッ!」


雷電はその猛攻を全て受け流し、回転しながら刀を振った。

俺はそれを刀で受け止める。


「ぐっ!」


そのあまりの威力に体自体がすこし背後に滑る。

そして次の攻撃に備えて刀を再び構えるが、雷電は立ち尽くしたまま、俺を見つめていた。


その顔は驚きを隠せていない。


そして、暫くすると____


「ハハハ、成る程ね。そういうことか。」


そう言い、笑い出す。


「____なんだ?」


「ハハハハハ.......ボクの敗けだ。」


雷電が刀を離すと、それはどこかへ消え失せた。


「なにを言っている.....まだ決着は__「決着なら着かないよ。」


雷電が俺の言葉を遮ってそう言う。


「......どういうことだ?」


「まあ、簡単に説明すると、ボクは君の物になった。君は今からボクの主だ。」


「は.....?」


全く理解出来ない。

どういう心境の変化だ....?


「なんだ!?」


突然、さっきまで暗闇だった空間の床が真っ白になり、真っ黒な空はガラスが割れて剥がれていくように消え失せ、青空が広がり始めた。


白い床には、空が写っている。


「君がこの世界に来てからもう1時間経った。」


「・・・」


「現世での君は今、気絶している。君の仲間達がかなーり心配してるね。」


「.......戻れるのか?」


「ああ、勿論だとも。____そう言えば、君の名前をまだ聞いていなかったね。」


「____ユウ・サキトだ。」


「ユウ・サキト.....ね.....クス」


雷電は再び笑い始める。


「じゃあユウ、今から君を現世に戻すよ。それと____」


「なんだ?」


「____仲間は、大切にした方がいいよ。」


「は?」


その言葉を最後に、俺の視界は真っ暗になった。


--------------------------------------------------


「ぐ..... ん?」


目を開けると、俺の左手を舐め、心配そうに見つめる狼の姿が見えた。


「クーン....」


「ユウ!」


「へ?___グハッ」


いきなりスノーが俺に飛びつく。


「ユウ!ユウ!ユウ!ごめん、ごめん!私の、私の所為で......」


そう言いながらスノーは泣いている。


「フゥ.....心配かけやがって.....一体なにしてたんだ?」


その声にそちらを向くと、そこにはジョフが立っていた。


「ジョフ.....」


立ち上がろうとすると、右手になにか握っていることに気づく。

そこを見ると、一本の日本刀が握られていた。


「ん?ユウ、それは......」


「雷電......」


「へ?」


「いや.....なんでもない。心配掛けたな。戻ろう。」


「お、おう。」


俺達はギルド支部まで帰って行った。

どうだったでしょうか?

誤字、脱字、指摘等が御座いましたら宜しくお願いします

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