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織田教諭(創造番号第1549天使)の手記③

前回は――はい。神さまが羽舞原(うぶはら)町にご降臨なさったところまでを書きました。


イベントのリハーサルで行った召喚儀式に乗じて、町長の目の前に現れたのです。


その場にいた人間達に対し、自身を神さまだと認識させるのに、手間はかかりませんでした。なんせ腐っても神さまです。ちょっと御力を使うだけで、直感的にそれを実現なさったのです。


そして翌日には町の皆様に(あれをそう呼べるはともかく)ご挨拶をなさり、その次の日には早くも『KAMISAMA立(りつ) キャラクターズスクール』を設立なさいました。はい。それもまた、御力を使ってです。


しかし、学校であるなら区分的には「私立」になるところを「神さま(りつ)」などとし、さらにはローマ字表記にするとは、いったいどういう了見なのでしょう。

その点を先輩(創造番号第7天使)にたずねたところ、以下のような答えが返ってきました。


「……ああ……“私立”にしなかったのはね……神さまが“公平無私”の存在だからだよ……」


どちらかと言えば、その時の先輩の方が無我の境地に達していたように感じましたが、そこに触れることはできませんでした(ただそのあと先輩がつぶやいた「唯我独裁(ゆいがどくさい)」というフレーズだけは、ここに記しておこうと思います)。

ちなみにローマ字の件は、「なんとなく」だろうというのが我々の見解です。どこかのダンスグループに影響されたとか、そういったことは無いように思われます。


ともあれ、このような経緯を経て『KAMISAMA立(りつ) キャラクターズスクール』――略称「K高」「キャラ高」「CS」「キャラスク」等々――は創られてしまいました。


いかに悲しみや怒りに(さいな)まれようとも、創られてしまったものはしかたありません。

生まれたなら生まれたで、少しでも良き方向に導けるよう務めるだけです。はい。神さまが創ったものを育てる。それが天使の義務(やくめ)なのですから。


ということで(いさぎよ)く気持ちを…………(中略)……………………おや急に目から霊液(エーテル)が……………………はい、気持ちを切り替え、すべてを受け入れ、『KAMISAMA立(りつ) キャラクターズスクール』(以下「キャラ高」とする)とそのシステムについて、記述していくことにしましょう。


キャラ高はその奇矯(ききょう)なネーミングに反し、基本的なところは普通の高校とあまり変わりません。

平日は普通に授業が行われ、文化祭や体育祭や修学旅行などといった行事もあります。学力テストや補習、進級や留年などはもちろん、卒業すれば高卒の資格も得られます。

キャラ高が他の高校と異なるのは、以下の三点が存在することです。


◯校長が神さまであること

◯校長を除くすべての職員が天使であること

◯キャラによる異能力バトルが行われていること


最初の二点については、記述不要でしょう。なんせ神さまが作った学校なのですから。

よってくわしく述べる必要があるのは最後の一点、「キャラによる異能力バトル」という項目でしょう。

これは決して他の高校――いえそれどころか人間には決して不可能な、まさに神さまというチートによってしか実現できないシステムなのです。


「キャラによる異能力バトル」――はい。それは現実で行われるFPSファーストパーソン・シューティングのようなものと考えたら、わかりやすいかもしれません。

プレイヤーは一定のフィールド内で自由に動き回り、自身の能力を活用しながら戦いに勝ち残っていく。キャラ高で行われているのは、そんなゲームなのです。


ただしそれ――『キャラクターズ・バトル(通称CB)』においては、プレイヤーが人間そのもの、それも本物の異能力を持った『キャラ』によってなされている点が、決定的に異なります。


例えば三次元の遊びにもサバイバルゲームといったものがありますが、あちらは銃などの装備は強化できても、人間そのものの身体能力まで変えることはできません。

確かにトレーニングを積めば多少の向上は望めますが、自身の体を霧に変えて移動したり、あるいは異形の存在を召喚するなどといったことは不可能です。


しかしこの点、『キャラ』達は違います。

彼らは神さまによる『オーディション』を合格することによって、まさにそのキャラにふさわしい能力――刀で分厚いコンクリートを両断したり、常人には見えないほど細い糸を周囲に張り巡らせるといった芸当を行えるようになるのです。


そして、そんなキャラ達による異能力バトルが毎週の土曜に行われ、またその「本番」と言うべきイベントが、学期末ごとに行われているのです。


と、『CB(キャラクターズ・バトル)』について大まかな説明をしてきましたが、ただしそのような『キャラ』となるにあたっては、いろいろと厄介な手順を踏まなければなりません。


というのも、その生徒がどのようなキャラになりたいかは自由なのですが、それを実現するためには、神さまの『オーディション』に合格するだけの『設定』を、きちんと作りこんでいないといけないからです。


それこそキャラの外見、性格、口調、果ては経歴や人間関係まで――といって細かければいいわけではないところが難しいのですが――、ひとつのキャラとして成立するための要素が無いと、オーディションには不合格となってしまうのです。


またバトルではそのキャラになりきりつつ、すべてをアドリブでこなさなくてはいけないことから、個人でキャラを作ることはかなり難しく、そのためキャラ設定は、組単位で行われています。


つまりクラスの生徒は、『プロデューサー』、『ライター』、『メイク』、『ヘアメイク』、『スタイリスト』、『デザイナー』、『プランナー』、『小道具』、『大道具』などの「スタッフ」となり、キャラとなる生徒の設定を行うのです。

またスタッフは一度キャラを合格させたら終わりではなく、その後も装飾品やセリフ回しなどを細かくチェックし、常に改善を図ります。


これはキャラのレベルが『寄進(きしん)』によってのみ上がるシステムだから……なのですが、これは次回の記述にまわしましょう。

ここでまた夜更かしをして、明日の職員会議で爆睡する羽目になっては大変ですので(しかし目が覚めた直後に見た大西教頭の微笑は、いまだに忘れることができません。心臓が止まるかと思いました。もっとも、天使(わたし)には心臓どころか臓器すら無いんですけど)。

 

それはさて置き、以上のようにして「キャラ」を「演技(アクト)」する場所。それが、『キャラクターズスクール』なのです。


その誰にもまねできないシステムは、誕生するや否や爆発的な人気を呼び、『CB(キャラクターズ・バトル)』および『ハルマゲドン』は、世界を席巻するほどのイベントとなりました。

その人気のほどは、キャラ高でキャラになりきっている様子を、「演じる」ならぬ「エンジる」と表記するようにまでなった、と聞けば分かると思います。

本当に、こういうことに関してはまことに知恵が回る御方です。はい。


ちなみに、キャラ高に入学するための手続きですが、通常の高校と同じく願書を提出し、筆記と面接にクリアすることが条件となります。


筆記の内容は一般の高校のそれと変わりませんが、面接はキャラ高名物(と自分でおっしゃっていたのですが)、「神さまによる個別一斉面接」によって行われます。それはすべての受験生を“個別”かつ“同時”に面接するという、まさに神さまにしかできない芸当です。


もっとも、全面接が数十分で終わるのはありがたいのですが、顔を見た瞬間に「あ、不合格」とかおっしゃるのは、ぜひともやめていただきたく思います。

何が起こったかわからないまま固まっている子を慰める、我々の身にもなってください。

ここまで読んでくださった方、まことにありがとうございます。


基本的に天使パートは説明や解説が多いので、ちょっと面倒に感じられるかもしれません。

個人的にはこういうの好きなんですけど。


ともあれ、年内最後のアップとなります。

皆様、良いお年を!

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