1)
人気の無い空き地で男と女が戦っていた。
男の拳が女の頬を擦り、女の体勢が崩れた瞬間をつき、口元を手で押さえつけられる。
「もう俺に構うな」そう言い残し、男は去る。
「待って!・・・待ってよぉー・・・」未練がましいような言い方をして、去っていく男に視線を向けていると誰もいないはずの所から人の集団が現れる。
「兄さん」先頭を歩いていたのは自分の兄。
すると首元から手が現れ、唇を触れ、顎に手を添えられた。
「いくら燕さんの妹さんでも、負けてしまうなんて」と兄の部下の奴がそう言い捨てた。
「離しなさいよ!」と男の手を剥がす。
乱れた髪を整えていると兄が頬を見て「鋭いパンチをする奴みたいだな」と言う。
擦った頬を触ってみると指先に赤いものが付着していた。
ただ擦っただけで傷つをつけられるとは思わなかった。大抵のパンチは避けられると思っていたが、さっきの男の攻撃は・・・ファイターだったのね、と微笑んだ。
「兄さん。さっきの男、私の獲物よ。手を出さないでよね」と言い捨て、その場を去った。
女が立ち去ると男の部下が「どうします?本当に何もしないでおいた方が・・・」と頭を低くして言う。
「興味無い」と一言でまた人気の無い空き地になった。