表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/43

織田教諭(創造番号第1549天使)の実況⑥

そのモンスターを、イシュタルはプールの近くで見つけました。

周囲を警戒するそれに、彼女は自身の姿を霧へと変えて近づきました。

そうして隙を見て相手を取り囲んでしまうと、驚き慌てるモンスターを二度三度と斬りつけたのです。

それでもモンスターが生きていたのは、イシュタルが手加減したからに他なりません。嗜虐性の強いキャラ設定を考え、そうしたのでしょう。


よろめき去る獲物を満足気に眺めていた彼女は、それがグラウンドへ出たところで、とどめを刺しにかかりました。一足飛びで標的に追いつくと、右手の手刀を背中へと放ったのです。


しかし、モンスターが断末魔と共に消滅したのは、その長い爪が相手を貫く寸前のことでした。


「……あらン❤?」


そうつぶやくイシュタルの顔には、嬉しげな微笑が浮かんでいました。

その視線は、地面に横たわる黒いリボンタイに向けられています。それこそが、彼女よりも先にモンスターをしとめたものでした。


来た方向へと戻って行くそれを、イシュタルの視線が追いかけます。

そこにあったのは、リボンタイで編まれた漆黒の弓でした。ロングがレベル19で取得できる技、“弓結び(アロー・ノット)”により作られた武器です。つるをはじくことでリボンの一端が矢として放たれ、遠距離にいる相手を攻撃する効果を持っています。


彼女の隣には、相方スマイリーが控えていました。

彼は一歩前に進み出ると、右手を胸に添えながら言いました。


「おや、これは申し訳ありません。ですがわたしの記憶が確かなら、イシュタルさん達は『給食ランチ』を終えられたはずではございませんでしたか?」

「……意地悪ねぇン❤」


イシュタルの応えに、スマイリーの笑みが深まります。それはキャラをエンジているばかりではない、心からのドヤ顔でした。イシュタルに一矢報えたことが、よほどうれしかったのでしょう。

わたしも過去に様々なタッグを見てきましたが、これほど危うい同盟関係は初めてでした。


とはいえ、こうしてモンスターは狩り尽くされました。

時刻は十時四三分。

『給食時間』はタイムアップもしくは、モンスターがいなくなれば終わりとなります。


後者の場合、視聴者を待たせないために、残った時間は切り上げられます。

次は終了時刻に一番近い、「キリのいい」時間から始まります。

つまりこの場合は、十時四五分に『三時間目』となるのです。


バトルの再開まで、残り二分弱。

スマイリー達は頭を切り替え、対『神のシャイニング・アイ』に向けた作戦に取りかかりました。


「それでは、イシュタルさん達はすぐに体育館に行って、準備をお願いします。終わり次第、わたし達がシャイニングさんを誘い込みますから」

「わかったわン❤」


妖しく微笑みつつも、イシュタルは素直に応えました。霧に姿を変えると、妹と共に体育館へと飛んで行きました。

それを見送ったスマイリーは、ロングに振り向きました。


「さて、それでは我々も参りましょう」

「気合……」


ロングがコクリとうなずきました。先ほどからセリフのチョイスが体育会系寄りな感じですが、二字熟語の設定は守られているのでよしとしましょう。


彼らは、目的の場所へと足を踏み出しました。

しかし、二人の道が失われたのは、その直後のことでした。

抽象的な意味ではありません。まさに文字どおりの意味で、足下の地面が消失してしまったのです。


失われた大地には、直方体の穴が二つ、空いていました。一軒家がすっぽりと入りそうなほど、巨大な穴です。それらにスマイリーとロングが別々に落ちると、天井は一瞬でふさがってしまいました。


それはもちろん、異能スキルによって行われたことでした。

その技の名は、“世界は歪む(グルグルワールド)”。使い手は、『チーム・イノセンス』のハイエンドです。

彼が二人を捕えたのは、スマイリー達を倒すためでした。

先ほどの穴には、彼ら三人が別れてスタンバイしていたのです。


その組み合わせは、



スマイリー 対 ブービー


ロング 対 ハイエンド&ピーカブー



というものでした。

スマイリーに主力のブービーをぶつけてきたのは、それだけ彼を警戒しているからなのでしょう。『無邪気イノセンス』をエンジる彼らですが、その行動はしたたかな計算に裏打ちされたものなのです。


ちなみに再投資後の彼女達のレベルですが、次のような結果となりました。



『夜のアリス(ブービー・ドール)』

 71口 → 93口(個人ランキング2位 → 2位)


『酔いどれ案山子ハイエンド・ホリック

 30口 → 43口(同8位 → 5位)


『丑三つ喇叭ピーカブー』 

 25口 → 31口(同10位 → 8位)



総寄進数は167口。75口であるスマイリー達とは、二倍以上の開きがあります。


時計の針が十時四五分を指し、校舎にチャイムが鳴り響きました。

『給食時間』が終わり、『三時間目』が始まったのです。


それにしても、最初は冗談にもならなかった“キャラ殺し宣言”ですが、劇的なレベルアップを果たしたことで、情勢は確実に変わってきました。

言うなれば、彼らも勝負卓に立つ資格くらいは得たのかもしれません。

ただしその場合、注意しなければならないことが一つあります。


つまり、戦いを挑む資格ができたということは、同時に、狙われる可能性が生まれたことも意味するのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ