表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/43

古機(ふるはた) 誠(一年五組 出席番号十一)の愚痴⑥

「……ちょっと待ってくれ。すぐかけ直す」


そう言って電話を切った暮継くれつぎが、目の前の人物を無言で見つめる。


「あれは……」

「……誰?」

「「昭和ベタか」」


大久茂おおくもの発言に不用意なセリフを繋げた純香すみかが、小円こまどか姉妹のツッコミによって抹殺された。


それはともかく、スタッフが驚いているのも無理はなかった。


そこにいるのは、ある意味で深い縁がありつつも、まったく予想もしていなかった人物だったからだ。



二年三組 天上あまがみ まな



サラサラのロングヘアと、背が高く華奢(きゃしゃ)な体つき。クールビューティと評するのがふさわしい顔立ちは、巫女さんカフェで働けばものすごく人気の出そうな外見だ。


しかしそんな彼女の肩書は、キャラをエンジる『アクター』ではなかった。

彼女はそれを作り出す側、つまり『プロデューサー』である。

神キャラを育てた火山ひやまのせいであまり目立っていないが、彼女も数々の強キャラを生み出してきた名プロデューサーの一人なのだ。


「……会議は終わったのかしら」

「……ああ」


天上先輩の言葉に、暮継が普段どおりのぞんざいな口調で応える。

だがそれを気にする様子もなく、先輩はお(はら)いの呪文が似合いそうな、芯のある声で続けた。


「そう。それでハルマゲドンには」

「出るさ」

「そう。勝算はあ」

「ある」

「そ」

「ノーコメント」


……沈黙。


「あれは……」

「……なに?」


千賀派ちかばのつぶやきを、純香が繋ぐ。


だがそこにツッコミが入ることはなかった。

その時そこにいた全員が、そのやり取りを「なに?」と思っていたからだ。


かたや良キャラを生み出してきた、名プロデューサー。

他方は賛否両論うずまくキャラを創り出し、鬼才と評されるプロデューサーである。

二人に個人的な(つな)がりがあるなどとは、聞いたことがない。


ただひとつ知っていることといえば――と、おれは視線をそいつの方に向けた。


人のよさが全面ににじみ出た顔で、二人を見つめる正之介しょうのすけ

あいつのエンジていたジョーカーが、その凶悪スキル『意味なし革命ロイヤル・ジョーカー』でKを奪ったのが、天上先輩の創り出したキャラなのである。


そのキャラの名は、『観殺者ブラック・キャット』。

Kを奪われるまでは、同学年の『姫のまにまに(クリーン・キラー)』や『斬斬りざんぎりがたな』と、寄進数を競っていたほどのキャラだ。


(でもそれが――)


今回の訪問と関係あるのだろうか。

キャラの設定は自由だし、そもそも、異能(スキル)を決めるのは神さまなのだ。もちろんそれは、彼女だって承知しているはずだ。


二人は重苦しい沈黙を保ったまま、見つめ合っていた。


その数秒後、先に切り出しのは暮継だった。


「……悪いが退()いてくれ。時間がないんだ」


そして足を踏み出そうとした直後。

ピッ、という音がしそうな勢いで、その額に人差し指が突きつけられた。


立ち止まった暮継を見つめたまま、先輩は言った。


「ええ。でもその前に、『降板カット』の件について一言」


彼女は続けた。


「ざま~みろ」


天上先輩は去っていった。


「……あれは……」

「「……なんや?」」


奥内おくないのセリフに、小円こまどか姉妹が続いた。


だがその疑問に応える者はいなかった。

誰一人答えがわからなかったからだ。


「……ああ、もしもし? さっきは悪かったな――」


何事も無かったかのように、暮継が携帯片手に去っていく。


静まり返った教室。

何ひとつ事情のわからないおれ達は、しかしそれでもひとつの思いを共有していたらしい。


(りん)とした瞳で相手を見据える、天上先輩が放ったセリフ。

おれ達は、まるで計ったかのようなタイミングで、それに対する感想を口にしていた。


『かわいい……』


事情は何ひとつわからないが、なんかちょっとうらやましいシチュエーションじゃねえかコノヤロー的な気持ちが、おれの中で静かに渦巻いていた。


「……こら要チェックやな」

「ホンマや。『事実はキャラ設定より奇なり』とは、よう言うたもんや」

「何あれ!? 何あれ!? すっごい気になるんだけど!」

「“合宿”で最初にやることは決まったわね」

「……とりあえずみんなには根回し(=メール)しておく――」


男子どもが沈黙を保っているのとは対照的に、女子の方はやたらと盛り上がっていた。『エージェント』やら『プランナー』やらの肩書きを持っていても、こんなところはやっぱり思春期ど真ん中の高校生なのだ。


(……しかし)


彼女たちの喧騒を聞きながら、おれは背もたれに体を預けた。


皆の怒りがうやむやになったのはいいんだが、問題は何も解決していなかった。

学内のみならず世界中が注目している、最強キャラ決定戦の『ハルマゲドン』が一週間後に迫り、それにおれと純香が出場するはめになるかもしれないのだ。


それを忘れて能天気に騒ぐ純香を見つめながら、おれは心の中で思い切りため息をついた。


そしてこんな時――騒ぎに乗り切れず冷淡に状況を眺めている時――、いつも彼女に言われてきたセリフを思い出していた。


「なんでアンタはいつもそうなの!?」


(いやまあ……ねぇ――)


初めて言われた時と同じ応えをつぶやきながら、おれは彼女達の興奮をぼんやりと見つめていた。

すいません。今回も主人公の語りでした。


合わせてサブタイトルにも、通し番号をつけました。前半とか後半とかだとゴチャゴチャするので。


しかし回によって、文字数がメチャクチャですね。あるていど統一させたいのですが…なるべくがんばります。


それでも読んでくれてる方、本当にありがとうございます。

次回からはキャラ達によるバトルロイヤル、『ハルマゲドン』が行われます。

初登場の『キャラ』も出てきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ