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織田教諭(創造番号第1549天使)の観察(及び反省)①

まずは、反省せねばなりません。

以前の予選で行われた、『斬斬りざんぎりがたな』と『姫のまにまに(クリーン・キラー)』の戦いで、わたしが手記に記した評価のことです。


手記には、その戦いに参戦したイシュタル達『チーム・チャーム』の行動が、状況を見誤ったものであると記しました。すでにそこには『チーム・マッドネス』のジョーカーが乱入しており、さらにイシュタル達が加わることで、話の軸がぶれてしまったと、わたしは結論づけたのです。


ですが先ほど、その結論が誤りであったことが判明しました。

あの時の『チーム・チャーム』には、二つの狙いがあったのです。


ひとつは『チーム・マッドネス』を――中でもスマイリーの動きを観察することでした。

あの時のスマイリーはまだ正式なキャラではなく、ロングと共に『食えないアヒル(ジョーカー・ダックス)』と呼ばれていた、マスコット的な存在でした。口を出すだけでバトルには参加しない、ただの飾りだと思われていたのです。


しかし、それは誤りでした。

真相に気づいたあとで過去の記録をチェック(我々の力をもってすれば、一瞬でそれは可能)してみたのですが、実はスマイリーは、要所々々でバトルに参加していたことが判明したのです。

あの戦いの時も、同様でした。それも視線だけで、彼は場の状況をコントロールしていたのです。


戦いは、まず最初に斬斬ざんぎりとクリーンの間で行われ、そこにジョーカーが乱入。さらにイシュタル達までが加わりました。


それによってもっとも被害を受けたのは、クリーンでした。

当初は主役だった彼女も、三姉妹の登場によって一気に端に追いやられ、イシュタル達が斬斬りにからんでいた時など、それを棒立ちで見ているしかありませんでした。

そんな彼女を使って状況を打破したのが、スマイリーだったのです。


彼は不意にクリーンの方を振り向くと、わずかに肩をすくめながら、意味ありげな視線を送りました。

それはどうとでも受け取れるパフォーマンスでしたが、だからこそ彼女にとっては効果があったのでしょう。プライドが高く目立ちたがり屋(という設定の)彼女は、今のみじめな状態をからかわれたかのように受け取ったのです。

そうして彼女を離脱させることで、中だるみした舞台を撤収させてしまったのです。


この行動が、『チーム・チャーム』の方針を決定したのでしょう。それはジョーカーが『降板カット』となり、かつスマイリー達のレベルがたったの2であっても、変わらなかったようです。


そして二つ目の狙いですが、それは斬斬りとクリーンの「カップリング」を強化することでした。


手記にも書いたとおり、斬斬りとクリーンは、あらゆる点で対照的なキャラとみなされてきました。

そのため信者ファンの中には、彼らをカップルのような関係として見ている者も少なくありません。またそれぞれのスタジオも、大なり小なりそこを意識してエンギを調整してきた面もあります。


ですがこれまでのCBキャラクターズ・バトルを見ていくと、そこにはイシュタル達の積極的な関与が存在していたことが判明したのです。

彼女達が常に二人をセットとして扱う発言を繰り返すことで、カップリングの側面を強化していったのです。


その結果として生まれた「これ」が、どこまで狙いどおりだったのかはわかりません。


ですがハルマゲドン開始四十分にして起こった、



斬斬り & クリーン 対 『神のシャイニング・アイ



のバトルが今大会最初の注目カードとなることだけは、間違いありません。



――と、反省はこのくらいにして、実況へと戻りましょう。


先ほどスマイリーが見た黒いヘリコプターですが、それはもちろん、異能スキルによって作り出されたものです。

それはクリーンの技、“ご自慢の死用人ワーキング・キラー執事スナイパー”でした。


その彼女は、ドレスのすそと金髪のツインテールを風にはためかせながら、屋上の端で仁王立ちしていました。

真剣な眼差しが見つめているのは、向かいの校舎にある三年六組の教室です。はい。今大会優勝候補、シャイニングのいるところです。


クリーンの寄進数が65口に対し、シャイニングは116口。

しかし彼女の顔に浮かんでいるのは、不遜ふそんと称すべき笑みでした。暗殺者一族の生まれにして好戦的な性質の彼女が、戦いを楽しんでいる時に浮かべる表情です。


その表情のまま、彼女は右手を伸ばしました。そこにはトレードマークである鉄扇てっせんが、わずかに開かれた形で握られています。


対するシャイニングは、まだ自分の席に座っていました。登校してきてからずっと、彼女はそこに待機していたのです。


シャイニングが、ゆっくりと窓に振り向きました。薄暗い教室の中、右目を覆う割れた仮面のような眼帯が、クリーンに向けられます。


瞬間、クリーンは鉄扇の先を標的に据えながら告げました。


「――派手に死になさい」


澄んだ音と共に鉄扇が閉じ、ヘリから銃声の爆音がとどろきました。機体の底に取り付けられたガトリングガンが火を吹いたのです(この技、元々はライフルで相手を狙撃するものだったのですが、寄進数の「壁(=50口)越え」による強化ボーナスを得た結果、このような豪華装備となったのです)。


と、言葉どおり派手なオープニングを飾ったバトル。

しかしながら、言葉どおりシャイニングが死ぬことはありませんでした。ガラスが砕け散り、机と椅子がスクラップの塊と化していく中、彼女は流れるような体捌たいさばきと圧倒的なスピードによって、無数に吐き出される銃弾をことごとくかわしていったのです。


「ふん――」


シャイニングが、物憂げにつぶやきました。

しかしその表情とは裏腹に、彼女の右手には剣が握られていました。はい。普段はき身のまま背負っている、彼女の得物です。


自身の身長ほどもあるそれを安々と持ち上げると、シャイニングは言いました。


「“破邪閃剣ドラグ・スラッシュ”」


剣と呼ぶにはあまりに巨大なそれから放たれたのは、「飛ぶ斬撃」でした。

飛んで行く剣閃が遠方の敵を攻撃するだけのシンプルな技でしたが、しかしレベル116の彼女が使った時、それはガトリングガンをはるかに凌ぐ威力と速度で標的に襲いかかったのです。


「チッ!」


しかし斬撃が当たる寸前、クリーンは“執事スナイパー”を消しました。彼女の技は使い勝手が良い分、実体化させたものへの攻撃がダメージとなってしまうデメリットがあるのです。


さらに彼女は、大きく横に跳躍しました。斬撃はヘリのみではなく、その背後に控えるクリーンも含めて狙ったものだったからです。


しかし、今度はヘリのようにはいきませんでした。

外れたはずの斬撃が九十度横に、つまりはクリーンを追って方向転換したからです。

それはクリーンの“執事スナイパー”がライフルからガトリングガンへと変わったのと同様、“破邪剣閃ドラグ・スラッシュ”に加えられた特典でした。標的を追尾する効果を得たのです。


目の前に迫る剣閃に、クリーンの瞳が驚愕に染まります。しかしそれも次の瞬間には、冷静へと立ち戻っていました。

大切なのは、作戦を遂行すること。その覚悟が、彼女を落ち着かせたのです。


「“料理人キーパー”!」


その声と共に現れたのは、がっしりとした体格を真っ白なシェフコートで包んだ男でした。男は体の前に、クリーンを完全に隠すほどの巨大な鉄鍋を構えていました。


それは彼女の、防御用の技でした。その風変わりな盾に、“破邪剣閃ドラグ・スラッシュ”が正面からぶつかりました。


「なっ――!?」


クリーンの顔が、苦痛(あるいは苦渋)に歪みました。斬撃は“料理人キーパー”を両断したばかりか、その背後にいたクリーンをも貫いたためです。


もちろんCBキャラクターズ・バトルではグロ規制が敷かれていますから、彼女がまっぷたつになるなんてことはありません。血飛沫ちしぶきのエフェクトが起こっただけで、服も体も無傷です――が、データの方は違いました。

防御スキルで威力を減殺したにも関わらず、HPの四分の一を失ってしまったのです。


これが三ケタの寄進数。これが『神のシャイニング・アイ』。これが――“神キャラ”。


その圧倒的な実力を身を持って知ったクリーンでしたが、驚いている暇はありません。

いつもの強気顔に戻ると、広げた鉄扇でシャイニングを指しながら叫びました。


「“侍女ファイター”!」


直後、彼女の周囲に陽炎かげろうのようなゆらぎが三つ生まれ、そこから技名どおりの存在、すなわち侍女メイドさん達が実体化しました。ただしその手に持っているのはハタキでもティーセットでもありません。槍と剣と鞭でした。


それぞれ微妙に異なるデザインの服を着たメイドさん達は、一足飛びで向かいの教室へと飛び込むと、即座にシャイニングへ襲いかかりました。


「笑止――」


ですが三対一、しかも美しいと言えるほどの完璧なコンビネーションで繰り出されるメイドの攻撃を、シャイニングは安々とかわし、受け止めます。それはまるで、彼女達に稽古でもつけてやっているかのような光景でした。


「……」


粉塵による白煙が舞い上がる教室の中、しかしクリーンは動こうとしません。ただ強い意志をこめた瞳で、冷徹に戦況を見守っていました。


そんな彼女を、シャイニングはそっと横目でうかがいました。

直後、眼前に迫っていた槍をミリ単位の幅でかわすと、巨剣を振るって“侍女ファイター”の一体を両断しました。それは隙らしい隙のないコンビネーションすら凌駕するスピードで放たれた、圧倒的な一撃でした。


「ぐっ!!」


と、またもクリーンが顔を歪ませます。


奇襲も連携も通じず、いたずらにダメージだけが蓄積していく。

ただ実力の差だけが露呈していく戦いにあって、しかしクリーンの瞳には未だ――いえ、そこには、ここまで来たからこその闘志がみなぎっていました。彼女の固く引き結ばれていた唇が緩み、その両端が吊り上がりました。


三度みたびシャイニングに鉄扇を向けると、興奮の入り混じった声で告げました。


「ちゃんと決めなさいよ」


乾いた音と共に鉄扇が閉じられ、“侍女ファイター”が消え失せます。


「……」


白煙ただよう教室の中、その中央に立つシャイニングが構えを解き、


「!?」


直後に上体を後ろへそらしながら、己の胸に迫るそれを剣の腹で受け止めました。


キン――と、衝撃に比して異常に澄んだ音が、教室中に響きました。


それは二本の名剣が、達人によって打ち合わされたことで生まれた音。

白煙の中から現れ、そこに突き立てられた白刃はくじんの名は、魔刀「斬咲一紋きりさきいちもん」。


登校順二位にして63口の寄進数を得たキャラ、『斬斬りざんぎりがたな』の得物です。


「ゆくぞ」


彼はシーンにふさわしい、張りつめた声で言いました。

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