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織田教諭(創造番号第1549天使)の手記④

今回は、『Kシステム』についてです。はい。


『KAMISAMAシステム』もしくは『KISIN(寄進)システム』の略称であるこれについては、もはやJKが女子高生であるのと同じくらい常識となったフレーズですが、やはりこれの成立経過も、きちんと書いておこうかと思います。


さて、『Kシステム』ですが、このフレーズを見るたび、わたしの頭にはあの時の光景が蘇ります。


そうです。先輩(創造番号第2天使)が、神さまとの交渉を終えて、わたし達のところへ戻ってきた時の光景です。


これまでも交渉には幾多の困難を極めてきましたが、今回はとりわけ大変だったのでしょう。ただでさえほっそりとしていた体は、文字どおり骨と皮だけになっていました。


「……いま風呂に入ったらさ……いいダシが取れそうだね……」


そう言って力無く笑う先輩の顔は、涙なしでは見られませんでした。


ですが、しかたないのです。これが我々の仕事なのですから。

またそうして先輩が身を削って頑張ってくれたからこそ、現在の『Kシステム』が存在するのです。


と、そんなわけでこの制度ですが、これは簡単に言えば、CB(キャラクターズ・バトル)の視聴者が、お気に入りのキャラをパワーアップさせるためのシステムです。


視聴者は、誰か強くなってほしいキャラがいた場合、『K(=KAMISAMA)』と呼ばれる、キャラ強化専用のポイントを手に入れ、それを“投資”することで、そのキャラをパワーアップさせることができます。キャラは『K』を手に入れることでしかレベルアップできません。またレベルを表す単位は、投資という性格上、『(くち)』という言い方がされています(「レベル5口」など)。


そのため、生徒達はただ強いだけでなく、様々な工夫を凝らしたキャラを設定しなければなりません。

極端なことを言えば、たとえCBで百勝しようとも『K』がひとつも集まらなければ、レベルはずっと同じままとなってしまうからです。


この『K』を投資する行為が、『寄進(きしん)』と呼ばれているのです。


ただしこの『寄進』についてひとつ記しておくと、こう名付けたのは、神さまや天使われわれではありません。


元々、我々はそれを普通に“投票”と呼んでいたのですが、やはり神さまという存在のせいでしょうか、いつのまにか人々の方から『寄進』と呼ぶようになり、『Kシステム』も『KISINシステム』の意味を含むようになったのです。さらにここから派生した呼び名として、Kを寄進したファンのことを、『信者』と呼ぶ慣習が定着しました。


天使の中にはこのネーミングに批判的な者もいますが、とりあえずわたしは、いいとも悪いとも思っていません。

というのも、我々が尽力したのは、あくまでKの獲得方法についてだったからです。そのためにこそ先輩は、あんな姿になってまで闘われたのですから。はい。


と、そのような内容の『Kシステム』ですが、実はこの制度自体は、最初からCB(キャラクターズ・バトル)のルールに組み込まれていました。


ただし神さまはその点にあまりご興味がなかったのか、最初のルールでは、単純にKを金銭と交換すると定められておりました。


それに異を唱えたのが、我々だったのです。


そんなことをすれば、金を持っている人間だけが影響力を行使することになり、またCBにのめり込んでしまった人がいたら、場合によっては破産するなんてことにもなりかねません。

というか、アンタ「公平のためにはむしろ権利が」どうとかぬかして――もとい、神さまは「公平のためにはむしろ権利は不平等であるべき」といった趣旨のことをおっしゃっていたじゃありませんか、ましてや、そもそもが神さまに金銭などご不要でございましょう、と申し上げたのです。


しかし強情かつ、とりあえず我々の反対には反抗してみるという厄介なご気質をお持ちの神さまは、なかなかこの意見をお取り入れ下さいませんでした。


そこで、我々の代表が神さまと一対一で交渉し、見事『Kシステム』の改正を勝ち取ったのです。こんなメチャクチャなモノをお創りになった上、大量の金銭を巻き上げるなんてことになったら、大変な批判をお受けになりますよ、せめてここくらいは神さまらしく、それでいて人々の承認を得られるようにしておかないと――と、申し上げて。


それは地上の時間にしてみれば、ほんの一時間足らずのできごとでしたが、天上の存在たるわたし達は、時間に強い相対性を持たせることができます。そのため、能力をフルに解放した先輩は、およそ一ヶ月のあいだ不眠不休で議論を続けたほどの体力を消耗することになったのです。

その姿を見るにつけても、いつか先輩の先輩(創造番号第1天使)のように、すべてが嫌になって、神さまに反乱をくわだてたりしないか心配になります。

先輩(創造番号第1天使の方)とそれに追随した方たちは、今もあちこちで様々な悪さをしては、我々によけいな負担を与えてくれますが、一方でそうなった経緯を考えると、同情の念を覚えずにはいられません。


と、最後は話が()れてしまいましたが、このような流れで『Kシステム』は改正されることになったのです。


そして肝心の改正内容ですが、神さまとの交渉の結果、『Kは“善行”によって貯まる』ということになりました。泣き止まない赤ちゃんに困惑するお母さんの代わりに自分があやしてあげるとか、略奪を繰り返す悪のモヒカン軍団から村を守るとか、そういった行為によってKが貯まっていくのです。


その善行がどれほどのKに値するのかといったことについては、相手の感謝度、行為による影響力の大きさ・深さなど、いくつもの要素によって算出します。そういったことは我々の得意分野でもありますので、不公平な結果になることはありません。また神さまの御力により、それらの善行はただちに我々の知るところとなり、Kへの交換も速やかになされます。

Kを寄進したい場合は専用のサイトにログインし、対象となるキャラと寄進数を選択すればOKです。


ちなみにその専用サイトですが、これは便宜的にそう名付けているだけであって、ネット上のどこかにあるわけではありません。神さまに願うだけで、即座にそれが目の前にポップアップするのです。

登録も一瞬で終わり、以後も同様の手順で好きな時にログインが可能です。キーボードもマウスも不要、考えるだけですべての操作を行えます。画面では寄進のほか、各キャラの戦績、現在のレベル、過去のバトルの動画、解説、各組(スタジオ)が作ったPRページなど、様々な情報が参照できます。

もちろんネットの方にも人間が作ったサイトが大量にありますので、そちらを見てもらうことも可能です。


以上がKシステムの概要となります。


本当はもっといろいろな裏話や日々の苦労があるのですが、あまり細かく書いても冗長となるだけなので、これくらいに留めておこうと思います。


それよりも今日は土曜日であり、CB(キャラクターズ・バトル)が行われた日です。


そのことをからめつつ、『ハルマゲドン』について記しておいた方がいいでしょう。普段なら次回に持ち越すところですが、明日は学校がお休みのため、多少の夜ふかしも大丈夫なのですから。はい。

ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。


本当はいっぺんに投稿しようかと思っていたのですが、長くなるので切ることにしました。


しかしまあ、設定厨ですね…。本人はわかってるからいいものの。

というか、学園+異能バトルモノとして書いているはずなのに、バトルがまったく出てきてませんね。

次回でようやく行われます。キャラもまだ増えます。


それではまた、お会いしましょう。

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